2011/10/22

モダン・アート,アメリカン


国立新美術館で開催中の『モダン・アート,アメリカン』展に行ってきました。

鉄鋼業で財を成したフィリップス家のダンカンとマージョリー夫妻の個人コレクションをもとに設立された“フィリップス・コレクション”の所蔵作品による企画展です。現代美術の個人コレクターというと、『ハーブ&ドロシー』というドキュメンタリー映画にもなったヴォーゲル夫妻が最近は話題になりましたが、フィリップス夫妻も、アメリカの近代絵画や西欧絵画を集め、同時代の若い芸術家の支援も行っていたそうです。

今回の展覧会は、その名の通り、19世紀後半から20世紀にかけてのアメリカの近代絵画でまとめられています。

モーリス・ブレンダー・ガスト「パッリア橋」 (1898-99年(1922年完成))

19世紀中ごろの作品はバルビゾン派の影響が色濃く、西部開拓時代のアメリカの原風景的な風景画や農民画が描かれています。やがてフランスで印象派が登場するとアメリカでも印象派のブームが起こり、近代化の波、都市化の波と相まって、描かれる対象も街やそこで暮らす人々に移り、絵のタッチも明るいものになっていきます。 ただ、この頃のアメリカの近代絵画はどうしてもヨーロッパの影響が強く、ヨーロッパの文化を一生懸命追随している様子が強くうかがえます。

ジョン・スローン「冬の6時」 (1912年)

絵画にアメリカらしさが出てくるのは、ニューヨークが世界一の都市となり、映画や芝居、ファッションなど芸術・文化が隆盛してくる20世紀に入ってからで、街の様子、人物や風俗もヨーロッパのそれとははっきりと違った印象になります。ジョン・スローンのこの絵なんて、ヨーロッパでは決してない、いかにもアメリカらしい息吹が感じられます。1912年は日本でいうと明治45年(大正元年)。下のエドワード・ブルースの、摩天楼の夢のような風景は日本では昭和8年。驚きますね。

エドワード・ブルース「パワー」 (1933年頃)

それにしても、19世紀から20世紀初頭の画家たちは全くと言っていいほど知らない名前の画家ばかりで、自分の浅学さを恥じるばかりでしたが、結構観ている皆さんも同じような思いだったのか、人気の画家の展覧会と違って、絵の前に長く滞留する光景があまり見られせんでした。20世紀に入ってくると、ジョージア・オキーフやロックウェル・ケント、エドワード・ホッパーといったアメリカを代表する名の知れた画家たちが登場してきます。

ジョージア・オキーフ「葉のかたち」 (1924年)

エドワード・ホッパー「日曜日」 (1926年)

20世紀初頭、ヨーロッパから入ってきた前衛美術は、アメリカで独特の進化をはじめ、第二次世界大戦後、さらに抽象表現主義として広がりを見せ、現代のモダンアートへと繋がっていきます。ジャクソン・ポロック、フィリップ・ガストン、サム・フランシス、マーク・ロスコなどが登場し、この頃になるとアメリカのモダンアートは俄然面白さが増します。

ジャクソン・ポロック「コンポジション」 (1938-41年頃)

しっかりと20世紀初頭の前衛的な絵画運動を追うなら、それこそフォービズムやキュビズム、シュルレアリスムといった流れを考えなければならないのでしょうが、アメリカの前衛絵画の流れがヨーロッパのそれとどう違ったのか、展示構成の関係か触れられていませんが、19世紀の自然主義的な写実的なリアリズムが印象派を経て、抽象表現へ向かう様子が本展を観ているとよく分かります。もちろんその背景には、ヨーロッパと違ってアメリカが二つの世界大戦の影響を受けなかったことや、特に第二次世界大戦でヨーロッパから多くの芸術家が亡命してきたことなどもあり、絵画運動の舞台がヨーロッパからアメリカに一気に移ったということも大きく関係しているのでしょう。

ヘレン・フランケンサラー「キャニオン」 (1965年)

