掃除機をかけながら眺めていた『日曜美術館』のアートシーンで、たまたま『五木田智央展』を紹介していて、これは面白そうだなと掃除の手を止めて見入ったのがはじまり。それまで、ごめんなさい、名前を全く知りませんでした。
そもそも現代アートははあまり詳しくなく、それほど積極的に展覧会に行ってないのですが、ちょうど『五木田智央展』の開催期間中に、DIC川村記念美術館と千葉市美術館の間を無料往復バスが運行(土日祝のみ)されるとあって、『赤瀬川原平展』を観た足で『五木田智央展』にも伺うことにしました。
思いのほか『赤瀬川原平展』に時間がかかってしまい、バスに乗り込んだのは発車時間ギリギリ。千葉の市街地から郊外へ、ちょうど30分ぐらいで佐倉のDIC川村記念美術館に到着です。
展覧会場に行くには、1階と2階の展示室を通っていきます。それぞれの展示室には、ルノワールやピサロといった印象派から、ピカソ、マグリットやエルンスト、イヴ・クライン、ポロックなど20世紀美術、さらには尾形光琳や橋本関雪といった近世近代の日本美術まで充実のコレクションが並びます。
そして何と言っても、ここに来るもう一つの目的でもあった“ロスコ・ルーム”。ソファーに座って絵を見てると、なんか無になるというか、ロスコの絵の口の形があたかも内面の世界に入り込む扉のように思えてきます。鑑賞ではなく体験という感じ。ちょっと瞑想的な空間でした。
1. 新作11点 2014年
まずは、本展のメインヴィジュアルの「New Sad」はじめとする最新作。即興的に描かれたアクリルグワッシュの10点はこの展覧会のために用意されたのだとか。物語性があるようでないような、イメージを強く喚起する感覚的なドローイングが面白い。「週末は暗雲低迷」とか「串焼き同窓会」とかタイトルもユニーク。
[写真右] 「New Sad」 (2014年)
2. Mary Boone Galleryでの個展まで 2008-13年
今年の1月にニューヨークで開催された個展では出品作15作品が全て完売。ここではその中から2作品と近年の代表作を展示しています。大きなキャンバスに白と黒のコントラストが強烈な不可思議な人物。抽象的なんだけどどこか肉感的、単純な線なのに実は意図的。何か物質的で、ちょっとシュールで、時にグロテスク。そしてどれもドラマがあって、その世界に引き込まれてしまいます。
[写真左] 「Slash and Thrust」 (2008年)
[写真右] 「Captive Bunny」 (2013年)
[写真右] 「Captive Bunny」 (2013年)
会場の入口のところにあった「New Sad」もそうですが、女性の顔を塗りつぶしたような、抉ったような作品がいくつかあって、その暴力性というんでしょうか、怪奇性というんでしょうか、インパクトが半端ない。
「軽蔑」
2011年 高橋コレクション蔵
2011年 高橋コレクション蔵
3. 青い抽象世界 2009年
ロサンゼルスで開かれた個展「Heaven」の出品作から7作品を展示。ロールシャッハテストのような、空に浮かぶ気球のような、抽象的で幻想的な作品。ウルトラマリンの色のグラデーションが好き。
4. ステンシル作品の魅力 2010年
ニューヨークのギャラリーで開かれた3度目の個展「Wildest Dreams」の出品作。絵柄を切り抜いた型紙を使い、アクリルエナメルでスプレーペイントするステンシル技法で描かれています。
ほかにも、小さな額を会場で繋げたというインスタレーションがあって、プロレスラーやメキシコ人風の女性、芸者や藤山直美、男性器や鼻、マンガみたいなものから抽象的な模様まで、いろんなイラストが繋げてあります。先ほどのステンシル作品といい、こうしたインスタレーション作品といい、自由で、楽しんで描いている感じが伝わってきます。
「無題」
2008-2014年 サン・ギョーム蔵
2008-2014年 サン・ギョーム蔵
5. 素描に宿る五木田の原点 2003-13年
初公開という墨やインクを使った30点の素描シリーズと、一転暖色系の色彩が印象的な20点組の「CAIRO」。個人的には「CAIRO」の柔らかで温かみのある抽象画が好きですね。ほかの作品とはまた違った魅力があります。エジプト旅行で目にした夕陽をイメージしてるのだとか。
本展は五木田智央にとって初の美術館での展覧会だそうです。DIC川村記念美術館というと海外の現代アートの展覧会という印象がありますが、日本の現代アートでは中西夏之以来の展覧会だといいます。それだけ注目を集めている作家ということなんでしょう。遠くまで足を運んだ甲斐がありました。面白かったです。
(本展の会場内のみ撮影可)
【五木田智央 TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS】
2014年12月24日(水)
DIC川村記念美術館にて
TOMOO GOKITA THE GREAT CIRCUS
0 件のコメント:
コメントを投稿