先人たちがどのような「暮らし」を思い描き、身の回りの器や家具に丁寧さや丹念さを込めてきたのか。近代から現代の工芸品約100点により、それらを振り返り未来につなぐという展覧会です。
作品は1930~40年代から高度経済成長期あたりまでが中心で、陶磁器や竹細工、蒔絵箱など優れた工芸品ばかり。メインは日本の工芸家のものですが、ルーシー・リーやマルセル・ブロイヤーなど海外作家のものもあったりします。
人間国宝による作品も多く、どれも技法や素材にもこだわった手の込んだ一級品なので、暮らしの中で使うにはちょっとハイソな感じもあります。ただ、こうしたモダンな工芸作品に囲まれた暮らしにみんな強く憧れたんだろうなと思うと、どれもとても愛おしく思えます。
会場はいくつかの小間に分かれていて、それぞれテーマごとに作品がまとめられています。フラッシュを使用しなければ、写真撮影OKです。
[写真左から] 三代徳田八十吉 「燿彩鉢 創生」 1981年
喜多川平朗 「刺納朽木文帯」 1974年
喜多川平朗 「刺納朽木文帯」 1974年
[写真左から] 木村雨山 「訪問着 群」 1963年
志村ふくみ 「紬織着物 水煙」 1963年
志村ふくみ 「紬織着物 水煙」 1963年
東博で開催された『人間国宝展』は技術的にどれだけすごいか、デザインとしてどれだけ優れているかという視点に立って近代工芸を見るというところがありましたが、本展はそんなお高く止まってなくて、もっと暮らしに根づいているといか、こういう工芸品が近代の生活に潤いを与えていたんだろうなという感じを持てます。まあ実際問題、徳田八十吉のお皿を日常の中で使えるかといったら、そうはいかないわけですが、少なくともこうした近代工芸から生まれたデザインや素材、センスは私たちの手の届く品々にも伝播していくんだと思います。
藤井達吉 「草花図屏風」 1916-20年
さりげなく藤井達吉の屏風とかランプとか、こういうイメージ好きです。展示ケースの中にただ並べるだけでなく、こうして住まいの空間の中に置かれていると作品が生きてきますね。
藤田喬平 「飾筥 細雪」 1998年
[写真左から] 高野松山 「牡丹木地蒔絵手箱」 1956年
生野祥雲斎 「白竹宗全花籃」 1969年
生野祥雲斎 「白竹宗全花籃」 1969年
飯塚小玕斎 「竹刺編菱文堤盤」 1975
竹製の籠にしても、蒔絵の小箱にしても、形の美しいもの、質のいいものが普段の生活で身の回りにあると、生活に彩りや心に豊かさが生まれる気がします。
ルーシー・リー 「青釉鉢」 1978年
ルーシー・リー 「コーヒーセット」 1960年
ルーシー・リーの作品もいくつか展示されています。珈琲カップがシックでいいですね。手に入るんだったら欲しいぐらい。
minä perhonen 「skyfull」 2012年
寺井直次 「金胎蒔絵水指 春」 1976年
寺井直次 「金胎蒔絵水指 春」 1976年
minä perhonenの皆川明氏とのスペシャルコラボレーションの展示も。minä perhonenのテキスタイルと工芸館の所蔵品を並陳しています。現代版“床飾り”といったところでしょうか。さりげなく置かれた須田悦弘の木の葉が素敵。
minä perhonen 「winter flags」 2011年
須田悦弘 「葉」 2007年
須田悦弘 「葉」 2007年
東京国立近代美術館の特別展を鑑賞すると、当日に限り無料で入場できます。北の丸公園に近いので散歩がてらにもいいですね。
【未来へつづく美生活展】
2016年2月21日(日)まで
国立近代美術館工芸館にて
ミナ ペルホネンのテキスタイル mina perhonen textile 1995-2005
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