2年前にイタリアで発見され、大きなニュースになったので覚えてらっしゃる方も多いでしょう。今回その「伊東マンショの肖像」が日伊国交樹立150年の記念事業の一つとして初公開されています。
いつもは屏風絵や障壁画が展示されている本館7室がその会場。照明もいつもより暗めで、装いもちょっと特別。
描いたのはルネサンス期を代表する画家ティントレットの息子ドメニコ・ティントレット(注文を受けたのはドメニコの父で、有名な方のヤコポ・ティントレットだが、実際に描いたのは息子とされているらしい)。大きな襞襟のついたスペイン風の衣装に身を包み、思った以上に今風のイケメンでした。
伊東マンショは豊後のキリシタン大名大友宗麟の遠縁で、宗麟の名代として天正遣欧使節の一人としてヨーロッパに渡ったわけですが、渡欧したときはまだ13歳ぐらいだったとか。この「伊東マンショの肖像」はローマ教皇に謁見した記念に描かれたもので、15歳ぐらいの頃じゃないかという話です。髭なんか生やして(笑)
作品は胸より上のみの肖像画で、比較的小さめなのですが、西洋人を描いたルネサンスの肖像画とは異なる雰囲気というか、やはり馴染みのある東洋風の顔立ちに惹きつけられます。
ドメニコ・ティントレット 「伊東マンショの肖像」
イタリア・1585年 トリヴルツィオ財団蔵
イタリア・1585年 トリヴルツィオ財団蔵
そばには関連資料も展示されています。「三聖人像」は長崎奉行所が押収した品とか。外国人宣教師が日本に持ち込んだのでしょうが、それを当時の日本人教徒が模写したのでしょうか。かなり忠実に模写されています。
[写真右より] 「三聖人像」(重要文化財) ヨーロッパ・16~17世紀
「三聖人像(模写)」(重要文化財) 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
東京国立博物館蔵
「三聖人像(模写)」(重要文化財) 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
東京国立博物館蔵
見ものは17世紀後期にイタリアで描かれ、イタリア人宣教師が所持していたという「聖母像(親指のマリア)」。携行していたというだけあり、作品はかなり小さいのですが、17世紀フィレンツェの宗教画家カルロ・ドルチの聖母像に酷似していることが指摘されています。
「聖母像(親指のマリア)」(重要文化財)
イタリア・17世紀後期 東京国立博物館蔵
イタリア・17世紀後期 東京国立博物館蔵
すぐそばの国立西洋美術館の常設展では現在、その「聖母像(親指のマリア)」との関係が指摘されているカルロ・ドルチの「悲しみの聖母」が展示されています。美しく清らかな顔立ちも目を見張るのですが、深い青色のマントや背景の後光の描写が素晴らしい。折角なら併せてご覧になられるといいと思いますよ。
カルロ・ドルチ 「悲しみの聖母」
1655年頃 国立西洋美術館蔵
1655年頃 国立西洋美術館蔵
【特別公開「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」】
2016年7月10日(日)まで
東京国立博物館・本館7室にて
天正遣欧使節 (松田毅一著作選集)
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