2018/05/20

名作誕生 つながる日本美術

東京国立博物館で開催中の『名作誕生 - つながる日本美術』を観てきました。

『国華』という値段のたかーい日本美術の専門誌がありまして、明治22年(1889)に岡倉天心と高橋健三が中心となって創刊したという、現在も発行されている雑誌としては日本で最も古いんだそうです。本展はその『国華』の創刊130年を記念した展覧会。ちょうど10年前に同じ東博で『対決 -巨匠たちの日本美術』という展覧会がありましたが、あれが『国華』の創刊120年記念、今回が創刊130年記念。ということは10年後にも創刊140年記念で、日本美術をテーマにした大々的な展覧会があるんでしょうか(かなり先の長い話ですが…)

そんな本展は、仏像や仏画、雪舟や花鳥画、若冲に宗達、物語絵に風俗画など、それぞれに継承された技術やモチーフを日本美術史上の名立たる絵画・工芸品を通して具体的に例解していくという、まるで観る美術教科書。ツッコンで日本美術をもっと知りたい人にはもってこいの企画ではないでしょうか。

ここ数年で観た東博の特別展の中ではズバ抜けて良い展覧会だと思うのですが、お客さんの入りがいまひとつのようで、フツーなら混んでる日曜日(4/22訪問)の午後だというのに、とーっても快適な中で作品を観ることができました。いいのか悪いのか。


第1章 祈りをつなぐ

“つなぐ”といってもどれを取り上げるか難しいところではありますが、ここでは一木造りの仏像と普賢菩薩と祖師画という3つテーマに絞っています。

まずは仏像。『仏像 一木にこめられた祈り』というそれこそ一木造りにフォーカスした展覧会が東博でもありましたし、昨年は大阪市立美術館で『木×仏像』という“木”にポイントを置いた展覧会で一木造りを取り上げてましたし、そうした展覧会に比べると触りの触りという感じもなくもありませんが、展示を見てると、仏像の代表作を並べるのではなく、あくまでも“つながり”を観ることが主であることが分かります(このあとも基本的に同じ)

展示は観音菩薩像と薬師如来像に絞っていて、中国から日本にもたらされた仏像と日本で作られた仏像を並べ、白檀の仏像に似せるために着色したとか、身体や衣文表現の変化なんかを観て行くのですが、“つながる”というテーマで簡潔で要領を得た解説がされていて、少ない点数ながらも納得感のある展示でした。

「普賢菩薩像」(国宝)
平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵(展示は5/6まで)

今回一番感動したのが<祈る普賢菩薩>。東博所蔵の「普賢菩薩像」(展示は5/6まで)はこれまで何度も拝見している作品ではありますが、本展の陳列ケースが作品との距離が浅く、またガラスがクリアーで、さらに空いてたので張り付いてじっくり観られたこともあり、こんな素晴らしい仏画だったかとあらためて感動しました。

並べて展示されている普賢菩薩像も仏画だけでなく大倉集古館蔵の「普賢菩薩騎象像」もあったりして、普賢菩薩像だけでこれだけまとめて観る機会はそうはないので、これには感動のあまり身震いが。十羅刹女の唐装から和装への変化も興味深かったし、後期では四天王寺の「扇面経」の表紙というものを初めて観ました。

泰到貞 「聖徳太子絵伝」(国宝)
平安時代・延久元年(1069) 東京国立博物館蔵

祖師画は出光美術館蔵の「真言八祖行状図」を除けば、すべて聖徳太子絵伝。聖徳太子絵伝は8世紀にはすでに描かれていたそうですが、その系統にあるという現存最古の遺品「聖徳太子絵伝」を観るだけでも説話画としての面白さややまと絵としての美しさは伝わってきます。


第2章 巨匠のつながり

日本美術最大の画家といえば、雪舟。昨年の京博の『国宝展』では雪舟の国宝全6点が集結すると話題になりましたが、本展では国宝2点を含む10点の雪舟作品が前後期に分かれて出品されます。こちらは数で勝負。

雪舟等楊 「破墨山水図」(国宝)
室町時代・明応4年(1495) 東京国立博物館蔵(展示は5/6まで)

雪舟等楊 「倣玉澗山水図」(重要文化財)
室町時代・15世紀 岡山県立美術館蔵(展示は5/6まで)

雪舟は周文から薫陶を受け、中国(明)留学で本場の技術を身につけ、独自の水墨画を発展させていくわけですが、雪舟が手本とした玉㵎や夏珪の模倣、明の花鳥図から和への変換、山水図や風景画に見る中国絵画の継承と変容にスポットを当てていて、雪舟と中国絵画のつながりがよく分かります。

雪舟等楊 「四季花鳥図屏風」(重要文化財)
室町時代・15世紀 京都国立博物館蔵(展示は5/6まで)

狩野元信 「四季花鳥図」(重要文化財)
室町時代・15世紀 大仙院蔵(展示は5/6まで)