ちなみに、アンディ・ウォーホルやジャスパー・ジョーンズ、ロイ・リキテンスタインといったポップアートやコンテンポラリーアート、ポストモダンといった類の作品は出展されていません。また日本でも人気のアメリカ人画家アンドリュー・ワイエスもモダン・アートから外れるのでありませんでした。あくまでも19世紀半ばのアメリカ近代絵画から戦後の抽象表現主義へと至るモダン・アートの系譜を辿ったという感じです。

マーク・ロスコ「無題」 (1968年)

今回のお気に入りの一枚。
40年に80歳で初めての個展を開き、101歳で亡くなるまで現役として活躍したアメリカの国民的画家です。その絵は農場や牧場で楽しそうに働く農民や田園生活風景など、いわゆるフォークアート。この絵も、ブリューゲルを思わせる素朴な風景と優しい色彩が印象的です。観ていて温かな気持ちになります。

グランマ・モーゼス「フージック・フォールズ、冬」 (1944年)


【モダン・アート,アメリカン -珠玉のフィリップス・コレクション-】
国立新美術館にて
2011年12月12日(日)まで

MARK ROTHKOMARK ROTHKO









ホッパー (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシックアートシリーズ)ホッパー (ニューベーシック) (タッシェン・ニューベーシックアートシリーズ)









美の20世紀〈13〉オキーフ (美の20世紀 13)美の20世紀〈13〉オキーフ (美の20世紀 13)









モーゼスおばあさんの絵の世界―田園生活100年の自伝モーゼスおばあさんの絵の世界―田園生活100年の自伝

2011/10/15

酒井抱一と江戸琳派の全貌

千葉市美術館で開催中の『酒井抱一と江戸琳派の全貌』展に行ってきました。

今年は酒井抱一の生誕250年。思えば、今年の頭に出光美術館で開催された『琳派芸術』も“酒井抱一生誕250年記念”という冠がついていました。本展も抱一の生誕250年を祝うに相応しい見ごたえのある展覧会になっています。

会場は8つの章から構成されています。第一章は「姫路酒井家と抱一」と題し、酒井家ゆかりの品々が紹介されています。名門譜代大名家の二男として生まれた抱一。武家に生まれながら、どうしていきなり絵師になんてなってしまったのかという素朴な疑問がありますが、抱一の父・忠仰や兄・宗雅、また母方の叔父にあたる松平乗完ら身近な人々も玄人はだしの日本画を多く残していて、決して抱一が突然変異ではなかったということをよく理解できます。

第二章「浮世絵制作と狂歌」では若き日の抱一の作品を取り上げています。文化人らと交友を広げ、俳諧や書画に通じ、狂歌壇としても持て囃されたりと、まだ絵師への道が定まっていないのかとも思われますが、この頃に多く手掛けた浮世絵美人画の確かな筆致は、すでに余芸の域を超え、絵に向かう姿が本物であったことがうかがえます。

酒井抱一「松風村雨図」

第三章は「光琳画風への傾倒」。光琳の作品に触れ、琳派様式を手探りで習得していくわけですが、晩年に「風神雷神図屏風」(非展示)を完成させているように、琳派の研究が決して抱一の通過点だったわけではなく、まさにライフワークであったということが展示からもよく分かります。

酒井抱一「八橋図屏風(右隻)」(※10/10~10/23)

酒井抱一「青楓朱楓図屏風(左隻)」(※10/10~10/30)

第四章「江戸文化の中の抱一」では抱一と関係の深い江戸吉原をめぐる作品を、第五章「雨華庵抱一の仏画制作」では出家した抱一が“画僧”として描いた仏画を展示しています。いずれも琳派とは毛色の異なる、またあまり目にする機会の少ない作品ですが、抱一のレンジの広さ、その多才ぶりを知る上でも面白いと思いました。

酒井抱一「夏秋草図屏風」(重要文化財)(※11/1~11/13)

第六章では「江戸琳派の確立」と題し、抱一の円熟期の作品を中心に、花鳥画や草花図など洗練された江戸琳派の美の真髄に触れることができます。いかにも抱一らしい江戸琳派の繊細な美しさにただただ唸るばかりです。第七章では「工芸意匠の展開」とし、抱一がデザインにかかわった工芸品や着物などが並びます。

