もう3月に入って1週間が経ちましたが、とりあえず備忘録として、二月大歌舞伎【夜の部】の観劇の感想です。
歌舞伎座さよなら公演も、残り2ヶ月。毎月毎月、歌舞伎に投資している上に、チケット代も値上がりしてしまったので、3月、4月のことも考えて、2月はちょっと小休止、と決めていました。でも、二月の「夜の部」のまわりの評判が予想以上に良く、やはり“今”観ておかないと後悔するばかりと思い(笑)、そ思い始めると、いてもたってもいられず、急遽3階席のチケットを買い求め、仕事まで休んで、観に行ってまいりました。
まずは、「壺坂霊験記」。
盲目の夫と甲斐々々しく世話をする妻の物語です。器量がいいと村でも評判の妻ですが、夜な夜な家を抜け出し、夫は妻の貞節を疑います。しかし妻は、夫の目の病を治したい一心で、霊験あらたかな観音様に毎夜お参りをしていて、夫は自分の疑心を悔い、谷底に身を投げる…というお話です。
約70分、三津五郎と福助のほとんど二人だけのお芝居。立ち回りがあるわけでもなく、賑やかな場面があるわけでもなく、そのせいか、まわりではウトウトされてる人もいましたが(笑)、三津五郎と福助のコンビネーションは安心して観ていられて、自分は結構楽しませていただきました。
続いては、狂言風の舞踊で「高坏」。
次郎冠者(勘三郎)は太郎冠者と大名と花見に来たものの、盃をのせる高坏がなく、高坏を買いに行かされます。しかし高坏を知らない次郎は、高足売(橋之助)に騙されて、高足(高下駄)を買わされ、しかも酒を飲んで酔い潰れてしまい…。
酔っ払った勘三郎が、高下駄を履いて、バックにずらり並んだ長唄のお囃子に乗り、タップダンスを踊るのですが、もう面白いのなんの。ちょうどオリンピックとも重なり、フィギュアスケートのマネまで披露し、客席は大喝采でした。飄逸とした勘三郎の持ち味と、軽妙な踊りと、華やかな舞台があいまって、非常に楽しい一幕でした。勘三郎は本物のエンターテイナーですね。
二月公演は、十七代目中村勘三郎の追善ということで、二階には中村屋ゆかりの品々や写真が展示されていました。十七代目の最期の公演となった「俊寛」の衣装が飾られていましたが、昼の部の「俊寛」では、勘三郎はこの着物を着て演じていたのだそうです。だから、「俊寛」をやっている間は、ガラスケースの中は空っぽなのだとか。かなり厚手の衣装ですし、相当汗もかくでしょうし、ちょっと…と思ってしまいましたが、追善という意味ではいい供養になったことでしょうね。
さてさて最後は、今回のお目当て、「籠釣瓶花街酔醒」。
田舎商人の次郎左衛門(勘三郎)が土産話にと、花の咲き誇る吉原に立ち寄ったのが運の尽き。
花魁道中に出くわして、八ツ橋花魁(玉三郎)に一目惚れしてしまいます。江戸に来るたび、八ツ橋のもとを訪れ、身請け話まで持ち出しますが、間夫(仁左衛門)に次郎左衛門との縁切りを迫られた八ツ橋は、宴会の万座の席で次郎左衛門に愛想づかしをし、恥をかかせます。そして、数ヶ月後、しばらくぶりに次郎左衛門が八ツ橋を訪ね…というお話しです。
田舎者で野暮で、しかもあばた面の次郎左衛門と、吉原一美しく、気高く、どこか切なげな八ッ橋とのアンバランスさから生まれる悲哀が物語の核なのですが、吉原の人間模様がしっかりと描かれていて、非常に見応えのある舞台でした。
玉三郎の、美しさや気品、色気は、やはり絶品で、ふと見せる微笑や、計算された間や仕草を見ていると、歌舞伎の枠を超えて、もっと演劇的なものを感じます。勘三郎も、“笑い”と“狂気”のバランスの巧さに、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
水も滴るいい男の“間夫”仁左衛門に、女将の秀太郎、花魁の七之助や魁春、遣り手の歌女之丞etc、まわりの役者陣も素晴らしく、さらに濃いものにしていて、休憩なしの約2時間、ずっと釘付けになってしまいました。
さよなら公演らしい、とっても充実した夜の部でした。観に行って、本当に良かった。
「二月大歌舞伎」
2/23 歌舞伎座にて
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