前期では日本の花鳥図に大きな影響を与えたことで知られる呂紀の花鳥図と雪舟の花鳥図、さらに元信の花鳥図が並んでいて、なんとも贅沢でした。

俵屋宗達 「扇面散貼付屛風」(展示は5/15から)
江戸時代・17世紀 出光美術館蔵

宗達は俵屋工房で量産された扇絵を貼りつけた扇面貼の屏風がいくつかあって、扇面に描かれた古典からの引用を紐解くという趣向。前期は「平治物語絵巻 六波羅合戦巻」、後期は「西行物語絵巻」からの古典学習に絞って解説していて、これはこれで面白いのですが、宗達の扇絵には人物にしても草花にしても、文様にしてもさまざまなモチーフが描かれているので、それらがどこから来てるのかをもっと知りたかったかなと思いました。たまたま前の章で、叡福寺本の「聖徳太子絵伝」を観てたら扇面散屏風が描かれてるのを見つけて(波濤図屏風もあった)、屏風に扇を貼るという発想はいつからあったのか、このあたりもとても気になりました。

文正 「鳴鶴図」(重要文化財)
中国・元〜明時代・14世紀 相国寺蔵(※写真は右幅)

狩野探幽 「波濤飛鶴図」
江戸時代・承応3年(1654) 京都国立博物館蔵

そして若冲。若冲が出てるのに来場者が少ないなんて話も聞きましたが、かわいかったり派手だったりする絵じゃないと、いまの人は興味を示さないんですかね。明代初期の画家・文正の「鳴鶴図」を探幽、若冲がそれぞれ模倣した絵が並んで観られるなんて、「動植綵絵」を観るより余程貴重なんじゃないかと思います(文正と若冲の比較はサントリー美術館の『若冲と蕪村』でも取り上げられていましたが)。探幽と若冲というそれぞれ個性の違う絵師が、どこをどのように忠実に描き、省略し、逆に強調したか。羽根はどう描いてる、脚はどう描いてる、波はどう描いてる。古典の模倣の中に自分らしさをどう出したのか、同じ題材を扱っても、探幽は探幽らしいし、若冲は若冲らしいのがとても面白い。

若冲は“鶏”についても触れらてますが、これは若冲の作品の中だけの“つながり”なのでつまらない。余程、南蘋派や黄檗絵画と若冲の繋がり(すでに語られ過ぎて手垢のついた感がありますが…)の方が良かったのでないでしょうか。

伊藤若冲 「仙人掌群鶏図襖」(重要文化財)
江戸時代・18世紀 西福寺蔵


第3章 古典文学につながる

ここではフツーに『伊勢物語』と『源氏物語』。燕子花で知られる第九段「八橋」と蔦と楓の山道を行く「宇津山」、紅葉を連想する第百六段「竜田川」が取り上げられていて、よく引き合いに出される場面ですが、絵画だけでなく、漆工の硯箱や染織の打掛などもあって、物語から派生するイメージがどのように絵画や工芸品に展開していったかとても勉強になります。

尾形光琳 「伊勢物語 八橋図」
江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵(展示は5/6まで)

『源氏物語』も同様ですが、絵画に描かれたり、連想させるイメージが多く、また深いので、これだけのスペースだとちょっと物足らなさ感もありますね。


第4章 つながるモチーフ/イメージ

こちらは基本的に近世以降。まずは長谷川等伯の「松林図屏風」のイメージがどこから来たのか問題。能阿弥の「三保松原図」との関係性は以前から知っていて、前に観たときもその点を考えたりしたのですが、今回は実際に「松林図屏風」と等伯が松林図に先行して描いた「山水松林架橋図襖」と並んで展示されていて、牧谿(牧谿の作品は出てないが能阿弥は牧谿の水墨画に強く影響されている)からの流れ、等伯の松林図にみる水墨表現の変化がとても興味深かったです。

伝・能阿弥 「三保松原図」(重要文化財)
室町時代・15〜16世紀 頴川美術館蔵(展示は5/6まで)

そういう意味で興味深かったのが、蓮のイメージの“つながり”。宗達の「蓮池水禽図」と宋元画との比較は過去にほかの美術館でも観たことがありますが、本展は数も多く、着色もあれば水墨もあり、宋元画もあれば、古くは鎌倉時代の法隆寺伝来の屏風もあり、抱一に受け継がれた琳派もあり、ものすごく充実しています。

能阿弥 「蓮図」(重要文化財)
室町時代・文明3年(1471) 正木美術館蔵(展示は5/6まで)

酒井抱一 「白蓮図」
江戸時代・19世紀 細見美術館蔵

個人的に一番楽しみにしていたのが風俗画。初期風俗画の傑作として知られる「湯女図」(前期展示)も「彦根屏風」(後期展示)も過去に一度しか観たことがなく、それらと岩佐又兵衛の「洛中洛外図屏風(舟木本)」や菱川師宣の「見返り美人図」などと並べて観られるなんて鼻血ものです。

