2019/11/16

福美コレクション展

京都・嵐山に先月新しくオープンした福田美術館に行ってきました。

嵐山は観光客で混んでるし行きたくないなと思ったのですが、コレクション展のラインナップを観たら、これは行かなくてはいけないだろうなと思い、十数年ぶりに嵐山へ。

嵐山のお土産屋さんが並ぶメインの通りは原宿の竹下通りか鎌倉の小町通りかというぐらい混んでるので、裏道を通っていくのをお薦めします。美術館は嵐山屈指の観光名所、渡月橋のすぐそば。人気のアラビカ京都嵐山に隣接した桂川沿いにあります。超絶いい場所。

これだけの土地、どれだけのお金があれば買えるんだろうとは野暮な話ですが、福田美術館のオーナーは消費者金融大手・アイフルの創業者の方。つまり私設美術館なんですね。「京都という土地に対して、恩返しがしたい」という思いから美術館を設立したといいます。

所蔵点数は約1500点。琳派から円山・四条派、京都画壇など京都に馴染みの深い近世・近代日本画の作品が多くあるようです。で、今回の『福美オールスターズ』と題したコレクション展は、その膨大なコレクションの中から選りすぐりの作品、日本画は75点(2期計)、洋画は7点(展示替えなし)が2期に分けて公開されるわけですが、噂には聞いてましたが、いやーこんなに優品揃いとは思いませんでした。

[写真右] 竹内栖鳳 「金獅図」 明治39年(1906)
[写真左] 竹内栖鳳 「猛虎」 昭和5年(1930)

まずは受付。事前にオンラインチケットの購入がオススメです。受付でチケットを購入するより割引になってます。音声ガイドはスマートフォンを持っていれば、無料。作品リストの裏面には音声ガイドに利用方法が書いてあります。イヤホンのレンタルは有料なので、イヤホンは忘れずに持って行きましょう。

2階は明治から昭和初期にかけての近代日本画。展示室内に入ってすぐ目に飛び込んでくるのが竹内栖鳳の獅子と虎。いきなりインパクトのある栖鳳の写実に目が釘付けです。獅子の迫力も凄いけど、正面から虎をリアルに描いた観察力に感服します。

横山大観 菱田春草 「竹林図・波濤図」 明治40年(1910)頃

[写真右] 菱田春草 「梅下白猫」 明治36年(1903)
[写真左] 菱田春草 「春庭」 明治30年代(1897-1906)

隣には竹林に淡い青を刷き、靄の中にも奥行きを感じさせる大観の「竹林図」と、波が打ちつける荒磯にこちらも青色を効果的に使った「波濤図」。大観らしい雲海に浮かぶ富士の屏風を挟んで、ここにも春草の掛軸が2点。水墨も良いですが、春草の彩色の清新な美しさはまた格別ですね。特に「春庭」の若草の緑から春の陽光へと変わるグラデーションの綺麗なこと。朦朧体に印象的な色彩を用いることにより独自のスタイルを築いた春草らしい逸品です。

木島櫻谷 「遅日」 大正15年(1926)

とても印象的だったのが木島櫻谷の対幅の「遅日(ちじつ)。比較的大きな掛軸で、墨一色なのに非常に繊細にグラデーションをつけることで、モノトーンの独特の色合いが柔らかさと深みを与え、他にない新しい水墨の世界を創り出すことに成功しています。

[写真右] 上村松園 「軽女悲離別図」 明治33年(1900)
[写真左] 上村松園 「長夜」 明治40年(1907)

松園が2点。行灯のもと読書に夢中の若い娘と灯芯を上げて明るくしてあげる年上の女性を描いた「長夜」。髪型や着物を描き分けることで二人の女性の年齢や性格を表しています。「軽女悲離別図」は赤穂浪士・大石良雄と愛妾・お軽の別れを描いた一枚。いずれも松園初期の作品で、後年の美人画と異なり、作品に物語性があるのが個人的には好きなところ。

そばには速水御舟の巨大な「山頭翠明」。いわゆる群青中毒にかかっていた頃の作品と思われますが、別にこんなに大きく描く意味なかったでしょ…というところがあって、なんだなかなーという感じ(笑)。

六曲一双の大きな屏風で写真に収まりきらなかったのですが、橋本関雪の「後醍醐帝」が素晴らしかった。右隻に尊氏、左隻に女性の格好(よく見ると髭がある!)をして御所を抜け出す後醍醐帝を描いていて、その緊張感のある構図もさることながら、人物表現の巧さ、馬の丁寧な描きこみ、鎧の精緻な描写など見れば見るほど唸るばかり。長く所在不明だったものが近年発見され、107年ぶりに公開されたのだそうです。

[写真右から] 竹久夢二 「秘薬紫雪」 昭和3年(1928)頃
「切支丹波天連渡来之図」 大正3年(1914)、「待宵」 大正元年(1912)頃、「庭石」 昭和6年(1931)頃

