2016/07/30

大妖怪展

江戸東京博物館で開催中の『大妖怪展』に行ってきました。

夏休みのこの時期にやってるし、妖怪ウォッチまであるし、どうみてもファミリー層狙いなんだけど、監修が元板橋美術館館長の安村敏信先生だし、かなりツウ好みの作品あるし、ターゲットをどこに置いているかいま一つ分かりかねるのですが、早速拝見してまいりました。

連日混雑してると聞いていたので、開館40分前に行ったら、まだ2人目。あれ、意外に空いてるなと思ったのも束の間、ぞくぞくと人が集まって来て、開館時間には長蛇の列ができていました。そして開館と同時に元気な子どもたちに一気に抜かれ・・・。早く来てもあまり意味なかったかも(笑)



第1章 江戸の妖怪大行進!

第1章はいくつかのセクションに分かれていて、妖怪の絵巻や図鑑(?)、幽霊画、浮世絵などが並びます。北斎や若冲もあるし、それなりの絵師が描いた妖怪絵や幽霊画も良いのですが、知る人ぞ知るというマニアックな妖怪絵があるのも見逃せません。

葛飾北斎 「天狗図」
個人蔵 (展示は7/31まで)

北斎のこんな肉筆画は初めて見ました。まるでスパイダーマン。若冲の「付喪神図」は何度か観ていますが、いかにも若冲らしくて楽しい。口元も緩みます。白隠が描いた妖怪図なんていうのもあるんですね。高井鴻山の妖怪絵にも興味を持ちました。文人画のような独特の水墨のタッチの妖怪というのが面白い。

茨木元行 「針聞書」
九州国立博物館蔵 (期間中頁替えあり)

きもかわ系(?)の妖怪絵といえば「針聞書」。基本的には針の打ち方など鍼灸についての本なのですが、体の中にいるとされる“虫”の絵が超ユニーク。“大酒の虫”なんていうのがあって、なるほど大酒飲みは虫の仕業なのかと(笑)。隣に展示されてた各地の妖怪目撃情報を集めた「姫国山海録」や「怪奇談絵詞」(虎にゃあにゃあ!)のヘタウマな妖怪も笑えます。

「幽霊図」
個人蔵

もちろん楽しい妖怪ばかりでなくて、震え上がりそうな幽霊画も。おなじみ谷中の全生庵の幽霊画などいくつか並んでいたのですが、その中でも個人蔵という「幽霊図」が傑作。薄墨でさーっと描いているように見えて、髪の毛の一本一本が怨念の如く丹念に描き込まれていたりします。しかも口元には血が! 暗い部屋の中で一人では絶対観たくないやつ。

月岡芳年 「百器夜行」
国際日本文化研究センター蔵 (展示は7/31まで)

もちろん浮世絵の妖怪や幽霊もあって、歌川国芳と月岡芳年を中心に国貞や北斎、暁斎などズラリ。国芳は最近ちょっと食傷気味ですが、子どもにもウケるのか、相変わらず人だかりができていました。

版本の展示では鳥山石燕が「画図百鬼夜行」をはじめ複数の妖怪本があって興味深い。書籍なので見開きでしか展示されないのが残念ですね。パラパラめくって見たい。


第2章 中世にうごめく妖怪

鎌倉時代、室町時代を中心とした絵巻物も名品揃い。何と言ってもオススメは「土蜘蛛草紙絵巻」。数年前にトーハクの常設で一巻まるまる展示されていましたが、今回はクライマックスの土蜘蛛の場面のみ。それでもあまり公開される作品でないので貴重かと。

「土蜘蛛草紙絵巻」(重要文化財)
東京国立博物館蔵 (展示は7/31まで)

ほかにも「百鬼夜行絵巻」や「付喪神絵巻」、酒呑童子の絵巻や藤原鎌足伝説を描いた「大織冠図屏風」などなかなかの見もの。

印象的だったのは圓福寺の「熊野観心十界図」。真ん中に“心”と書かれていて、その上部に虹のような半円を若い男女が上り、そして下るに連れ年を重ねていくという人の一生が描かれています。こういうのは初めて観ました。


第3章 妖怪の源流 地獄・もののけ

貴重といえば、こちらも滅多に公開されない「辟邪絵」。今回は「神虫」のみの出品ですが、こんな絵でも国宝だし、今年『国宝 信貴山縁起絵巻』で公開されたばかりなので、よく他館に貸し出してくれたなと思います。ちなみに「神虫」は邪鬼や疫鬼を食べる良い妖怪。

「辟邪絵(神虫)」(国宝)
奈良国立博物館蔵 (展示は7/31まで)

個人的に今回一番感動したのが源信と伝わる「地獄極楽図屏風」。源信といえば『往生要集』で知られますが、その地獄と極楽の様子が一つの屏風に描き込まれています。右下に現世、左下に地獄。荒海を隔てた先には極楽があって、舟で極楽へ行く様子や阿弥陀如来の来迎なども。掛軸では観ることはあっても屏風仕立てというのが珍しい。

伝・源信 「地獄極楽図屏風」(重要文化財)
金戒光明寺蔵 (展示は7/24まで)

源信の『往生要集』の影響で絵画化されたといわれる「六道絵」や「地獄草紙」も複数展示されていて、結構充実してます。新知恩院蔵の「六道絵」には緑の髪に茶色の体の鬼や赤い髪に緑色の体の鬼がいて、宗達の風神雷神を思わせます。


第4章 妖怪転生

そして最後に妖怪ウォッチ。なぜか土偶も並んでいて、土偶は妖怪ではないし、意図は分からなくはないけど、勘違いする子どももいたりするんじゃないでしょうか。確かに妖怪っぽい顔してるんですけどね。

とはいえ、とにかく妖怪絵の展覧会の決定版であることは間違いなく、これを子どもだけに見せるのはもったいない。なお館内には予想外の動きをしたり、ずかずか列に割り込んだり、ガラスケースにベタベタ張り付いたり、ときどき大きな声をあげたりする妖怪がたくさん生息してるのでご注意を。大人のよい子は妖怪もいなくなる夜間開館の方がいいかもしれません。8/2からは後期展示が始まります。


【大妖怪展 -土偶から妖怪ウォッチまで】
2016年8月28日(日)まで
江戸東京博物館にて


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