「湯女図」(重要文化財)
江戸時代・17世紀 MOA美術館蔵(展示は5/13まで)

「湯女図」は構図的にも女性の表情や視線的にも、やはり左に別の絵が描かれていたんだろうなと明らかに分かり、イメージを掻き立てます。又兵衛の「洛中洛外図屏風(舟木本)」は何度も拝見してますが、今回は幸いなことに人が少なく、単眼鏡でじっくりと20分ぐらい屏風の前に食いついて観てました。

又兵衛では初見の「士庶花下遊楽図屏風」(伝岩佐又兵衛)も楽しみにしていました。千葉市美術館の『岩佐又兵衛展』にも福井県立美術館の『岩佐又兵衛展』にも出ていなかった作品。確かにところどころ又兵衛風を感じさせる人物表現があったりもしますが、「洛中洛外図屏風」や「豊国祭礼図屏風」(本展未出品)に比べると、ちょっと違うなという気がします。

岩佐又兵衛 「洛中洛外図屏風(舟木本)」(国宝)
江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

最後に何故か岸田劉生の「野童図」と「道路と土手と塀」。「野童図」は顔輝の「寒山拾得図」と、「道路と土手と塀」は北斎や国芳の坂を描いた浮世絵と、それぞれ“つながり”を見せてるのですが、ちょっと唐突すぎるかな? 

岸田劉生 「道路と土手と塀(切通之写生)」(重要文化財)
大正4年 東京国立近代美術館蔵

普賢菩薩や花鳥画、風俗画、雪舟と中国画の関係など、古典との「つながり」を解き明かす見せ方はこれまでもなかったわけではありませんが、さすがはトーハクなのでその質と量は素晴らしく、満足度は高いものがあります。“つながり”を考えだすときりがないですし、あれもこれもと言ってると、凄いことになってしまうので、ここまでの規模じゃなくていいので、常設の特集展示などで、シリーズ化してもらえるとありがたいですね。


【名作誕生 - つながる日本美術】
2018年5月27日(日)まで
東京国立博物館・平成館にて


國華 1468号國華 1468号

2018/05/15

池大雅展

京都国立博物館で開催中の『池大雅 天衣無縫の旅の画家』を観てきました。

半年ぶりの京都です。これまで何十回、京都に来たか分かりませんが、実は今まで一度も雨に降られたことのない晴れ男、、、だったのですが(雪だったことはありましたが)、天気が崩れて春の嵐になるとの予報。青空に新緑を楽しみにしてたのですが、空もどんよりして、ちょっと残念でした。(幸い雨は夜降られただけでした)

さて、今年の春の京博は池大雅。ここ10年ぐらい、『狩野永徳展』にはじまり、『長谷川等伯展』や『狩野山楽・山雪展』『桃山時代の狩野派展』、そして去年の『海北友松展』と、桃山から江戸時代にかけての日本美術が春の京博のテーマになっていますが、今年は池大雅ということで(個人的には大変)楽しみにしていました。

でも、南画って人気ないんですねかね。開館前の行列がないだの土日なのに空いてるだのいろいろ耳に入ってきたり、若冲や応挙に比べて地味だと言ったりする人もいますが、なかなかどうして。江戸絵画の絵師ではトップクラスの指定数を誇る大雅の国宝・重文が全て出品されるだけでなく、この規模の回顧展としては約85年ぶりという質量ともに大充実の展覧会。たっぷり2時間半かかりました。


会場の構成は以下のとおりです:
第1章 天才登場-大雅を取り巻く人々
第2章 中国絵画、画譜に学ぶ
第3章 指墨画と様式の模索
第4章 大雅の画と書
第5章 旅する画家-日本の風景を描く
第7章 天才、本領発揮-大雅芸術の完成

池大雅 「瓢鮎図」
江戸時代(18世紀) 出光美術館蔵

幼くして父を亡くし15歳で扇屋を開いて扇に絵を描いて売っていたこと、早くから書の才能に優れ「神童」と呼ばれたことなど、若かりし頃の大雅のエピソードが語られているのですが、初期作品に交じって、大雅が賛を寄せた鶴亭や彭城百川の作品もあったりして、大雅周辺の人間関係に強い興味を覚えます。昨年観た『柳沢淇園展』でも大雅のことは触れられていて、まだ十代の大雅が淇園のもとに身を寄せていたという話を思い出します。

大雅の作品では出光美術館でも以前観ている「瓢鮎図」がユニーク。瓢箪で鯰を捕まえようとする如拙の有名な「瓢鮎図」がベースにあるわけですが、画面いっぱいに描いた構図や墨の味わいも大らかでいい。大らかといえば、略画の柳に蛙がぶらさがる「青柳蛙図」も大雅らしい楽しい作品でした。