近代日本画の最後は竹久夢二の肉筆画がずらり。福田美術館は夢二のコレクションでも国内有数なのだとか。個人的に夢二はそれほど好きではないのですが、こうした掛軸の夢二もなかなか雰囲気があっていいですね。

俵屋宗達 「益田家本 伊勢物語図色紙 第二段 西の京」 江戸時代・17世紀

さて、ひとつ上の階は江戸絵画。いきなり宗達芸術を代表する「伊勢物語図色紙(益田家旧蔵本)」があってビックリ。状態も良く、小さな画面に凝縮された構図のまとまりと金地の濃密な色彩に見惚れてしまいました。

隣には尾形乾山の珍しい歌仙絵「三十六歌仙絵 伊勢」。乾山らしいおおらかで愛嬌のある歌仙絵ですが、十二単が実に丁寧に描かれていて、実はとても繊細な作品でした。その隣には光琳の「十二ヶ月歌意図屏風」も。

深江芦舟 「草花図屏風」(重要文化財) 江戸時代・18世紀前半

琳派では深江芦舟の「草花図屏風」も印象的。芦舟というと「蔦の細道図屏風」が有名ですが、出光美術館で以前見た「四季草花図屏風」が斬新で殊の外素晴らしかったのですが、この「草花図屏風」もどこか幻想的な草花の美しさで、宗達や光琳ともまた違う装飾性が目を引きます。

[写真右] 曽我蕭白 「荘子胡蝶之夢図」 安永年間(1772ー1781)
[写真左] 長沢芦雪 「薬玉図」 天明8年(1788)

若冲があって、応挙があって、蘆雪があって、蕭白があって、つくづく良い作品を持ってるな〜と感心。蕭白の「荘子胡蝶之夢図」の胡蝶の夢を見てるのか荘子の眠る姿がほのぼのとしてかわいい。

呉春 「三羅漢図」 天明3年(1783)

こちらにも呉春。退色してるのか色が少し薄めでしたが、とても細かに描きこまれていて、アクの強い羅漢の表情も良い。象が並んだ表装裂もユニーク。

隣には呉春の師・蕪村のなんだかとても豪華な屏風が。よく見ると一般的な絹本ではなく高価な絖(ぬめ)絹に描かれていて、蕪村のいわゆる屏風講時代の作品だと分かります。絖の屏風に描きたいという蕪村の希望を叶えるため、弟子たちが屏風講を組んで資金を集めたという逸話が残されていて、この作品もいつになく緻密な筆致と鮮やかな色彩で、人物も実に丁寧に描かれています。

与謝蕪村 「茶筵酒宴図屏風」 明和3年(1766)

伊藤若冲 「群鶏図押絵貼屏風」 寛政9年(1797)

今回最も驚いた作品のひとつが筋目描きも見事な若冲の「群鶏図押絵貼屏風」。若冲の群鶏図の屏風はいくつか観ていますが、本作が特徴的なのは各扇の構図が極めて似通っているのと、雌鶏が描かれているものはあるものの雛や蔬菜など余計なものは一切描かれず、ほぼ雄鶏が大きくクローズアップされていること。パターン化されているとはいっても、濃淡使い分けた巧みな筆さばきで鶏のさまざまな姿態を描いていて、見飽きることはありません。家に帰って過去の若冲の展覧会の図録をひっくり返して調べたら、千葉市美の『若冲アナザーワールド』や山種美術館の『ゆかいな若冲・めでたい大観』に出品された個人蔵のものと同じでした。その図録によると左隻第六扇と他の11図では制作された時期が異なるとありました。

来年3/20からは『若冲誕生-葛藤の向こうがわ』という企画展を開催するそうで、どんな若冲作品が出てくるのか、今から楽しみです。

[写真右から] 勝川春章 「桜下美人図」 安永9年〜天明2年(1780ー1782)
歌川広重 「美人と猫図」 安政4年(1857)、葛飾北斎 「砧美人図」 文化8年〜文政3年(1811ー1820)

最後に肉筆浮世絵。春章、広重、北斎。特に北斎「墨堤三美人図」がいいですね。着物の表現がとても繊細。

葛飾北斎 「墨堤三美人図」 文化年間(1804-1818)

同じ階には桂川沿いの展望室を兼ねた展示スペースがあり、こちらには西洋画が展示されていました。数は多くありませんでしたが、モネやマティス、ローランサンなどが展示されています。2階にはカフェもあって、嵐山の風景を眺めながらゆっくりできるのでこちらもオススメです。

福田美術館のコンセプトが「100年続く美術館」だそうで、これかもコレクションは増えていくんでしょうね。嵐山は混むからこれまで避けてましたがが、今後来る機会が増えそうな気がします。


【開館記念 福美コレクション展】
[Ⅰ期] 2019年10月1日(火)~11月18日(月)
[Ⅱ期] 2019年11月20日(水)~2020年1月13日(月・祝)
福田美術館にて



和樂(わらく) 2019年 10 月号 [雑誌]

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