円山応挙の展覧会って、都内では4年ぐらい前の江戸東京博物館以来じゃないかと思うんですが、自分は4年前の展覧会には行けずじまいでしたので、応挙オンリーの展覧会というのは今回初めて。それだけにちょっと楽しみにしていました。
展覧会のサブタイトルに『空間の創造』とあるように、応挙は平面的な絵画の世界に“奥行きのある立体的な世界”を描き出し、“空間の画家”と呼ばれているのだそうです。恥ずかしながら、普段、応挙の絵を見ていて、奥行きや立体感といったところに感じ入ったり、注目したことがなかったのですが、入ってすぐの展示コーナーで“空間の画家”としての応挙をまずは実感します。
応挙は若いころ、西洋の遠近法の手法で描いた風景画で、“覗きからくり箱”で覗くと立体的に見える“眼鏡絵”という絵を多く描いていました。最初のコーナーには、その“眼鏡絵”が展示されています。“覗きからくり箱”はありませんでしたので、実際にはどんな風に見えたかは分かりませんが、確かに江戸時代の日本画には見られない遠近法で描かれた奥行きの感のある絵に、後年の応挙の掛け軸や屏風絵などと異なる様に戸惑いつつも、応挙はこういう絵を描くことで腕を磨いていたんだなと、その努力と熱心さに深く感心します。
「眼鏡絵(三十三間堂・通し矢)」
※展示は11/7まで
※展示は11/7まで
三井記念美術館は、入り口すぐの展示スペースが「展示室1」で、通路のような細い展示室を抜けると、広めの「展示室4」があって、また通路のような展示室や小間のような展示室の先に、最後の「展示室7」があるのですが、今回の展覧会はその「展示室4」と「展示室7」に、屏風絵や襖絵といった大型の絵が展示され、そのほかの展示室には掛け軸や絵巻など小ぶりの作品が展示されています。
まず「展示室4」で目を引くのは「雲龍図屏風」で、六曲一双の大きな屏風に二頭の荒れ狂う龍が堂々と描かれています。ほかの屏風絵がどちらかというと“静”を表現している中、他を圧倒する存在感があります。
「雲龍図屏風」(重要文化財)
※展示は11/7まで
※展示は11/7まで
最近、琳派とか若冲とか、少し濃い目の日本画を観る機会が多かったので、こうしてじっくり観る応挙はちょっと淡白に思えて自分でもビックリ。しかし、「雪梅図襖」や「竹雀図屏風」などをジーっと観ていると、日本画の祖ともいわれる雪舟以来、綿々と受け継がれてきた日本画の伝統を確実に身につけ、しかも研究熱心であった応挙の丁寧かつ生真面目な表現の世界に心を打たれます。(「展示室4」は展示替えがあります)
「雪梅図襖(部分)」(重要文化財)
※展示は11/7まで
※展示は11/7まで
最後の「展示室7」は広い空間をたっぷり使い、三井記念美術館所蔵の国宝「雪松図屏風」と、大乗寺の「松に孔雀図襖」が展示されています。
大乗寺は兵庫県の山陰側にあるお寺で、応挙一門が障壁画を描いた寺として知られています。今回はその大乗寺から重要文化財の貴重な襖絵が貸し出されています。応挙というと必ず引き合いに出される大乗寺の障壁画ですが、これを実際のお寺の中で観たら、どれだけ感動するだろうと考えるだけで、ちょっと身震いします。
「松に孔雀図襖」(部分)
応挙のパトロンが三井家だったという関係で、三井家には数多くの応挙の作品があったとされています。応挙の傑作中の傑作として名高いこの「雪松図屏風」も三井家からの依頼により製作されたものだそうで、金地に墨絵の松と真っ白な雪が印象的な見事な屏風絵です。数ある応挙の作品の中で唯一の国宝ですが、それも十分うなづけます。
「雪松図屏風」(国宝)
「雪松図屏風」と「松に孔雀図襖」は展示替えなく、最後まで展示されます。
【円山応挙 - 空間の創造】
三井記念美術館にて
11/28(日)まで
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