池大雅 「風雨起龍図」
延享3年(1746) 出光美術館蔵

中国絵画の画譜類がいくつか展示されていたのですが、版本なので決して細かに描き込まれたものではないですし、こうした画譜から画法を学ぶといってもさぞ大変だったろうと思います。解説にもありましたが、一介の町絵師が良質な中国絵画を目にする機会なんてまずなかったでしょうから、初期南画の柳沢淇園や彭城百川、祇園南海らとの交流を通して学ぶものは大きかったのでしょう。自ら描法を図示した絵手本というのもあって、随分研究熱心だったんだと感じます。

24歳の頃の作品という「風雨起龍図」では既に、筆墨の巧みな描き分けや淡い色彩や、山稜や家並み、風雨など斜めに対象物を描くという独特の構図が観られ、大雅の学んだ中国画や日本の文人画の先駆・柳沢淇園や祇園南海らの作品と比べても圧倒的に自由で面白い。20代で描いたとされる「西湖図屏風」や「山水図屏風」、「前後赤壁図屏風」 なども画面の構成力、潤いのある筆墨、没骨法や略筆など技法の引き出しの多さは驚くべきものがあり、割と早い時期に自分なりの表現というものを身につけていたんだろうことが分かります。

興味深かったのは指墨画(指頭画)で、席画などパフォーマンス的なものにとどまらず表現の幅を広げる手段として多用していたのでしょう。指や掌を使った表現が大雅のラフな線描や朴訥とした味わいを醸し出しているのが興味深いところです。「翠嶂懸泉図」や「沈香看花・楓林停車図屏風」などところどころ指墨と思われる表現があるのですが、(当時としては)前衛的でありながら、決して奇を衒ったところがないのが素晴らしい。大雅作品によく見られる点描なんかも、この延長線上にある気がします。

池大雅 「陸奥奇勝図巻」(重要文化財)
寛延2年(1749) 九州国立博物館蔵(写真は部分)

展覧会のサブタイトルに『天衣無縫の旅の画家』とあるように、大雅は全国各地を行脚し、土地々々の風景を絵に残してるんですね。実際に富士山や浅間山に登っているというのも凄い。「白糸瀑布真景図」は富士山と白糸の滝を描いた作品では現在最古。「富士十二景図」は青緑山水だったり描法が多彩で、「浅間山真景図」には遠望に富士山と筑波山が見えたり、「日本十二景図」は全国の名勝地が描かれていたり、「芳野山図」は吉野山の景色が中国絵画風に描かれていたり、いろいろ興味深い作品があります。画譜などからは学べない、そうしたリアルな風景表現がまた自身の南画にも反映されていったのでしょう。

池大雅 「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風」(重要文化財)
宝暦13年(1763) 静岡県立美術館蔵

池大雅 「楼閣山水図屏風」(国宝)
江戸時代(18世紀) 東京国立博物館蔵

大雅というと、やはり潤いのある筆墨と柔らかな色彩が醸し出す情感の豊かさと、自由でのびやかな風景や味のある人物表現に見られる軽妙洒脱さ、そして明るく広がりのある空間構成が最大の特徴であり、良さだと思うのですが、40代以降の作品からはいよいよ熟達した味わいという感じが加わってきます。

最後の7章は大型の屏風、障壁画が多く、見応えがあるだけでなく、大半が国宝と重要文化財という贅沢さ。人物表現が豊かで繊細に描かれた「蘭亭曲水・龍山勝会図屏風」、力強く量感に満ちた山水表現が魅力の遍照光院の「山水人物図襖」、東博でもお馴染みの「楼閣山水図屏風」、びっしり岩山が描かれた右隻に対し余白を活かした左隻のバランスが印象的な「西湖春景・銭塘觀潮図屏風」など観るべき作品が多くあります。

池大雅 「五百羅漢図」(重要文化財)
江戸時代(18世紀) 萬福寺蔵(写真は部分)

とりわけ萬福寺の「五百羅漢図」と「西湖図」は圧巻。大画面に広々と描いた「西湖図」と、大雅の人物表現の最高峰とでも評したい「五百羅漢図」は必見です。

池大雅 「西湖春景・銭塘觀潮図屏風」(重要文化財)
江戸時代(18世紀) 東京国立博物館蔵

妻・玉瀾にもスポットが当てられていて、2人の共同作品から伝わる仲睦まじさにほっこりします。ほかにも琳派風の作品や風俗画風の作品もあったりして、大雅が南画にとどまらず幅広く画法に関心を持ち、独自の表現を確立していたことも分かります。

池大雅 「釣便図」(国宝)
明和8年(1771) 川端康成記念館蔵

残念だったのは展示ガラスに貼られた作品解説。ちょうど視線の高さにあるのと、フォントサイズが大きく場所をとるので、掛軸や小画面の書画などは作品解説が邪魔で作品の正面に立たないと観られない(横から覗けない)という弊害を作っていて、逆に混雑の原因になっていたと思います。これは今後改善してほしいですね。


