最初行くのを予定しなかったというか、京都の予定を組んでいたときに『末法展』のことを知らなかったので入れてなかったんですが、評判がいいようなので京近美で『岡本神草の時代展』を観た足で覗いてきました。(おかげで『国宝展』を観る時間が短くなってしまいましたが)
細見美術館は京近美からは歩いてほんの数分のところにあります。ここに来るのも何年ぶり。平日だったということもあってか、自分が行ったときはほんの数人しか来館者がいなくて、部屋(三つの部屋からなってます)の中でただ一人、作品と対峙するという贅沢な瞬間もありました。『国宝展』ではこうはいかない。
『末法展』は夢石庵という謎の個人コレクターが蒐集した日本美術の中から、“末法”をテーマにコレクションを再構成したという展覧会。奈良・平安時代の仏教美術から江戸時代の近世絵画までが並びます。抜群の鑑識眼で戦後60年代までに質の高い美術作品を蒐集したというのですが、個人の蒐集品とは思えない上質なコレクションかつその濃密さにクラクラします。
長谷川等伯 「四季柳図屏風」
桃山時代
桃山時代
石の投げ合いと群舞を描いたユニークな「印地内図屏風」は桃山時代の風俗図としてとても興味深いものがありました。輪になって踊ってたり、歌舞伎踊りなどはよく見かけますが、石の投げ合いというのは初めて観た気がします。最初“印地打”の意味が分からなかったのですが英語名(Injiuchi-Rock Fight Held on Children's Day)を見て納得しました。
こんな応挙初めて観た的な円山応挙の「驟雨江村図」も素晴らしい。長谷川等伯の「四季柳図屏風」は出光美術館の『水墨の風』で観た同題作に似てるなと思ったのですが、どうやら同じ作品のようですね。写真だと分かりませんが、柴垣が胡粉で盛り上げられていて立体的な装飾がされています。
「弥勒菩薩立像」
鎌倉時代
鎌倉時代
仏画では「胎蔵界曼荼羅」の截金の精緻な表現に驚きます。特に火焔光背(単眼鏡必須)。仏像はいくつかあったのですが、とりわけ興福寺伝来の「弥勒菩薩立像」が美仏。光背や装飾も見事でした。法隆寺伝来の「十一面観音立像」(展示は11/19まで)もちょっとふっくらした寝顔のようなあどけない表情が印象的。
最後の部屋の「金峯山経塚遺宝」はいろんな意味で圧倒されます。経筒だったり金剛鈴だったり仏像(蔵王権現像?)の欠片だったりが山のように積み上げられていて、まるでオブジェ。金峯山経塚に埋葬されていた「金銅藤原道長経筒」が京博の『国宝展』に出展されていて、経筒の中に入っていた道長が書写した経典やさまざまな出土品はこちらに展示されているというのも『国宝展』と時期が重なっているだけに面白い。
「胎蔵界曼荼羅」
平安時代
平安時代
なんか杉本博司的な臭いがするなぁと思っていたら、途中に杉本博司の映像が流れていて、ああやっぱり絡んでいたんだと。
最後に種明かしというんでしょうか、『末法展』の真の答えがあります。なるほど~という感じです。企画の勝利ですね。
【末法 / Apocalypse -失われた夢石庵コレクションを求めて-】
2017年12月24日(日)まで
細見美術館にて
末法 / Apocalypse失われた夢石庵コレクションを求めて (展覧会図録)
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