2017/11/24

国宝展

京都国立博物館で開催中の『国宝展』を観てまいりました。

京博開館120周年&国宝制定120周年、しかも京都では41年ぶりの国宝展。3年前にトーハクで開催された『日本国宝展』は国宝の7分の1が集結ということで話題になりましたが、なななんと今回の『国宝展』はさらに上をゆく4分の1が京都に集まるという空前絶後の展覧会。開催に合わせて『週刊ニッポンの国宝100』なる分冊百科雑誌が創刊されるとか煽るわ煽るわ。これは観に行かないとマズいんじゃないのという空気が美術ファン界隈に充満していました。

行ったのは平日の夕方だったので、並ばずに入れましたが、中は結構な混雑。前の予定が押して、結局1時間半ぐらいしかいられなかったのですが、出品作のボリューム(点数というより内容)と会場の混雑(平日閉館前でも人が減らない)もあって全然時間が足りませんでした。

さて、展覧会は4期に分かれていて、わたしが行ったのは第3期。第3期は過去に拝見している国宝が比較的多かったので、本当は第1期か第2期に行きたかったのですが、そう思うように都合を付けられないのが悲しいところ。とはいえ、されど国宝。これだけの国宝が並ぶ様はさすが壮観で、圧倒されてしまいます。

会場は、順当に回ると3階から順に観て行くかたちになっていて、3階に書跡と考古、2階に仏画や中世・近世絵画、中国絵画、1階に絵巻物や染織、金工・漆工、仏像などが並びます。

(以下、3期について書いてますが、3期は既に終了してます。)

「両界曼荼羅図(伝真言院曼荼羅)」(国宝)
奈良時代・8世紀 教王護国寺(東寺)蔵

まずは3階。最初のコーナーとあって、ここはかなりの混雑。目玉の土偶も「漢委奴国王 金印」も最前列で観るには列に並ばなくてはならなくて、いずれも以前観てるし、「金印」はつい先日トーハクで模造を観たばかりなので、ほとんど素通り。

2階も混んでるとはいえ、3階よりまだマシだったのが救い。
《仏画》ではまず現存最古の彩色曼荼羅という東寺の「両界曼荼羅図」。2009年にトーハクで開催された『空海と密教美術展』のときは胎蔵界と金剛界を日にちを替えて展示してたので一緒に観るのは初めて。1000年以上前の曼荼羅図とはいえ、保存状態の良さ、鮮明な色彩に驚きます。

奈良博所蔵の「十一面観音像」も印象的。顔にピンク色の隈取りがされていて、まるで京劇のよう。奈良時代の図像が源流にあるそうですが、こういう観音像は初めて観たように思います。単眼鏡で覗くと、截金の文様もかなり精緻で見事。《仏画》ではほかに西大寺の「十二天像」と東寺伝来の「十二天像」、曼殊院の「不動明王像(黄不動)」 。さすがに三井寺の黄不動は出てこない。

「伝源頼朝像・伝平重盛像・伝藤原光能像」(国宝)
鎌倉時代・13世紀 神護寺蔵

《肖像画》の目玉は「伝源頼朝像・伝平重盛像・伝藤原光能像」のいわゆる神護寺三像。平成知新館のオープン記念展『京へのいざない』でも3幅揃って展示されて話題になったのが記憶に新しいところ。しばらく前からそれぞれ「足利直義像・足利尊氏像・足利義詮像」という説が有力ですが、本展では従来の作品名を使ってました。一度国宝になってしまうと、作品名を変えるのはなかなか難しいのでしょうか。

[写真左から] 伝・周文 「水色巒光図」(国宝)
室町時代 文安2年(1445) 奈良国立博物館蔵
伝・周文 「竹斎読書図」(国宝)
室町時代 文安4年(1447) 東京国立博物館蔵

《中世絵画》では、周文の真筆の可能性が高いとされる「水色巒光図」と「竹斎読書図」が観られたのが嬉しいところ。「竹斎読書図」はトーハクで観てるけど、「水色巒光図」はたぶん初めてじゃないかと思います。詩画軸の最古例の一つという「渓陰小築図」も重厚な感じがあってなかなか。室町水墨画では個人的に大好きな如拙の「瓢鮎図」にも三たび再会。詩画軸が室町時代初頭の漢文学ブームが背景にあるという話は興味深かったです。

