今、一番人気のある絵師だけあって混雑必至とばかりに、早々と公開二日目に、しかも朝一で千葉くんだりまで行ってきましたが、全然人が少なくて、ちょっと拍子抜け。でも、その分、ゆっくりゆったり若冲の絵を心行くまで堪能できました。
さて、館内は、「第1章 若冲前史」、「第2章 初期作-模索の時代」、「第3章 着色画と水墨画」、「第4章 晩年期-多様なる展開」の四部構成になっています。
「若冲前史」では、若冲に影響を与えたとされる黄檗派や南蘋派の絵師や若冲と同時代の絵師の水墨画が並べられ、まずは若冲の絵のルーツを予習。つづく「初期作-模索の時代」からは若冲の作品ばかり(一部参考作品はありますが)。初期作とはいえ、今や皇室御物である「動植綵絵」と同時代、またはその前後の作品なので、どれも既に完成度が高く、若冲らしさが十分に感じられ、模索という言葉で片づけてしまうにはもったいないぐらいです。
「隠元豆・玉蜀黍図」
(展示は6/8から)
(展示は6/8から)
「着色画と水墨画」は、いわばこの展覧会のメインコーナー。若冲の代表作、傑作が目白押しです。静岡県立美術館所蔵の「樹花鳥獣図屏風」をはじめ、昨年、 府中市美術館で出会い感動した「石峰寺図」にも再びお目にかかれました。今年の一月に実際に石峰寺も訪れただけに感慨もひとしおです。念願の「果蔬涅槃図」にも出会えました。仏画の涅槃図の釈迦を二股大根に見立てるなど、擬人化ならぬ“擬菜化”して描いたもので、これは若冲の水墨画の、紛れもなく最高傑作の一つだと思います。
「果蔬涅槃図」
(展示は6/6まで)
(展示は6/6まで)
幸い人もまばらで、絵の前にずっと佇んでも周りの人に迷惑をかけるようなこともなかったので、じっくりと堪能することができ、「樹花鳥獣図屏風」も一コマ一コマ、舐めるように鑑賞いたしました。「樹花鳥獣図屏風」は、プライスコレクションの「鳥獣花木図屏風」と酷似していますが、「鳥獣花木図屏風」はいまだ真贋が問われてい一方、こちらは列記とした若冲作と判断されています(若冲が描き、弟子が彩色したという説が濃厚ですが)。このコーナーでは、数年前に北陸の旧家から発見された「象と鯨図屏風」も、6/14から公開されます。
「樹花鳥獣図屏風」(右隻)
最後のコーナー「晩年期-多様なる展開」では、重要文化財の「蓮池図」や木版画(拓版画)の傑作「乗興舟」(千葉市美術館所蔵のもの)など、晩年の練熟した作品や木版画など普段なかなか観られない作品も展示されています。
「乗興舟」(一部)
今回の展覧会は、若冲の水墨画が中心で、だから、“アナザーワールド”なんですね。若冲に「動植綵絵」のような華麗さを求めてる人には物足らないかもしれませんが、若冲の水墨画は自由闊達でほんと素晴らしいです。単純な画題ほど奔放な持ち味が出ている気がします。水墨画という一色の絵なのに、これだけ豊かな絵が描けるとは。このモノクロームの世界は色彩を超えています。
なお、ここまで大規模な若冲の展覧会が首都圏で開かれるのは、約40年ぶりなのだそうです。次はいつ観られるか分かりません。
「象と鯨図屏風」(右隻)
「象と鯨図屏風」(左隻)
(ともに展示は6/14から)
(ともに展示は6/14から)
最後のコーナーが終わると、千葉市美術館で同時開催の「江戸みやげ 所蔵浮世絵名品選」もそのまま観ることができます。先日、府中市美術館で好評だった歌川国芳の浮世絵も数点出展されてます。代表作「相馬の古内裏」もあるのでこちらも是非。
【伊藤若冲 アナザーワールド】
千葉市美術館にて
2010年6月27日(日) まで
もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 (ABCアート・ビギナーズ・コレクション)
目をみはる伊藤若冲の『動植綵絵』 (アートセレクション)
ユリイカ2009年11月号 特集=若冲 〈動植綵絵〉・モザイク画・〈象と鯨図屏風〉…永遠に新しい絵師のすべて
異能の画家 伊藤若冲 (とんぼの本)
若冲になったアメリカ人 ジョー・D・プライス物語
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