 酒井抱一「四季花鳥図巻」(一部)(※10/10~10/30)

第八章「鈴木其一とその周辺」、第九章「江戸琳派の水脈」では、抱一の高弟・鈴木其一をはじめ、抱一以降の琳派の系譜を紹介。昭和初期まで脈々と受け継がれた江戸琳派の流れを見ることができます。抱一の弟子というと其一は筆頭ですが、抱一の養子・酒井鶯蒲や其一の長男・鈴木守一、其一の弟子・酒井道一など、なかなか素晴らしい作品が多く、かなり興味を惹かれました。展示の最後に弟子の作品を簡単に紹介してまとめて終わる美術展はよくありますが、最後の最後まで手を抜くことなく、その充実ぶり、徹底ぶりには驚きました。

鈴木其一「夏秋渓流図屏風(左隻)」(※10/10~10/30)

抱一は、どうしても宗達・光琳に次ぐ三番手的な位置でとらえられることも多く、あくまでも琳派の“継承者”というイメージが強いように思うのですが、こうして見てみると、宗達・光琳の京都の琳派と抱一以降の江戸の琳派は大きく違っているということが良く分かります。確かに抱一は光琳を介し、琳派を再創造したわけですが、そこには洗練された、粋な江戸文化の香りを感じることができると思います。

酒井抱一「四季花鳥図屏風(右隻)」 (※10/25~11/13)

総展示作品数300を超え、途中展示替えもあります。個人蔵や初出展作も多く、抱一の作品をこれだけまとめて観る機会はしばらく先そうそうないんじゃないでしょうか。「千葉、ちょっと遠いな」と思っても琳派ファンなら観に行く価値は十分にあると思います。ちなみに図録はアマゾンほか、一般書店でも購入可能です。


【生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌】
千葉市美術館にて
2011年11月13日(日)まで

酒井抱一と江戸琳派の全貌酒井抱一と江戸琳派の全貌









酒井抱一 (別冊太陽 日本のこころ)酒井抱一 (別冊太陽 日本のこころ)









もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

2011/10/09

朱雀家の滅亡


パソコンがおかしくなってしまい、買いなおしたりしてる間にすっかりアップが遅くなってしまいました。

先日、新国立劇場で“2011/2012シーズン 【美×劇】-滅びゆくものに託した美意識-”の幕開けとなる三島由紀夫原作の『朱雀家の滅亡』を観てきました。

時は太平洋戦争末期。盲目的なまでに「天皇」へ忠誠心を捧げる朱雀家の当主を中心に、息子とその許嫁、そして内縁の妻とが織りなす華麗で壮大な滅びの物語です。

天皇(“お上”)を絶対崇拝し、忠誠的な愛を誓う当主を中心とした朱雀家のバランスが、息子の出征により一気に崩れます。息子が海軍士官として南の島に赴くのは、父に対する複雑な気持ちと反動の裏返しでしょう。これまで仕え、見守るだけだった女中おれい(実は息子の実母)は生身の女を吐き出し、舌鋒鋭く罵しります。前半は絶対的な当主との建前の緊張感、後半は堕ちた当主対女たちとの本音の緊張感で最後までぐいぐいと引っ張ります。

原作はギリシア悲劇の古典、エウリピデスの『ヘラクレス』をベースにしているとのことですが、浅学菲才のため『朱雀家の滅亡』のどの部分が『ヘラクレス』 に影響されていて、どのような趣向が凝らされていたのか分かりませんが、三島由紀夫が自決の3年前(1967年)に書き下ろした戯曲ということで、天皇に 殉じた男と前線に出征し英霊となる息子の二人の言葉一つ一つに、三島の天皇に対する思いが隠されているような気がしました。

朱雀家当主役の國村隼の存在感が凄く、滅びの美学と孤独を見事に体現して圧倒的でした。おれい役の香寿たつきも3幕目は鬼気迫る演技で狂気の中にデカダンスさえ漂い、素晴らしかったと思います。若手の二人はベテラン勢の前では力量のギャップが如何ともし難いと感じましたが、それでも三島の芝居に果敢に挑戦している姿は評価に値するでしょう。

