三井記念美術館のお正月といえば、円山応挙唯一の国宝「雪松図屏風」の公開。今年はその「雪松図」に合わせ、“雪月花”をテーマに作品を選び集めています。
会場の作品にはそれぞれに、雪をテーマにした作品だったら“雪”のマーク、月だったら“月”のマーク、松だったら“松”のマークが付けれていたりします。
<展示室1>から<展示室3>までは茶道具。
国宝の「志野茶碗 卯花墻」や茶道具の取り合わせ、また“雪月花”と関係の深い茶道具が並びます。
茶碗や竹花入といった茶道具には“銘”が付けられていますが、ここでも「雨後の月」や「淡雪」といった風情のある“銘”を付けられた茶道具が多くありました。
「残雪」と名付けられた平茶碗があって、平茶碗は夏の茶碗だそうですが、残雪を感じさせる白の平茶碗を使うことで暑い夏に涼しさを演出しようとしたのでしょうか。夏に残雪を愛でるとは、なんとも風流ですね。
「粉引茶碗 銘残雪」
朝鮮時代・16世紀 三井記念美術館蔵
朝鮮時代・16世紀 三井記念美術館蔵
<展示室4>は絵画。
広い展示室の正面中央には応挙の「雪松図屏風」。何度か拝見している作品ですが、こうして正面にドーンと置かれるとやはり見応えあるし素晴らしい。数ある応挙の作品の中でこれが最高傑作かというと異論があるのも事実ですが、国宝という名にふさわしい日本を代表する美しさと格調をそなえた作品であることは誰もが認めるところでしょう。
円山応挙 「雪松図屏風」(国宝)
江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵
江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵
面白かったのは抱一の「秋草に兎図襖」。風になびく秋の草花と真っ白な兎、そして右上にはうっすらとした朧月という取り合わせで、へぎ板の地を秋風に見立てていて秀逸。相変わらず洒落ています。
展示室入ってすぐのところにあった応挙の門人・山口素絢の「雪中松に鹿図屏風」や、同じく円山派の川端玉章の「東閣観梅・雪山楼閣図」もいい。玉章はほかにもいくつか出ていたのですが、玉章が10歳で三井家に年季奉公にきてたとは知りませんでした。そうした縁もあって、作品を多く所蔵しているのですね。
個人的には大好きな沈南蘋の「花鳥動物図」(11幅之内5幅展示)が出ていたのが嬉しい。それぞれ季節の花や実と鳥や猫といった動物の組み合わせで、さすが超絶技巧の描写力と鮮やかな色彩が素晴らしい。解説で赤い実をスモモとしていたのがありましたが、あれはライチじゃないでしょうか。ライチと白い鸚鵡の組み合わせは恐らく楊貴妃のつながりじゃないかと思いました。若冲もライチやランブータンなどを描いているので、沈南蘋が描いて何の不思議もありませんし。
酒井抱一 「秋草に兎図襖」
江戸時代・19世紀 三井記念美術館蔵
江戸時代・19世紀 三井記念美術館蔵
つづく<展示室5>、<展示室7>には、土佐光起の「四季草花図色紙」や、同じく光起の「水辺白菊図」、応挙の「富士山図」をはじめ、蒔絵の硯箱や茶箱、文台、また襖絵や能装束、さらには何とも素敵な「唐物竹組大茶籠」など、“雪月花”を材に取った作品が並びます。
“雪月花”といえば日本の伝統的な美の象徴。絵画や浮世絵、工芸品や茶道具までさまざまなところで“雪月花”をあしらうことで、季節を感じ、自然を思い、そこに美を見出していたのだなと感じるお正月らしい展覧会でした。
【雪と月と花 -国宝「雪松図」と四季の草花-】
2015年1月24日まで
三井記念美術館にて
もっと知りたい円山応挙―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
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