2014/05/26
團菊祭五月大歌舞伎
歌舞伎座で『團菊祭五月大歌舞伎』の夜の部を観てきました。
東京で團菊祭も久しぶり。歌舞伎座が閉場していたときは、ずっと大阪で行っていたので、東京では実に6年ぶりなんだそうです。
さて、最初は『矢の根』。
一時期痩せたなぁと思ってましたが、少し元に戻ったか、隈取りも良く似合い、松緑らしい荒事が楽しめます。ただ、なんでしょう、どうも一本調子な感じで、いまひとつ面白味に欠けたように思います。大きさも大らかさもあるのに、たとえば三津五郎のようなパーッとした明るさがなく、祝祭劇の有り難さが伝わってこないのです。田之助さんがお元気そうで何よりでした。
つづいて『幡随長兵衛』。
長兵衛に海老蔵、女房お時に時蔵、唐犬権兵衛に松緑、十郎左衛門に菊五郎。やはり海老蔵の長兵衛は若い気もするのですが、目障りな若造を十郎左衛門が潰すと見れば面白いし、海老蔵の大きさがそれを可能にしてると思います。血気盛んなところを感じさせつつ、ちょっと影のある男というようにも見えました。長兵衛内の場は悲壮感が強いものの悪くなし。時蔵、松緑もしっかり海老蔵に歩調を合わせ、子役も涙を誘います。子分衆は安定の亀三郎、亀寿、名題昇進の荒五郎は巧いのですが、若手がどうも侠客に見えず。右近が珍しく立ち役で頑張ってました。水野邸の場は長兵衛の覚悟の程がいまひとつ分かりづらく、物足らなさが残ります。だまし討ちをするため長兵衛をおびき出してはみたものの、殺すに惜しい人物だということに真実味が感じられなかったのが残念。
最後は菊之助の『春興鏡獅子』。
菊之助の弥生が流れるように滑らかで柔らかく美しく、絶品。獅子頭もまるで生きているようで、獅子に逆らえず本当に引っ張られて行くように見えます。以前観たときはおとなしめに感じた獅子の精もより勇壮に。毛ぶりも以前より多かったように思いますが、そこは丁寧にしっかりと、そして優美に演じ、獅子の風格を感じさせました。これで獅子の豪壮さが加われば文句なし。
團十郎のいない團菊祭は寂しくもありましたが、あと何年かすれば海老蔵の子も菊之助の子も舞台に上がり、賑やかになるんだろうなと思うと益々楽しみな團菊祭でした。
十二代目市川團十郎 (演劇界ムック)
悲劇の名門 團十郎十二代 (文春新書)
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