2014/10/18

京へのいざない


京都国立博物館に新しくできた平成知新館のオープン記念展『京へのいざない』に行ってきました。

12日に名古屋で歌舞伎を観ることになっていたので、ほんとうは連休の13日に京博とゆっくり京都観光を楽しむ予定でいたのですが、台風接近に伴い、名古屋に行く前に京都に寄るという慌ただしい弾丸ツアーとなってしまいました(涙)。


京博には開館の30分以上前に着いたものの、『国宝鳥獣戯画と高山寺』展の人気もあって、入館するにも智積院前の交差点の角を曲がるくらいの大行列。仕方がないので、智積院や三十三間堂など近くの寺院を先に拝観してから館内へ。

まずは3階から。
3階は≪京焼≫と≪金・銀・銅の考古遺宝≫。≪京焼≫は野々村仁清の重文の香炉や色絵磁器にはじまり、高橋道八や仁阿弥道八、奥田頴川、青木木米といった京焼の名手による逸品が並んでいていかにも京都らしい。≪金・銀・銅の考古遺宝≫では、飛鳥時代の球体の銅製の骨壺「金銅威奈大村骨蔵器」や藤原道長が自筆のお経を納めたという日本最古の経筒「金銅藤原道長経筒」から古墳時代の三角縁神獣鏡や銅製の武器などを展観。

「伝源頼朝像」(国宝)
鎌倉時代・13世紀 神護寺蔵 (展示は10/13まで)

2階は絵画のフロアー。
まずは≪肖像画≫から。「伝平重盛像」「鳥羽天皇像」「伝源頼朝像」の国宝・重文・国宝という並びが贅沢。「伝源頼朝像」は今では頼朝ではなく足利尊氏の肖像とも足利直義とも言われていますが、肖像画の最高峰なのは確か。山口晃さんはこの絵を初めて観たときがっかりしたと書いてましたが、いやいやなんの、得も言われぬ気高さがあります。顔の肌色は裏彩色になっていて、極細の墨による線描と微かに朱色が表から加えられています。髪や顎髭の一本一本がまた極細で丁寧。解説には超絶技巧と評されていました。

「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」(国宝)
鎌倉時代・13〜14世紀 知恩院蔵 (展示は10/13まで)

≪仏画≫は出品8点の内5点が国宝。残りも重文。特に、豊かな色彩と線描でドラマティックに摩耶夫人の前に現れた釈迦を描いた大画面の「釈迦金棺出現図」、赤い衣と截金文様による光背が鮮やかな「釈迦如来像(赤釈迦)」が素晴らしい。そして『法然と親鸞 ゆかりの名宝展』でも拝見した「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」にも再会。単眼鏡でじっくり覗くと、緻密な描写に驚かされます。

如拙筆・大岳周崇等賛 「瓢鮎図」(国宝)
室町時代・15世紀 退蔵院蔵 (展示は10/13まで)

つづいて≪中世絵画≫。第Ⅰ期のテーマは<幽玄の美 -山水画の世界->。まずは妙心寺退蔵院で複製を観て以来、実物を一度観てみたいと長年思っていた「瓢鮎図」。足利義持の「瓢箪でナマズを捕まえることができるか」という問いかけに画僧の如拙が描いた絵といいます。髭面の男の顔が何とも個性的。

雪舟 「天橋立図」(国宝)
室町時代・16世紀 京都国立博物館蔵 (展示は10/13まで)

ここでは雪舟の重要な作品3点も並んでいて、これがまた感涙もの。周文の構図法を踏襲した作品という拙宗時代の「楼閣山水図」、これぞ雪舟という構成力が際立つ絶筆の「山水図」、そして最晩年期の大作「天橋立図」。「天橋立図」は小さな紙を貼り継いでいるので下絵説もあるとのこと。紙をたたんだときにできたとされる朱の色移りも単眼鏡で覗けば発見できます。