【池大雅 天衣無縫の旅の画家】
2018年5月20日(日)まで
京都国立博物館にて


池大雅 中国へのあこがれ―文人画入門池大雅 中国へのあこがれ―文人画入門

2018/05/06

光琳と乾山

根津美術館で開催中の『光琳と乾山』を観てきました。

ゴールデンウィークの根津美術館といえば、尾形光琳の「燕子花図屏風」。庭園のカキツバタの開花に合わせて、「燕子花図屏風」をメインに趣向を凝らした展覧会を毎年開催しているわけですが、今回は光琳とその弟・乾山の作品や兄弟のコラボレーションを紹介した展覧会になっています。

乾山の作品は光琳の展覧会や琳派の展覧会でたびたび観ますし、3年前になりますが、サントリー美術館でも『乾山見参!』という乾山をメインの展覧会がありましたが、そういえば光琳と乾山という2人に焦点を当てた展覧会ってなかったかもしれないですね。

1階に光琳と乾山の書画、2階に乾山の焼きもの。館蔵品だけでなく他館の作品も多く、特に乾山は代表作が揃います。

会場に入ると、まずは光琳の「秋草図屏風」。宗達工房や喜多川相説の草花図を思わせる装飾的で華やかな屏風です。そしていきなり「燕子花図屏風」。いつもは第一展示室の、少し進んだ先にあるのですが、今回は入ってすぐのところに早くも登場。近くで観て離れて観て、屏風の前のベンチに座ってじっくり眺めて、何度も観てる作品ではありますが、やはり何度観ても見入ってしまいます。

尾形光琳 「太公望図屏風」(重要文化財)
江戸時代・18世紀 京都国立博物館蔵

尾形光琳 「白楽天図屏風」
江戸時代・18世紀 根津美術館蔵

「太公望図屏風」と「白楽天図屏風」が並んで展示されていたのもいいですね。川のほとりで釣り糸を垂らし居眠りしてるような太公望と大波に揺れる舟の上で動じず漁師と問答する白楽天。どちらも何度か拝見していますが、緑と金と波というのが共通していることに今さらながら気づきました。

「太公望図屏風」は京博所蔵、最初の「秋草図屏風」はサントリー美術館所蔵、ほかにも静嘉堂文庫美術館所蔵の「鵜舟図」やブリヂストン美術館所蔵の「李白観瀑図」など根津美術館以外からも光琳の優品が揃ってます。

尾形乾山・作、尾形光琳・画 「銹絵観鷗図角皿」(重要文化財)
江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵

つづいては乾山。光琳が絵付けをした錆絵の角皿があったのですが、中には光琳の弟子・渡辺始興が絵付けをした皿などもありました。解説によると、始興は乾山焼への参加を契機に光琳風を学んだのだそうです。

乾山は陶器以外にも書画が割とあって、とりわけいかにも乾山風の“破墨”というのが面白い「破墨山水図」や、書と画で一つのセットになっている「定家詠十二ヶ月和歌花鳥図」など興味深い作品がありました。乾山は画にしても陶芸にしても、素朴な風合いだったり、ゆるさだったりがあって、光琳の洗練とはまた違う洒落たところが魅力というか、彼ならではの味わいという感じがします。

尾形乾山 「桜に春草図」「紅葉に菊流水図」
江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵


もちろん光琳の「燕子花図屏風」も。庭園のカキツバタも満開。ちょうと見頃でした。(4月30日撮影)


動画もどうぞ。これぞリアル燕子花図屏風。



【光琳と乾山 芸術家兄弟・響きあう美意識】
2018年5月13日(日)まで
根津美術館にて


もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)もっと知りたい尾形光琳―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

2018/05/05

東西美人画の名作 《序の舞》への系譜

東京藝術大学大学美術館で開催中の『東西美人画の名作 《序の舞》への系譜』を観てきました。

上村松園の代表作「序の舞」が絵具の剥離の可能性が出てきたため修理を実施すると発表されたのが2016年の夏のはじめ。それから2年に及ぶ修理を行い、このたび完成披露となりました。本展はそれを記念しての美人画名品展になります。

これが想像以上の充実度。てっきり松園の「序の舞」修理記念の“ついで企画”とばかり思っていたのですが、近世初期風俗画や浮世絵から丁寧に系譜を辿り、近代美人画を東と西に分け、美校出身の画家からデロリまで広く紹介してなかなか興味深かったです。

会場では「序の舞」の修理の様子も紹介されていて、これ以上の劣化を防ぐため絵具の剥落止めを行い、掛軸装から額装へと表装変更を行ったと解説されていました。

今回の修理は狩野永徳の国宝「檜図屏風」や渡辺崋山の国宝「鷹見泉石像」などの修復にも資金援助しているメリルリンチ文化財保護プロジェクトの一環なのですが、こうした国宝・重要文化財クラスの美術品の修復を国が支援するのでなく他国の一企業の社会貢献活動に頼るとは日本はつくづく情けない国だなと思いますね。