狩野派では正信の「周茂叔愛蓮図」と永徳の大徳寺・聚光院障壁画の内「花鳥図襖」。正信の「周茂叔愛蓮図」が『狩野元信展』に出品されなかったのは、こちらに出るからだったんですね。 永徳の「花鳥図襖」は昨年、大徳寺・聚光院での公開時に拝見しましたが、今回は近くで観られたのであらためてまじまじと観てきました。

長谷川等伯 「松林図屏風」(国宝)
桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵

円山応挙 「雪松図屏風」(国宝)
江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵

《近世絵画》は、等伯の「松林図屏風」、等伯の息子・長谷川久蔵の「桜図壁貼付」、応挙の「雪松図屏風」という贅沢に3つの屏風のみ。「松林図屏風」と「雪松図屏風」は東京では毎年のように観る機会がありますが、関西ではこういう機会でもないと観られないでしょうし、人も集まるわけです。部屋の中央には『茶の湯展』でも拝見した「志野茶碗 銘 卯花墻」が置いてあり、「卯花墻」越しに霧に霞んだ松と雪化粧した松を観るというのもなかなかできない体験。

伝・徽宗 「秋景・冬景山水図」(国宝)
中国・南宋時代・13世紀 金地院蔵

これも『京へのいざない』で観てますが、徽宗の「秋景・冬景山水図」がいいですね。枯木の上の2匹の猿と空を舞う2羽の鶴を見つめる高士たち。とりわけ、左幅の高士の後ろ姿のカッコよさに惚れました。

牧谿 「観音猿鶴図」(国宝)
中国・南宋時代・13世紀 大徳寺蔵

《中国絵画》も唸ってしまうような充実ぶり。今年トーハクの『茶の湯展』で念願叶って初めて観ることができた牧谿の「観音猿鶴図」にも再会。今まで長年観ることができなかったのに、まさか1年の間に二度も観ることができるとは。

部屋の中央には「油滴天目」。これも『茶の湯展』につづき1年の間に二度観られるとは。2期に出品されていた大徳寺龍光院の「曜変天目茶碗」と間違えてご覧になってるお年寄りがいましたが…。そういえば、「雪舟はどこにあるんですか?」と係員に聞いているご婦人もいました。。。

「油滴天目」(国宝)
中国・南宋時代・12~13世紀 大阪市立東洋陶磁美術館蔵

さて1階。中央には今年国宝に指定された大阪・金剛寺の「大日如来坐像」と「不動明王坐像」。平成知新館オープン以来ずっと展示されたままでしたが、本展を終えると金剛寺に戻るのだそうです。国宝にならなかったら、どうするつもりだったんだろうと思うのですが、国宝になることを見越していたのか? ちなみにもう一体の脇侍の「降三世明王坐像」は奈良国立博物館のなら仏像館に展示されています。

《絵巻物と装飾経》には四大絵巻の内、徳川美術館所蔵の「源氏物語絵巻(柏木・竹河)」や「信貴山縁起絵巻(延喜加持巻)」が展示されてます。どちらもそれぞれ単独で公開しても行列ができる超有名な絵巻ですが、それが一緒に観られるのですから、国宝展恐るべしです。

去年の奈良博の『国宝 信貴山縁起絵巻展』で「信貴山縁起絵巻」と一緒に展示されていた「粉河寺縁起絵巻」も再見。上下に焼けた跡が残っていますが、絵が描かれている部分は比較的問題ないのが不幸中の幸い。人物のひょうきんというか稚拙な表現に味わいがあっていいですね。「寝覚物語絵巻」の平安王朝を舞台にした雅さと華やかな料紙の美しさにもうっとり。

料紙の美しさといえば、四天王寺の「扇面法華経」も豪華。金銀の切箔野毛砂子、あと墨流しでしょうか?料紙の美しさに目を奪われます。
…などと挙げだしたらキリがありませんね。ほんと凄い内容でした。

「粉河寺縁起絵巻」(国宝)
平安時代・12〜13世紀 粉河寺蔵

国宝885件の美術工芸品の内、彫刻は134件。彫刻の場合、関西以外にあるものはわずか8件といいます。今回の出品作で、とりわけ絵画の多くは元を辿れば京都から流出したものでしょうから、京都の人にしてみれば、ある意味凱旋展なのかもしれないですね。


【開館120周年記念 特別展覧会 国宝】
2017年11月26日まで
京都国立博物館にて


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