上野の東京国立博物館で開催中の『細川家の至宝』展にも足を運んできました。
細川家といえば、旧熊本藩主の細川家、歴史の教科書にも登場する細川ガラシャのいた細川家、かつての日本新党の党首で、総理大臣にもなった細川護煕の細川家です。
細川家は、清和源氏の流れを汲み、鎌倉幕府の御家人として始まり、室町幕府の要職を務め、戦国末期には、戦国大名として頭角を現すという、大変長く、由緒ある歴史を持つ日本屈指の名家。その細川家所有の文化財は、細川護立(細川護煕の祖父)が後世に伝えるため1950年に設立した“永青文庫”により大切に管理されています。
国宝「時雨螺鈿鞍」(鎌倉時代)
展覧会は、「第一部: 武家の伝統 -細川家の歴史と美術-」と「第二部: 美へのまなざし -護立コレクションを中心に-」というテーマで分けられ、甲冑や鞍、刀剣、茶の湯・能の道具等々、細川家に伝わる家宝と、細川護立が蒐集した中国・西アジアの美術工芸や近代日本画や洋画等々のコレクションがそれぞれ展示されています。
鎧や刀といった戦国時代の武具さえ、今はこうして文化財として博物館に陳列されるなぞ、当時の人は夢にも思わなかったでしょうね。鎧は腰まわりも細く、昔の人は現代人ほど大きくないとはいえ、意外と小さかったのが印象的でした。細川忠興は小柄な方だったんでしょうか。
「黒糸威二枚胴具足」
細川忠興(三斎)所用(安土桃山時代)
関が原の戦いで使われたものとか。
細川忠興(三斎)所用(安土桃山時代)
関が原の戦いで使われたものとか。
そのほか、「第一部」には、明智光秀の三女にで、細川家に嫁いだ細川ガラシャの貴重な資料や、細川家と縁の深い宮本武蔵が執筆した兵法書『五輪書』や貴重な自筆の絵も! 宮本武蔵は剣豪としてだけでなく、芸術的センスも秀でていたんですね。
宮本武蔵「鵜図」(重要文化財)
「第二部」には、第16代当主、細川護立が集めた美術工芸品がズラリ。これまた“超”がつく第一級の名品揃い。中国から買い集めた美術工芸品には、国宝・重要文化財が多く、日本画や洋画も、日本美術史に残る傑作ばかり。
菱田春草「黒き猫」(重要文化財)
春草にしても古径にしても、最高傑作がココにあったとは、ほんとビックリしました。ともに切手にもなったことのある名画中の名画。さらには川合玉堂や川端龍子、下村観山、梅原龍三郎、そして横山大観と、錚々たる画家の作品が並んでいます。また、江戸時代の禅僧、白隠慧鶴の書画がたくさんありました。一度見たら忘れられないインパクトのある絵です。細川護立の美術品収集は、この白隠慧鶴の作品から始まったそうです。
白隠慧鶴「乞食大燈像」
だけど、これだけの数の作品を集めたことだけでも驚きなのですが、そのどれもが第一級品で、しかもその中には現在、国宝や重要文化財に指定されているものが少なくなく、細川護立の審美眼が極めて高かったということにさらに驚かされます。小市民のわたしには全く縁のない世界ですが、世に名家といわれる家は多くても、ここまで文化財級の名品が揃い、しかもそれらを後世に伝えるために、こうしてちゃんと管理しているんですから。細川家、恐るべし、です。
小林古径「髪」
【特別展「細川家の至宝-珠玉の永青文庫コレクション-」】
東京国立博物館にて
2010年6月6日(日) まで