2015/05/31
地獄のオルフェウス
Bunkamura シアターコクーンで『地獄のオルフェウス』を観てきました。
暴力、人種差別、因襲、閉鎖的な土地…。テネシー・ウィリアムズのキーワードがこれでもかというぐらいに散りばめられています。イギリスの若き新進気鋭の演出家が演出したとのことですが、演出は割と忠実に原作(一部改変してるところもある)の重苦しい世界を再現しています。変にエキセントリックになり過ぎず、それでいて気違いじみたおぞましい土地の空気と暴力に踏みにじられていく若者の姿がしっかり描き出されていたと思います。ただ原作の南部の根深い因襲やドロドロした人間関係が、映画版(『蛇皮の服を着た男』)ほど感じられなかった気もします。もっと生々しくても良かったんじゃないかと。
癌に侵された夫に代わって雑貨店を切り盛りするレイディは、“買われた”ように結婚した年の離れた夫と愛のない生活を送り、人生に疲れきっています。そこに突然現れた一人の若い男。閉塞的な生活で常にイライラしていた彼女に色気が戻ってくる、その様を大竹しのぶが実に的確に演じていたなと感じました。自由の魂の象徴である若者ヴァル役の三浦春馬は頑張っているし悪くはないんですが、“蛇皮の服を着た男”を演じるには線が細すぎ。色男としては通っても、南部の男というイメージがせず、テネシー・ウィリアムズ劇の匂いがしません。
精神がイカれた色情狂のキャロルを演じる水川あさみが怪演。現実離れした絵を描く保安官の妻ヴィー役の三田和代もさすがに上手いのですが、ヴィーとヴァルの関係がまるで母と子のようで、原作の不貞に近い関係が見えません。
この日は東京公演の千秋楽だったので、カーテンコールでは主役2人の挨拶も。演出のフィリップ・ブリーンはすでにイギリスにいて、この場にはいませんでしたが、Skypeで舞台を見ているのだとか。そういう時代なんですね。
テネシー・ウィリアムズ〈2〉地獄のオルフェウス (ハヤカワ演劇文庫)
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