2013/09/20

九月大歌舞伎「不知火検校」


新橋演舞場で九月大歌舞伎・夜の部を観てきました。

今月は歌舞伎座では若手による花形歌舞伎、演舞場ではベテラン勢による大歌舞伎。歌舞伎座の影であまり話題になってないのですが、高麗屋の『不知火検校』の評判が良いようなので、急遽チケットを求め、観劇して参りました。

『不知火検校』は宇野信夫・作の新歌舞伎。初演は昭和35年で実に36年ぶりに上演だそうです。後に勝新太郎主演で映画化され、それが進化を遂げたのが『座頭市』。本公演では「松本幸四郎悪の華 相勤め申し候」と添え書きされているように、幸四郎がその極悪非道の限りを尽くす検校を見事に演じています。

非道な話ではありますが、筋が良くできていて、世話物の面白さもあります。また、検校の台詞一つ一つが小気味よく、そこに不思議な魅力というか、悪のカリスマ性(=悪の華)を感じます。金にも色にも欲深く、いろんな意味で“オトナ”の歌舞伎でした。

この検校を幸四郎がしっかりと自分のものにしていて素晴らしいの一言。勧善懲悪などではなく、徹底して悪(ヒール)なのですが、ときおり見せるとぼけた味もユーモアと悪賢さが表裏一体になっていて、そのあたりの見せ方はさすが巧いなと思いました。声や表情の変化が巧みで、ただただ圧倒されます。謡い弾きもあり、幸四郎の芸を存分に堪能できました。これまで観た幸四郎の役では一番好きかも。

悪行の仲間の橋之助、彌十郎、亀鶴がそれぞれに持ち味を上手く活かして好演。孝太郎、魁春、友右衛門、錦吾、高麗蔵、左團次といったベテラン勢が要所要所をしっかりと押さえ、舞台に厚みを持たせていました。初代検校の桂三、妻の鴈之助の金に目が眩んだ夫婦も特筆に値する上手さ。検校の子供時代を演じた玉太郎が器用。唯一若手の巳之助・壱太郎のカップルも華を添えてました。

途中、歌舞伎座で上演中の『新薄雪物語』の一節を口にしたり、座頭市ネタがあったりというサービスも。初演が十七世勘三郎だっただけに、勘三郎が演じても良かっただろうなとも思いました。幸四郎の悪の華とはまた違った悪というか、より凄惨な味がでたのではないかと。叶わぬ夢でありますが…。

〆は『馬盗人』。翫雀が三津五郎休演の代役をかって余りある健闘ぶり。翫雀のユーモラスな味が十二分に発揮されて楽しい。巳之助も大活躍。橋之助もこういう芝居は上手い。この狂言の主役はなんといっても馬(大和・八大)で、これが傑作。客席もやんややんやの大喝采でした。最後は六方で花道を引込みます。救いのない芝居のあとだけに、笑って帰れて良かったと思います。

4 件のコメント:

  1. はじめまして
    千秋楽に新橋演舞場で夜の部を観てきました。
    「不知火検校」での幸四郎さんの最後の台詞に感銘をうけました。
    筋書きを購入してないので…
    「おまえたちはちっぽけな肝っ玉に生れついたのだから俺のまねが出来ない…」
    その後の台詞がもしお解かりになりましたら教えて頂いても宜しいですか?
    宜しくお願い致します。

    私も長野草風さんの作品には引きつけれました。
    何とも良いですよね。

    返信削除
  2. はじめまして。
    コメントいただきありがとうございます。
    台詞までは正確には覚えていませんが、「目明か」のくせしてちっぽけなことしかできなくて、汚いばばあやじじいになってのたれ死ぬ、メクラの俺はでっかいことをした、みたいなことを言っていたと思います。
    あれだけ徹底して悪の役なのに、台詞が一つ一つ説得力があって面白かったですね。まさに悪の華でした。

    返信削除
  3. 有り難う御座います♪

    台詞に説得力がありました。
    ブログを色々拝見させて頂きました。
    国立博物館の写真があり思い出しながらみてました。
    また遊びに来ますね♪宜しくお願い致します。

    返信削除
  4. >なみさん
    こんばんは。
    コメントありがとうございます。
    『不知火検校』は再演されたら、もう一度観に来たいと思います。
    また遊びにきてくださいね♪

    返信削除