2010/07/15

歌舞伎鑑賞教室「身替座禅」

歌舞伎座の“さよなら公演”も終わり、すっかり歌舞伎から足が遠のいていましたが、先日、久しぶりに歌舞伎を観て参りました。

といっても、『歌舞伎鑑賞教室』です。都内近郊の方なら、高校生の頃、一度は行ったことがあるかもしれませんが、国立劇場で、歌舞伎役者がいろいろ講釈たれて、歌舞伎を観るという退屈なアレです(笑)

かくいうわたくしも、高校生の頃、観に行き来ました。かなり前の席で観たのは憶えているのですが、友だちとのおしゃべりに夢中だったのか、はたまた寝ていたのか、誰が出て、何を観たか、まーったく憶えていません(汗)
あのとき、何十年か経って自分が、こんなに歌舞伎に夢中になるなどと、誰が想像したでしょうか。

観劇したのは土曜日だったのですが、『歌舞伎鑑賞教室』だけあって、1階席は女子高生や、イマドキっぽいチャラチャラした高校生がいっぱい。自分は2階席で観てましたが、まわりは外国人も多く、歌舞伎座の風景とは違ってて、ちょっと戸惑いました。でも、今の高校生はちゃんと静かに観てるんですね。昔は女形の役者さんに「オカマ」コールをしたりと、ひどい学校もあったと話には聞きますが、居眠りしてる子はちらほらいたものの、みんなマナーが良くて感心しました。

さて、『歌舞伎鑑賞教室』なので、まず最初に役者さんが出てきて、歌舞伎のことをいろいろ教えてくれる“歌舞伎のみかた”というのがあるのですが、今月の鑑賞教室は初の試みということで、大学生の中村壱太郎くんと高校2年の中村隼人くんという、 学生と同年代の10代の若い歌舞伎役者の2人が担当しています。いきなり『踊る大捜査線』の音楽に乗って、歌舞伎役者とは思えないカジュアルな格好をした可愛い顔の男子2人が客席から登場して来たもんだから、若い女子高生らはヤンヤヤンヤの大喝采。およそ『歌舞伎鑑賞教室』にはありえない光景です。

歌舞伎の舞台構造から、歌舞伎の歴史、能や狂言との関係など、たぶん年輩の歌舞伎役者が話をしたら眠くなりそうな話も、若い2人の楽しい会話で退屈な感じは全くありませんでした。ぼくも、こんな『歌舞伎鑑賞教室』で歌舞伎に触れていたら、もっと早い時期から歌舞伎に興味が湧いていたかもしれません。

少し休憩を挟んで、歌舞伎の人気舞踊『身替座禅』。お殿様が遊女と仲良くなって、遊びに行きたいんだけど、家には怖い“山の神”(妻)がいて、出かけるに出かけられません。そこで一晩お堂で座禅を組むと嘘を言い、家来の太郎冠者に身替りをさせて、お殿様は遊びにいく…というお話です。舞台の横には、なかなか聞き取れない常磐津や長唄の唄の文句が電光掲示板で表示されるという、初心者にはうれしいサービスも。ストーリーは分かりやすく、そばにいた外人さんもウケてました。

主役の右京は、隼人くんの父親である中村錦之助。妻役は、ベテランの坂東彦三郎。先ほどの壱太郎くんと隼人くんも女形で登場します。錦之助の右京は、変に自己流に流れず、錦之助らしい品の良さが出ていて、とても良かったです。“山の神”の彦三郎のあまりの恐ろしさには会場も大ウケでした。

最後にもう一度、隼人くんと壱太郎くんが舞台に登場し、『棒しばり』という舞踊の一部を踊りながら、幕となりました。若い人や初心者にも歌舞伎に興味を持ってもらえるようにと、いろいろ工夫をしてるんだなと、感じる鑑賞教室でした。

歌舞伎って、もともと庶民のためのエンターテイメントだから、実はストーリーは分かりやすいし、敷居も高くないし、全然高尚なものではないんです。『歌舞伎鑑賞教室』は、そんな「歌舞伎に興味はあるけど…」という人に幅広く観てもらうためのもの。さすが“国立”だけあって、リーズナブルな価格で観れますし、パンフレットはタダ。かつて『歌舞伎鑑賞教室』で退屈な思いをされた方も、もう一度ご覧になってはいかがでしょうか?


【7月歌舞伎鑑賞教室「身替座禅」】
7/24(土)まで
国立劇場大劇場にて

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