菱田春草 「水鏡」
明治30年(1897) 東京藝術大学蔵

会場は江戸時代初期の当世風俗図や寛文美人図にはじまり、鈴木春信や鳥居清長、喜多川歌麿など美人浮世絵の傑作が並びます。春信や歌麿の浮世絵が上村松園の美人画に影響を与えたことは山種美術館の『上村松園 -美人画の精華-』でも解説されていたのを思い出します。

つづいては『東の美人』と『西の美人』と題し、東京を中心に活躍した画家の美人画と京阪に拠点を置いた画家の美人画を紹介。こうして比較して見ていくと、東京と京阪では美人画でも少し違うことに気づきます。

水谷道彦 「春」
大正15年(1926) 東京藝術大学蔵

東京は東京美術学校出身の画家を中心に早くから近代日本画への動きが活発。やはり藝大の主催だけあり、美校出身の菱田春草の「水鏡」や山本丘人の「白菊」、松岡映丘の「伊香保の沼」などの近代日本画を代表する作品もあったりするのですが、興味深かったのが将来を嘱望されながらも戦死したり戦後活躍することのなかった画家の作品で、どこかルソーのような幻想性と細密で写実的な描写が美しい水谷道彦の「春」や戦場で倒れた兵隊の前に現れた天女を描く三浦孝の「栄誉ナラズヤ」が印象的でした。

島成園 「香のゆくえ(武士の妻)」
大正4年(1915) 福富太郎コレクション資料室蔵

もちろん東京は美校出身者だけでなく、“東”の美人画の筆頭・鏑木清方や、やはり美人画の名手として知られる池田蕉園なども。15の場面からなる清方の「にごりえ」は絶品ですね。

“西”は円山四条派の流れを汲む重鎮・幸野楳嶺やその孫弟子にあたる菊池契月といった京都画壇もあれば、北野恒富や島成園といった大阪画壇もあり、大正期に独特のムーブメントとなる甲斐庄楠音や梶原緋佐子といったリアリズム表現もあって、かなり多彩です。京都の『岡本神草の時代展』でも観られなかった甲斐庄楠音の「幻覚」は待望の対面。『北野恒富展』で観てとてもいいなと思った「いとさんこいさん」にも嬉しい再会をしました。

上村松園 「序の舞」(重要文化財)
昭和11年(1936) 東京藝術大学蔵

最後は松園の作品を展観。「序の舞」は松園が「私の理想の女性の最高のもの」と語った松園の美人画を代表する傑作。隣には下絵も展示されていて、松園がどのように「序の舞」を作り上げていったのかが分かります。同じく重文指定の「母子」や「草紙洗小町」など、数ある松園作品でも屈指の傑作が並んでいて思わず唸ってしまいました。

美人画展はあちこちでいろいろやってますが、藝大美が企画するとこうも質の高い作品が集まり、内容も濃いのかと感心します。音声ガイドも無料なのもいいですね。


【東西美人画の名作 《序の舞》への系譜】
2018年5月6日(日)まで
東京藝術大学大学美術館にて


「美人画」の系譜「美人画」の系譜

2018/04/29

百花繚乱列島 -江戸諸国絵師巡り-

千葉市美術館で開催中の『百花繚乱列島 -江戸諸国絵師巡り-』を観てきました。

先日、府中市美術館の『春の江戸絵画まつり リアル 最大の奇抜』を観て、地方の絵師に絞った展覧会とかして欲しいとつぶやいたら、各地で活躍した絵師たちを特集した展覧会が千葉市美術館であるとフォロワーさんに教えてもらい、早速千葉まで行ってきました。なんとタイムリーな。

本展は、江戸中期以降に主に地方で活躍したご当地絵師に焦点を当てていて、参考例的に狩野派や円山応挙など江戸・京の有名絵師の作品もあるのですが、ほとんどがマイナーな絵師たち。全くもって初めて知る絵師も多い。こんな絵師がいたのか!と驚くような個性派ぞろいで、マニアック過ぎて鼻血が出ます。

仙台や秋田、水戸、名古屋といった地方や絵師ごとに整理され解説も丁寧。誰に師事した影響されたという系譜や地方性もよく分かります。なかなか観る機会のない絵師の画業に触れられるなど発見も多くありました。南蘋派や南画、洋風画、博物学といった江戸後期の潮流が広く地方へ伝播していたのも興味深い。それにしても江戸絵画のなんと豊穣なことよ。


第1章 百花繚乱! 絵師列島への旅立ち - 北海道・東北・北関東ゆかりの画人達

まずは北は蝦夷から。
蠣崎波響といえば、アイヌの首長たちを描いた「夷酋列像」で知られる絵師(というかそれしか知らない)。松前藩の家老でもあったそうなのですが、絵師としてもかなりの腕だったようで、応挙風の唐美人図もあれば南画もあるし、カスベ(エイ)の写生図なんかもある。

