世田谷文学館で開催中の『日本SF展』に行ってきました。
戦後日本のSFカルチャーを振り返るという展覧会。SF小説やマンガ、アニメーション、特撮など、子どもの頃に心ときめかせ、未来を夢見る時を過ごした大人たちにはたまらない企画ではないでしょうか。
展覧会は、大学の講義のように授業形式になっていて、それぞれごとに作品や資料が展示されています。
まず≪日本SF概論≫では、日本SF作家クラブの活動について紹介。「SFマガジン」の各号や「創元SF文庫」を代表する作品(文庫本)がきれいに陳列されています。そのほか、日本のSF黎明期の“古典SF”に触れたり、日本SFの父といわれる空想科学小説家・海野十三の貴重な資料とともに世田谷文学館館長の熱い解説も。手塚治虫も海野十三の作品に大きな影響を受けたといいます。
つづいては≪日本SF専門講義≫ 。ここでは、筒井康隆や小松左京、星新一、手塚治虫といった日本SF界の重鎮たちの代表作や原稿、映画作品のパンフレットなど様々な資料、また日本SF作家クラブの会員でイラストレーターの真鍋博の作品などが展示されています。
それぞれの作家の残した言葉などが壁に張られていて、どれも特徴があるというか、個性が出ていて面白いですね。星新一の丁寧な字と米粒のような小さな字には驚きました。
ご多分に漏れず、わたしも小学生のころは図書館に行っては、筒井康隆、小松左京、星新一らの本や海外のSF小説の本を借り、そればっかり読んでいた記憶があります。『トリフィド時代』(当時は『怪奇植物トリフィドの侵略』というタイトルだったと思う)なんて何度読んだか分かりません。
真鍋博という方も恥ずかしながら初めて知りました。SFではありませんが、真鍋博が表紙のイラストを描いたハヤカワ文庫のアガサ・クリスティ・シリーズも展示されています。中・高校生の頃、アガサ・クリスティにハマりにハマって、このシリーズも随分持ってたんですけど、チャリティーでみんな売ってしまいました。少し手元に置いておけば良かったなぁ。
手塚治虫の直筆原稿やセル画などもあって、みなさん食い入るように見ていましたが、わたしは不思議なことに子どもの頃からマンガがあまり好きでなく、手塚治虫のアニメはテレビで見ていたもののマンガはついぞ読んだことがなく、そのためあまり思い入れがありません。通っていた幼稚園の隣が昔の虫プロで、手塚治虫も幼稚園に時折来ていたらしいのですが。
そのまわりには、≪特殊講義≫として、日本の特撮やアニメーション、「大伴昌司の〈仕事〉」を紹介。うちにもありましたよ、怪獣図鑑。こういうのを見て自分は育ったんだなと思い出します。特撮は主に円谷英二と円谷プロダクションによる『ウルトラマン』シリーズや『猿の軍団』にスポットを当てていました。そのほか、浦沢直樹の『20世紀少年』についての考察や、手塚治虫の影響をめぐる話などについても。
Science Fiction とはいえノスタルジーの世界。戦後のサブカルチャーの中で、大きな潮流であったSFカルチャーを探る回顧展といったところでしょうか。「戦争がなかったら、私はSF作家にならなかっただろう」という小松左京の言葉が印象的でした。
【日本SF展・SFの国】
2014年9月28日(日)まで
世田谷文学館にて
SFマガジン700【国内篇】 (創刊700号記念アンソロジー)
日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)
60年代日本SFベスト集成 (ちくま文庫)
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