2010/03/16

没後400年特別展「長谷川等伯」

東京国立博物館で開催中の「長谷川等伯展」行って来ました。2回も。

まずは初日。しかも開館前から並んで観てきました。

初日の朝一ですから、それなりに人はいましたが、館内は混み合うといったこともなく、幸いにも、ゆっくりと鑑賞することができました。今回の展覧会は1ヶ月と短期決戦なので、後半は混雑するのが目に見えていたので、何週間も前からちゃんと有給休暇を申請し、この日を待ち構えていました。

まぁ、こうして意気込んで出かけてはみたものの、あんまり長谷川等伯のことは詳しくないんです。今までに観た等伯の絵はたぶん1桁しかないし。数年前の「対決 巨匠たちの日本美術」展でも、等伯と対決した永徳の方ばかりを観てました。でも、まわりが等伯等伯騒いでるので、昨年、等伯を題材にした小説を読んでみたり、事前に「美術の窓」やら「別冊 太陽」の特集号に目を通したりと、珍しく予習をして(笑)、参戦してまいりました。

  
国宝「楓図屏風壁貼付」

国宝「松に秋草図屏風」


そしたらそれが、素晴らしいこと素晴らしいこと。これまで等伯のことにあまり関心を持ってなかった自分が恥ずかしくなりました。

もともと仏画を描いて暮らす絵師だったこともあり、仏画はどれも見入ってしまうほどの素晴らしいさ。後に狩野派を脅かすほどの絵師になっただけあって、その精緻さや技術は田舎絵師のレベルを超えてます。天井がとても高い東博の平成館でもちゃんと掛けられない高さ10m、横6mもある巨大な「仏涅槃図」は必見です。

「仏涅槃図」(重要文化財)


若いころは雪舟の門人に学び、後年、自ら“雪舟五代”と称しただけあり、水墨画の素晴らしいさも筆舌しがたいものがあります。独特の筆づかい、大胆な構図、絶妙な濃淡の加減。雪舟や牧渓の影響を受けた正統派の水墨画でありながら、江戸期の山水水墨画に通じるような新しさがあります。やがて、その極みというか、悟りのような境地に達したとき、描かれたのが、あの「松林図屏風」だったのかもしれません。「対決…」のときは展示日の関係で見られなかったので、今回初めて目にしました、なんともいえない深い作品です。

国宝「松林図屏風」(右隻)

国宝「松林図屏風」(左隻)


一方で、水墨画でありながら、金雲を描きこんだり、生まれが染物屋だけあってか、花鳥や波濤にも文様のようなデザイン性が感じられたりと、斬新なアイディアや技法を取り入れた作品も多くありました。俵屋宗達よりも早くに、たらしこみを試していたりと、琳派の源流を見た思いさえしました。

「波濤図」(一部)(重要文化財)


等伯の幅広い画風と、ダイナミックかつ繊細な絵筆のタッチに、もうずっと唸りっぱなしです。京都画壇で狩野派が謳歌を味わっていた時代、新風を巻き起こし、狩野派から嫌がらせを受けながらも、最後は豊臣秀吉に認められるまでになり、狩野派と並ぶ一大流派となった長谷川等伯のドラマティックな人生と長年の苦節が、絵からひしひしと伝わってくる、そんな展覧会でした。


「枯木猿侯図」(重要文化財)


【没後400年 特別展 長谷川等伯】
東京国立博物館にて
2010年3月22日(月) まで
(4/10~5/9は京都国立博物館にて開催)

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