国内所蔵作品をとおして、宋時代に皇帝御用の「官窯青磁」をもって極みに達した青磁の魅力に迫り、また日本における官窯青磁の歴史を辿るというミニ企画です。出品数は20数点と少ないのですが、東博の所蔵作品だけでなく、常盤山文庫やアルカンシエール美術財団、また個人の所蔵品も含め、国内にある貴重な青磁が集められています。
第1章 北宋官窯をもとめて -汝窯と「東窯」とよばれた青磁
『故宮博物院展』にも北宋の青磁が展示されていますが、ここでは国内所蔵の汝窯青磁と北宋官窯、また宗代初期の民窯といわれる東窯の作品が取り上げられています。
「青磁盤」 中国・汝窯 川端康成旧蔵
北宋時代・11~12世紀 個人蔵
北宋時代・11~12世紀 個人蔵
汝窯青磁は世界に70数点しか現存していないといいます。かつて川端康成が所持していたという「青磁盤」は日本で見いだされた唯一の汝窯青磁だそうです。
第2章 日本人が見いだした官窯青磁 -南宋官窯と米色青磁
世界で4点しか現存してないという“米色青磁”。台湾の故宮博物院にも中国の故宮博物院にもなく、全て日本にあるそうで、その4点中の3点が今回展示されています。米色青磁の落ち着いた、それでいて高貴な、飴色に輝く色具合が美しい。
[写真右から] 「米色青磁瓶」「米色青磁洗」「米色青磁杯」 中国・南宋官窯
南宋時代・12~13世紀 常盤山文庫蔵
南宋時代・12~13世紀 常盤山文庫蔵
第3章 日本人の美意識 -「修内司」と砧青磁
中国での陶磁研究の流れとは別に、日本では古来から釉色の美しい南宋青磁を「砧」とよんでいたそうです。その中でも特上とされた南宋官窯が「修内司」。ここでは国宝の「青磁下蕪瓶」をはじめ、もとは平重盛所持の茶碗とされ、室町時代に将軍・足利義政に伝わったという「馬蝗絆」が展示されています。ひび割れがあったため中国に送ってこれに代わる茶碗を求めたところ、既にこれほど優れた青磁は製造されてなく、ひびを鎹で止めて日本に送り返してきたといわれています。
重要文化財 「青磁輪花碗 銘 馬蝗絆」 中国・龍泉窯
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵 (展示は9/3まで)
南宋時代・13世紀 東京国立博物館蔵 (展示は9/3まで)
『日本人が愛した官窯青磁』の展示風景
ほかに東洋館では、5階9室の≪清時代の工芸≫に故宮博物院所蔵の超絶技巧の工芸品に勝るとも劣らぬ精緻な工芸品が展示されています。『故宮博物院展』にも俏色の玉器工芸「人と熊」がありましたが、こちらにも白と黒の「碧白玉双鯉花器」や、瑪瑙でザクロを彫った「瑪瑙石榴」など技巧の粋を集めた作品が並びます。
「瑪瑙石榴」
清時代・19世紀 東京国立博物館蔵 (展示は12/7まで)
清時代・19世紀 東京国立博物館蔵 (展示は12/7まで)
4階8室の≪中国の絵画 日本にやってきた中国画家たち−来舶清人とその交流−≫では、江戸時代に日本に伝わった来舶清人の画業を紹介しています。沈南蘋や宋紫嵒といった日本画に影響を与えた重要な絵師の作品をはじめ、乾隆帝がフランスで制作させたという版画「乾隆平定両金川得勝図」あたりが見どころでしょうか。特に沈南蘋の「鹿鶴図屏風」は秀逸。応挙や若冲に与えた影響、さらにはそこから波及する流れを考えると、江戸絵画は沈南蘋の来日以前以後で区切ってもいい気がします。
沈南蘋 「鹿鶴図屏風」
清時代・乾隆4年(1739) 東京国立博物館蔵 (展示は7/27まで)
清時代・乾隆4年(1739) 東京国立博物館蔵 (展示は7/27まで)
『故宮博物院展』にあわせて一緒に観ると、より充実した中国美術体験ができるのではないでしょうか。
【日本人が愛した官窯青磁】
2014年10月13日(月・祝)まで
東京国立博物館 東洋館5室にて
徽宗のやきもの―汝官窯と北宋官窯の軌跡
青磁 (NHK美の壺)
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