秋田蘭画は小田野直武と佐竹曙山と佐竹義躬が一点ずつ。最近展覧会があったばかりとはいえ、ちょっと少ないかな。直武や曙山との関係も含め、平賀源内が及ぼした江戸絵画への影響はいろいろ気になるところです。

東東洋 「諏訪湖雪・紅白梅・芭蕉図」
文政8年(1825) 東北歴史博物館蔵 (展示は5/6まで)

仙台は東東洋・小池曲江・菅井梅関・菊田伊洲。小池曲江以外はそれぞれに名前は知ってるし、たぶん府中市美か板橋区美あたりで観てるんだと思うのですが、仙台四大画家という括りで語られていることは知りませんでした。点と点でバラバラだったものが、こうして線で繋がるのは面白い。

東東洋は円山応挙の影響を受けているということなのですが、展示されていた三幅対の「諏訪湖雪・紅白梅・芭蕉図」や「柳に黒白図」の独特のタッチはこの時代にしてはちょっとモダンな感じを受けます。中国の伝説上の神獣を描いた「河図図」も印象的。

菅井梅関 「梅月図」
江戸時代(19世紀) 仙台市博物館蔵

菊田伊洲 「雨中瀧図」
弘化3年(1846) 共生福祉会福島美術館蔵

菅井梅関は谷文晁に師事し、その後京阪で文人画の絵師たちと交流を持ったとか。大画面の「舊城朝鮮古梅之図」や「梅月」の太い筆触が素晴らしい。「猛獣図」がほとんど猫なのはご愛嬌。常陸出身で梅関の師という根元常南の「旭潮鯨波図」も面白い。大海原に鯨の潮吹き。遠くに朝日。構図が斬新です。

菊田伊洲の「雨中瀧図」は滝の描き方といい湿潤な空気感といいとても印象的。「倣元信山水図」は元信というよりどこか南画風。小池曲江は南蘋派で作品自体は個性的ではないけれど、『小田野直武と秋田蘭画展』で個人的に強烈な印象が残っている松林山人に師事したというのが興味深い。

立原杏所 「葡萄図」(重要文化財)
天保6年(1835) 東京国立博物館蔵 (展示は4/20まで)

水戸といえば、林十江と立原杏所。東博の常設展でときどき作品を観るけど、いやいやこんなに個性の強い絵師とは知りませんでした。林十江の「蝦蟇図」と「木の葉天狗図」のインパクト。東博で観たときも度肝を抜いた立原杏所の「葡萄図」の奔放でダイナミックな筆線にはやはりビックリします。なんとも前衛的。杏所は真景図や南画、花鳥画などその画風の幅の広さにも驚きます。

府中の江戸絵画展ではおなじみの小泉斐は栃木。南画の高久靄厓や渡辺崋山の弟子・椿椿山も栃木、江戸のイメージのある亜欧堂田善は福島・須賀川の人だったのか。なるほど江戸や京阪で活躍したからといって、みんながみんな地元と限らないということですね。


第2章 江戸 - 狩野派以外も大賑わい

なんか聞いたことのあるタイトルだと思ったら、板橋区立美術館の展覧会の名前ですね。江戸絵画の良質なコレクションで知られる板橋区美からもいくつか作品が出品されていました。

その一つが江戸後期に活躍した木挽町狩野家の栄信の「花鳥図」。狩野派の作品とは思えない濃彩の鮮烈な牡丹や蝶、南国風の鳥に目を奪われます。

狩野栄信 「花鳥図」
文化9年(1812) 板橋区立美術館蔵

江戸で紹介されている絵師で特筆すべきは宋紫石と司馬江漢、そして谷文晁でしょうか。宋紫石は江戸の人ですが、長崎で熊斐に師事し南蘋派を学び、江戸で南蘋派を広めたキーパーソン。司馬江漢は鈴木春信に浮世絵を、宋紫石に南蘋派を、小田野直武に洋風画を学んだというユニークな絵師。江戸時代後期の写実主義の中心にいた1人といってもいいでしょう。そして谷文晁。江戸時代中期以降の円山四条派や南蘋派の影響は分かるのですが、今回の展覧会を観てると、谷文晁の影響が意外なほど大きかったことに驚きます。古田亮氏の『日本画とは何だったのか』で応挙、文晁が近代日本画の源流の一つとして取り上げられていたのを思い出します。


第3章 東海道を西へ - 尾張・伊勢・近江

さあ、旅を続けましょう。東海道を西へ。まずは尾張。
名古屋と聞いてパッと思い浮かぶ絵師はいなかったのですが、さすが名古屋城を擁する尾張藩には名古屋画壇と呼ぶべき優れた絵師が多くいたようです。

山本梅逸 「花卉草虫図」
弘化元年(1844) 名古屋市博物館蔵 (展示は5/6まで)

有名なところだと山本梅逸と中林竹洞、張月樵が名古屋の人なんですね。ともに京都に上り、後に名古屋に戻っているようです。梅逸は「花卉草虫図」にしても「桜図」にしても山水図にしても柔らかな色彩や繊細な筆触が素晴らしい。