三島の豊饒かつ流麗な台詞に酔いしれるには少々激しい芝居ですが、とても見応えのある舞台でした。


サド侯爵夫人 朱雀家の滅亡 (河出文庫)サド侯爵夫人 朱雀家の滅亡 (河出文庫)

2011/09/23

知られざる歌舞伎座の名画

山種美術館で開催中の『知られざる歌舞伎座の名画』展に行ってきました。

ご存知のように歌舞伎座は建て替えのため、昨年閉館となりましたが、その間倉庫にしまわれてしまう歌舞伎座所蔵の絵画がこのたび山種美術館で一般公開されることになりました。

歌舞伎座に足を運んだことのある方ならご存知でしょうが、歌舞伎座には近代日本画を代表する錚々たる画家の作品が展示されていて、贅沢な空間を作り出していました。閉館の間にどこかで公開してくれないものだろうかと、自分も歌舞伎座に問い合わせてみたことがあったのですが(そのときは未定という回答でした)、このような形で公開されるということはうれしい限りです。しかも、歌舞伎座所蔵の作品のカラーを考えると、日本画専門の山種美術館というのはベストの会場ではないでしょうか。

こうしてあらためて美術館で鑑賞すると、どれもなかなかの逸品揃い。もちろん劇場内に飾られていた作品以外にも、一般公開されていなかった貴重な作品も多く、それらの作品に触れられるというのも今回の目玉でしょう。これだけの絵が集まった歌舞伎座という劇場の素晴らしさ、格式の高さも再認識しました。

高橋由一「墨堤櫻花」(1876-1877年頃)

会場は、「洋画」「日本画」「役者と演目」「史料」に分けて構成されています。洋画のコーナーにある高橋由一の「墨堤櫻花」は歌舞伎座にも飾られていたので見覚えのある方も多いでしょう。これまで一般公開されなかったという亀井至一の「山茶花の局(美人弾琴図)」は皇室お買い上げになった「美人弾琴図」を画家自ら書きなおした作品ということで、「陳列場中人をして絶叫せしむ」と評された当時の評判振りが思い起こされる素晴らしい作品でした。

速水御舟「花ノ傍」(1932年)

日本画のコーナーには竹内栖鳳、横山大観、川合玉堂、鏑木清方、伊東深水、小林古径、奥村土牛等々と明治から昭和にかけての日本画の大家の作品がずらりと並んでいて圧巻です。大観の絵は、貴賓室に飾られることを条件に描いたという逸品。大観得意の富士の絵ですが、黄金の雲から顔を出す荘厳で見事な富士の絵でした。

上村松園「円窓美人」(1943年頃)

「役者と演目」では、歌舞伎の演目や歌舞伎俳優を描いた作品、また歌舞伎俳優自らが絵筆を取った小品や書画が並び、昔の役者の趣味人ぶりも堪能できます。六代目歌右衛門が楽屋の欄間に描いた「紅白梅図」などは見事なものでした。「史料」のコーナーには時の連合国最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥からの手紙や占領下での検閲台本など貴重な史料も展示されています。

岡田三郎助「道成寺(五世中村芝翫[五世中村歌右衛門])」(1908年)

歌舞伎座に飾られていた絵画というと、やはり西階段の1階から2階へ上る踊り場に飾られていた川端龍子の「青獅子」を思い浮かべる方も多いのではないで しょうか。いつもは階段から見上げていた絵も、こうして見るとその大きさと獅子の迫力に圧倒されます。ただ、同じく東階段の1階から2階へ上がる踊り場に飾られていたベルナール・ビュフェの作品が出展されていないのが残念でした。山種美術館の天井高の問題でしょうか。

川端龍子「青獅子」(1950年)
(※写真は歌舞伎座内で撮影したものです)

とはいえ、歌舞伎座で何気なく目にしていた作品とは懐かしい再会。劇場内でついぞお目にかかれなかった松園や御舟、大観などもいろいろ観られて、さすが知られざる名画という趣でした。歌舞伎座でまた会える日が待ち遠しいです。

