2014/08/19

秘蔵の名品 アートコレクション展 日本の美を極める

ホテルオークラで開催中の『秘蔵の名品 アートコレクション展 日本の美を極める −近代絵画が彩る四季・花鳥・風情−』を観てきました。

今回で20回を数えるというアートコレクション展。社会貢献活動に理解のある企業や団体、個人が参加している企業文化交流委員会の主催ということで、これまでもオランダ絵画やフランス絵画、近代日本絵画や洋画などをテーマにした展覧会が毎年行われています。

今年は≪近代絵画が彩る四季・花鳥・風情≫をテーマに、近代日本画家や洋画家の作品を中心に展示。普段なかなかお目にかかれない企業所有の作品や、幅広く全国の美術館から秘蔵の作品約80点が出品されています。

展覧会のウェブサイトを見ても情報が少なく、いったいどんな作品が並んでるのか少々不安だったのですが、多少バラエティに富んでるものの、優品も多く見応えがありました。

横山大観 「夜桜」(左隻)
大正14年(1929) 大倉集古館蔵

≪四季≫では、横山大観の代表作「夜桜」や高橋由一の「墨水桜花輝耀の景」といった知られた作品もありましたが、川合玉堂の「秋山縣瀑」や「深山抄秋」、大観の弟子・大智勝観の「梅雨あけ」、南薫造の「安浦風景」、加山又造の「雪晴れの火山」あたりが個人的には印象に残りました。

先日、山種美術館の『水の音』で作品を拝見し気になっていた奥田元宋も「秋輝」と「遠山早雪」の2点が出品。大好きな松林桂月も「南天」という晩年の作品があり、これがまた秋らしい落ち着いた趣を感じさせ良かったです。

前田青邨 「みやまの四季」
昭和32年(1957) 高島屋史料館

素晴らしかったのが前田青邨の「みやまの四季」で、半円の紅白梅に、よく見ると小鳥が集まっていて、楽しそうなさえずりが聴こえてきそう。もとは緞帳用に描かれたものということですが、そのデザイン性の高さとモダンな表現が効いています。

岡本秋暉 「花卉孔雀図」
安政4年(1857) 松岡美術館

≪花鳥≫では、まず川端玉章の「雪中群鴨」が秀逸。円山派を思わせる写実的な鴨の描写と構図・バランスの感覚が素晴らしい。ほかにも、今年回顧展を拝見し感銘を受けたばかりの木島櫻谷や、最近気になっている山元春挙、大好きな岡本秋暉もあり、個人的には満足度高し。中島千波の「坪井の枝垂桜」もいいですね。

竹内栖鳳 「河畔群鷺」
明治37年頃(c.1904)  ひろしま美術館蔵

ここでの一押しは、竹内栖鳳の「河畔群鷺」。昨年の『竹内栖鳳展』でも出品されていて、そのときもかなり感動しましたが、やはり素晴らしいですね。筆さばきの妙というんでしょうか、筆で刷いた跡を残すことで地の屏風の金が背景に残り、独特の色合いを生み出していて、また白鷺がアクセントになっていて見事です。

上村松園 「春宵」
昭和11年(1936) 松岡美術館蔵

≪風情≫では美人画がいい。おなじみの松園、清方、深水のほかに、池田蕉園の「秋思」や島成園の「化粧」、北野恒富の「願いの糸」など美人画の逸品が並びます。

橋本明治 「舞妓」
昭和34年(1959) ウッドワン美術館蔵

個人的には、橋本明治の「舞妓」や菊池隆志の「初夏遊園」、小倉遊亀「夏の客」、岡田三郎助「舞妓」あたりが好きでした。

藤島武二の初期の代表作「池畔納涼」も出ていました。黒田清輝の影響を感じさせる外光派的な作品で、淡く柔らかな色調が印象的です。

藤島武二 「池畔納涼」
明治30年(1897) 東京藝術大学蔵

そのほか静物などで気になる作品もありましたが、会場の一番最後に飾ってあった小松崎邦雄の「聞香」にはしばし足を止めて見惚れてしまいました。黒を背景に二人の舞妓を描いた作品で、写実性の高さとともに洗練されたシックな美しさ、そしてそこはかとなく漂う色気。素敵です。


入口や会場内に、本展の目録が300円で売っていて、全額日本赤十字社に寄付されるとのことです。出品作の写真は一部のみですが、解説や作品リストも載ってます。


【第20回記念特別展 日本の美を極める −近代絵画が彩る四季・花鳥・風情−】
2014年8月31日まで
ホテルオークラ 別館地下2階アスコットホールにて


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