2019/05/10

東国の地獄極楽

埼玉県立歴史と民俗の博物館で開催の『東国の地獄極楽』に行ってきました(会期終了)。

長かったゴールデンウィークもいよいよ最後の一日。次の日は10日ぶりに仕事だし、家でブログを書いたりしてゆっくり過ごしていようと思ってたのですが、いや待てよ、見逃してる展覧会はないかとTwitterをいろいろ見てたら、『東国の地獄極楽』が評判が良いのを知り、最終日に駆け込みで観てきました。

本展は、中世以降の東国で人々が地獄極楽といった死後の世界とどう向き合ってきたのかを探ろうという仏教美術展。地元・埼玉に関わりの深い作品を中心に、浄土信仰にまつわる絵画や仏像、歴史資料などが紹介されています。


会場の構成は以下のとおりです:
Ⅰ “地獄極楽”の誕生
Ⅱ 争乱の東国から-彼岸への旅路
Ⅲ 東国の地獄極楽-浄土宗第三良忠と関東三派の東国布教
Ⅳ 地獄極楽のそれから
断章 ひろがる地獄極楽

最初に平安時代中期の僧・恵心僧都(源信)の坐像と源信が著した『往生要集』(展示は江戸時代の絵入り本)を展示し、『往生要集』が日本人の浄土観・地獄観に影響を与えたことに触れ、つづいて「源平合戦図屏風」や「一の谷合戦絵巻」を見せ、平安後期にはじまる武士勢力による争乱が末法思想に繋がり、法然が創始した浄土宗が広まったことが解説されています。ここまでコンパクトだけど分かりやすい。

「阿弥陀二十五菩薩来迎図」(重要文化財)
鎌倉時代・13世紀末〜14世紀初頭 福島県立博物館蔵

そして、いきなり熊谷直実が出てくるのですが、なぜ熊谷直実かというと、直実は出家して浄土宗へ帰依し、蓮生法師として関東に浄土宗を布教して回るんですね。正に『熊谷陣屋』、歌舞伎ファンとしてはフムフムとなります。

関東を中心にした浄土宗の広がりについてもかなり詳細に触れられていました。三祖良忠上人とその門下の関東三派(藤田派、名越派、白旗派)の覇権争いのことはちょっと複雑で小難しいのですが、その背景にある知恩院と知恩寺の対立など興味深い内容でした。

江野楳雪 「十界図」
江戸時代後期・19世紀 曹源寺蔵(東松山市)

地獄絵は近世のものばかりでしたが、幕末期の東松山や川越で活動したという町絵師・江野楳雪の十界図と六道図が大変優れていて、これもとても興味深かったです。

地元埼玉の仏像・仏画だけでなく、国宝の「法然上人行状絵図」(展示は直実の予告往生の場面)や清涼寺の「迎接曼荼羅」、知恩院の「浄土五祖図 」など中央の優品も多い。造像当初の姿をとどめるという快慶または工房作説のある新出の「阿弥陀如来立像」も気になるところです。なかなか収穫の多い展覧会でした。


【東国の地獄極楽】
2019年5月6日まで
埼玉県立歴史と民俗の博物館

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