ほかにも、関東水墨画の祥啓の「鍾秀斎図」や狩野元信と伝わる「楼閣山水図」などどれも見事。個人的にはここのコーナーが一番好き。

「阿国歌舞伎図屏風」(重要文化財)
江戸時代・17世紀 京都国立博物館蔵 (展示は10/13まで)

≪近世絵画≫では<京へのいざない>をテーマに安土桃山から江戸時代初期にかけての京都の様子を描いた屏風を展示。出雲阿国のかぶき踊りを描いた最古の作品という「阿国歌舞伎図屏風」や歌舞伎や見世物小屋など街の賑わいが楽しい「四条河原遊楽図屏風」のほか、大倉集古館の『描かれた都』展にも出品されていた狩野永徳の「洛外名所遊楽図屏風」と狩野松栄の「釈迦堂春景図屏風」も展示されていました。

「秋景冬景山水図」(国宝)
南宋時代・12世紀 金地院蔵 (展示は10/13まで)

2階の最後は≪中国絵画≫。第Ⅰ期は宋元絵画を紹介。足利義満の鑑蔵印が押された国宝「秋景冬景山水図」が見事。徽宗の筆によるものとして伝わったものとされ、もとは4幅揃いの四季山水図だったのではないかとのこと。重文の二幅の「草虫図」もいい。右幅は風に揺らぐ芍薬に蝶。左幅は菊に蝶となぜか蝙蝠。11月に『東山御物の美』にも来る牧谿の「遠浦帰帆図」も一足お先に拝見。

「宝誌和尚立像」(重要文化財)
平安時代・11世紀 西往寺蔵

さて、1階に降りると、吹き抜けの≪彫刻≫コーナー。平安から鎌倉時代にかけての京都周辺の仏像20躯を紹介しています。

真ん中にはどーんと大阪・金剛寺の大きな「大日如来坐像」と脇侍の「不動明王坐像」が鎮座。不動明王像は行快の作といわれているそうです。光明寺の「千手観音立像」、三十三間堂の湛慶作の「千手観音」、そして西往寺の「宝誌和尚立像」の三並びもなんとも有り難い。

「餓鬼草紙」(国宝)
平安時代・12世紀 京都国立博物館蔵 (展示は10/13まで)

奥の部屋に進むと≪絵巻≫のコーナー。第Ⅰ期では「餓鬼草紙」、「一遍聖絵」、「法然上人絵伝」の3つの国宝が出品されていました。「法然上人絵伝」はそんなに感心するほど絵は上手いと思いませんでしたが、逆に素朴で面白い。一方の「一遍聖絵」は人々や馬、風景描写も巧み。「餓鬼草紙」にガンジス河で餓鬼が川の水が炎に見え飲むことができずに苦しむという場面があったのですが、この時代にガンジス河という名前が伝わっていたんですね。

つづいては≪書跡≫で、第Ⅰ期は<古筆と手鑑>。国宝の手鑑「藻塩草」は東博の『和様の書』でも拝見していますが、ここでは20面がずらーっと横に広げられていて壮観。そのほか、本阿弥光悦が所蔵していたことから名がつく「古今和歌集巻第十二残巻・本阿弥切」や豊臣秀吉が高野山の僧に贈ったと伝わる「古今和歌集巻第十八断簡・高野切第三種」など華麗な料紙と洗練された美しい書にため息が出ます。

「古今和歌集第十二残巻・本阿弥切」(国宝)
平安時代・11世紀 京都国立博物館蔵 (展示は10/13まで)

そのほかに一階には、染織や金工、漆工などの逸品が並び、目を楽しませてくれます。

平成知新館はスペースも広く、ガラスや照明、導線もよく考えられているので、とても観やすく感じました。第Ⅰ期と第Ⅱ期で作品の多くが入れ替えになりますが、第Ⅱ期も日本美術史を代表する国宝や重要文化財が数多く出品されます。この機会をお見逃しなく!


【平成知新館オープン記念展 京へのいざない】
2014年9月13日(土)~11月16日(日) ※第Ⅰ期は終了
京都国立博物館 平成知新館(新館)にて


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