田中訥言 「餓鬼草紙模本」
江戸時代(19世紀) 東京国立博物館蔵

復古大和絵で知られる田中訥言も名古屋の人。古絵巻の模写は以前も観たことがあったのですが、琳派風の屏風もあれば、軽妙なタッチの「太秦祭図」があったり、こんなに画技に優れ、画風の幅が広い絵師だとは知りませんでした。

紀楳亭 「大津絵見立忠臣蔵七段目図」
天明8年(1788)以降 大津市歴史博物館蔵

何年か前の府中市美で観て腰が抜けた(笑)紀楳亭の「大津絵見立忠臣蔵七段目図」に嬉しい再会。今回は他にも作品があったのですが、どれも造形がユニークでほんと面白い。与謝蕪村の門人だったそうで、全然そんな感じはしないのですが、「大津三社図」の鴉は確かに蕪村風に見えなくもない。

同じく府中市美で名前を知った織田瑟々も近江の絵師。今回の展覧会では唯一の女流絵師だとか。作品は定番の“織田桜”。


第4章 京・大坂 - 諸派の爛熟と上方の版画

応挙の「秋月雪峡図屏風」は応挙らしい水墨の屏風の優品。左隻の冬景が「雪松図屏風」を思わせます。蕭白の新出という「渓流図屏風」がまたいい。襖4面を大胆に使った斜めの構図が面白い。京都でありながら狩野探幽の流れを受ける鶴沢探索はやまと絵的な扇面図。この人もいろいろ作品を観てみたい絵師の一人。

中村芳中 「白梅図」
文化期(1804-18)頃 千葉市美術館蔵

大坂は芳中に鶴亭、月岡雪鼎などバラエティに富む中、流光斎如圭とか松好斎半兵衛とか春好斎北洲とか初めて名を聞く上方浮世絵の作品が複数あって興味を覚えます。全く知らなかったところでは京都の銅版画もユニーク。


第5章 中国・四国地方と出会いの地・長崎

今回の展覧会で一番楽しみにしていたのが因幡画壇(鳥取画壇)。府中市美の『リアル 最大の奇抜』で強く興味を覚えた土方稲嶺や黒田稲皐、片山楊谷、島田元旦、沖一峨といった因幡画壇の作品が充実しているのが嬉しい。

土方稲嶺 「糸瓜に猫図」
江戸時代(18-19世紀) 鳥取県立博物館蔵

因幡画壇の祖といわれる土方稲嶺は宋紫石に学び、後に円山応挙に入門したとされる因幡出身の絵師。「糸瓜に猫図」の猫も朝顔もネタ元は明らかに沈南蘋の「老圃秋容図」ですね。一方、「東方朔図」と「猛虎図」は応挙風。その稲嶺に師事したのが黒田稲皐。鯉の名手と謳われただけあり、執拗なまでに描きこまれた群鯉図はどれも強烈な印象を残します。府中も千葉も鯉の絵ばかりで、他の作品もちょっと観たい気がしますが。

黒田稲皐 「群鯉図」
天保7年(1836) 鳥取県立博物館蔵

狩野派に学び江戸で人気を博すも沖家の養子になり鳥取藩の御用絵師になった沖一峨、長崎出身で長崎派の影響色濃い片山楊谷、谷文晁の実弟で円山応挙に師事したともいう島田元旦といった優れた絵師が奇しくも同時代の鳥取に集結したのですから、どれだけ濃い時代だったんだろうと思います。

廣瀬臺山 「山静日長図」
文化8年(1811) 個人蔵

鳥取以外にも、酒井抱一の兄であり姫路藩主にして宋紫石に南蘋派を学んだ酒井宗雅、優れた文人画を残した美作の廣瀬臺山、青緑山水の奇勝図が印象的な備前の淵上旭江、即興的な南画風スケッチが目を引く徳島の細川林谷、細密な描写のやまと絵が素晴らしい同じく徳島の守住貫魚、沈南蘋が直接学んだ唯一の絵師で鶴亭や宋紫石の師でもある熊斐などなど、西日本の充実ぶりは凄いの一言。

熊斐 「猛虎震威図」
宝暦3〜4年(1753-54) 徳川美術館蔵 (展示は4/29まで)

千葉市美術館は我が家からドアツードアで往復3時間。会場に3時間弱いたので、一日つぶれてしまいましたし、重量級の図録がまた肩にずしりと来ます。でも満足度は今年の展覧会で一番かもしれない。ぜひ第2弾をやってほしいですね。知られざる地方の絵師はまだまだいるはずですから。


【百花繚乱列島 -江戸諸国絵師巡り-】
2018年5月20日(日)まで
千葉市美術館にて


江戸絵画の非常識―近世絵画の定説をくつがえす (日本文化 私の最新講義)江戸絵画の非常識―近世絵画の定説をくつがえす (日本文化 私の最新講義)