ちょうど行った日は、『マン・レイ展』が開幕して2日目、平日ということもあり、館内はガラガラでした。オルセーの異常な熱狂ぶりとは大違いです。
高校生の頃、初めて手にした写真集というのが実はマン・レイでした。写真集というより、ただのポケットブックだったので、たいしたものではありませんが、現代アートに少し興味を持ち始めた自分にとって、いかにもアートアートしたマン・レイの写真集は、“アートかぶれしてるんだ”的な高揚感を当時の自分に与えてくれたんだと思います。青いですね。
といっても、マン・レイについて詳しく何かを知ってるわけではありません。写真を初めてアートの領域に高めた人で、ときどきオブジェを作って、ときどきデュシャンと組んで、といった程度の知識です。
今回の『マン・レイ展』は、<創作の秘密>というサブタイトルが付いているぐらいだから、マン・レイの知られざる一面が紹介されているのかと思いきや、マン・レイの創作活動の変遷を整理し、その創作(実験)の裏側にもスポットを当て、さらに年代順にその歩みを紹介するという、回顧展と言ってもいいような内容でした。2007年からヨーロッパ各地で開催された展覧会であり、一部を除き、マン・レイ財団所蔵の作品で占められているということからも、マン・レイの全貌を知るには格好の展覧会だと思います。
マン・レイ「黒と白」
さて、会場は、年代ごと、また活動の拠点ごとに4つのブロックに分けられています。
まず、画家としてスタートし、自分の絵を記録するためにカメラを使い始めるものの、やがて収入を得るために止むを得ず職業カメラマンとして活動をはじめたニューヨーク時代(New York 1890-1921)。そして、パリに移り住み、ポートレートやファッション写真で成功を収め、シュールレアリストたちと交流し、マン・レイが“アーティスト”として開花したパリ時代(Paris 1921-1940)。戦火を避けてアメリカに戻り、ハリウッドを中心に活動するも不遇の時期を過ごすロス時代(Los Angeles 1940-1951)。そして、再びパリに戻り、アトリエを構えて、精力的に創作活動に励んだ復活のパリ時代(Paris 1950-1976)。それぞれの時代にマン・レイがどのような人たちと交流し、どのようなアイディアを持って、どのような作品を残したか、とても整理され、わかりやすい展示になっていたと思います。
マン・レイ「花を持つジュリエット」
「わたしは謎だ」というマン・レイの有名な言葉があるとおり、確かにマン・レイを説明するのは簡単なことではありませんし、自分も彼がどんな人なのか説明できる自信はありませんが、 今回の展覧会は、そんな謎だらけのマン・レイを少しだけ理解できたような気がします。
【マン・レイ展 知られざる創作の秘密】
国立新美術館にて
2010年9月13日(月)まで
マン・レイ自伝 セルフ・ポートレイト
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