ありし日の歌舞伎座内で撮影した名画の数々はこちら→
【さよなら歌舞伎座 (2)】


【歌舞伎座建替記念特別展 - 知られざる歌舞伎座の名画】
山種美術館にて
2011年11月6日まで

一冊でわかる 歌舞伎名作ガイド50選一冊でわかる 歌舞伎名作ガイド50選









團十郎の歌舞伎案内 (PHP新書 519)團十郎の歌舞伎案内 (PHP新書 519)









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歌舞伎のびっくり満喫図鑑 (実用単行本)歌舞伎のびっくり満喫図鑑 (実用単行本)









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大雅・蕪村・玉堂と仙厓 -「笑(わらい)」のこころ


出光美術館で開催中の「大雅・蕪村・玉堂と仙厓 -「笑(わらい)」のこころ」展に行ってきました。

池大雅・与謝蕪村・浦上玉堂といった江戸時代の文人画を代表する絵師に、禅の教えをユーモアをもって描いた仙厓和尚の作品を加え、日本の文人画家たちの自由な創造力の源泉のひとつ「笑(わらい)」を知的に表現した4人の個性に光をあてています。

池大雅「瓢念図」

文人画というと、どうしても唐様趣味的な南画や堅苦しい書画を思い浮かべてしまうのですが、今回の展覧会のテーマが「笑」ということで、自由で軽妙洒脱で、機知に富んだ作品が多く、非常に楽しませてもらいました。

池大雅「十二ヵ月離合山水図屏風(右隻)」(重要文化財)

会場は、それぞれ4人にスポットを当てたコーナーに加え、計6つのパートで構成されています。
    第Ⅰ章 笑いの古典 ―瓢箪ころころ、鯰くねくね
    第Ⅱ章 無邪気な咲(わら)い ―大雅のおおらかさ
    第Ⅲ章 呵呵大笑(かかたいしょう) ―幸せを招く笑い型
    第Ⅳ章 達観した笑い ―玉堂の極み
    第Ⅴ章 知的な嗤(わら)い ―蕪村の余韻
    第Ⅵ章 笑わせてちくり ―仙厓さんの茶目っ気
絵画の傍らには、唐様趣味の皿や茶碗、人形などの焼き物も展示されています。

与謝蕪村「山水図屏風(左隻)」(重要文化財)

大らかで明るい大雅、文学的な詩情漂う蕪村、放浪する人生を選んだ自分を達観するような玉堂、ユーモアたっぷりの仙厓。俗っぽく笑いをとるような作品が並べられているわけではありませんが、なんとも憎めない人々、ユーモラスな光景、洒落、センス、頓知。自由な表現力に魅力は尽きません。それぞれの「笑」の個性に作品を眺めながら自然と笑みがこぼれてしまいます。

浦上玉堂「隻峯挿雲図」(重要文化財)

これまで何度も池大雅や与謝蕪村、また仙厓の展覧会を開き、文人画の特集も組んできた出光美術館ですが、今回は「笑」というくくりで自らの所蔵作品の中から選りすぐりの作品を特集陳列しています。決して目新しい作品があるわけではありませんが、ユニークな視点は新鮮でした。あらためて出光美術館のコレクションのレベルの高さというか、奥の深さに感心します。

仙厓「鬼笑画賛」

最後のコーナーは、ひねりが効き過ぎた文人画の巨匠たちの後には、茶目っ気たっぷりな仙厓で大いに笑ってもらいましょうとばかりに、仙厓の楽しい作品が並べられています。書き損じの失敗作も堂々と一枚の絵にしてしまう仙厓の洒落っ気に思わず笑いそうになってしまいました。出光さんの作戦勝ちです。

仙厓「鯛釣恵比須画賛」

細かく描きこんだ作品も多いので、単眼鏡をお持ちの方は持参されると、より一層楽しめると思います。


【日本の美・発見Ⅴ 大雅・蕪村・玉堂と仙厓 -「笑(わらい)」のこころ】
山種美術館にて


2011年10月23日(日)まで 池大雅 (新潮日本美術文庫)池大雅 (新潮日本美術文庫)









与謝蕪村 (新潮日本美術文庫)与謝蕪村 (新潮日本美術文庫)









日本の南画 (世界美術双書)日本の南画 (世界美術双書)