2014/01/15

Kawaii 日本美術

山種美術館で開催中の『Kawaii 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで-』に行ってきました。

無邪気な仕草や表情が微笑ましい子どもや、身近な存在である犬や猫をはじめとする動物、鳥、虫などを描いた、思わず「かわいい!」と声を上げたくなるような作品を集めたといいます。

去年、府中市美術館で似たような展覧会がありましたので、なんでまた?対抗意識?とも思いましたが、府中ともまた違った、山種美術館の所蔵作品を中心とした独自のラインナップなのだろうと期待し、正月早々、開催初日に伺ってまいりました。

会場に入ってすぐのところに待ち構えていたのが、チラシにも使われている若冲の「伏見人形図」。プライス・コレクションにも同題のものがありますが、図録で写真を比べても全く一緒ですね。ほかに個人蔵の「伏見人形図」もあって、数年前の千葉市美術館の『伊藤若冲 アナザーワールド』に出てたのはこちらのようです。余程人気があっていくつも描いたのでしょう。

伊藤若冲 「伏見人形図」
1799年(寛政11年) 山種美術館蔵 

となりには芦雪と伝わる「唐子遊び図」。古くから高士たちのたしなみといわれる琴棋書画を子どもの遊びに見立てて描いた作品です。師匠・応挙の言うことを聞かない芦雪。言うことを聞かなくてもこれだけ見事な作品を描けるのだからすごいものです。

伝・長沢芦雪 「唐子遊び図」(重要美術品)
18世紀(江戸時代) 山種美術館蔵 

子どもを描いた作品の中では、伊藤小坡の「虫売り」、奥村土牛の「枇杷と少女」、松園の「折鶴」あたりが印象的でした。

上村松園 「折鶴」
1940年(昭和15年)頃 山種美術館蔵 

奥村土牛 「枇杷と少女」
1930年(昭和5年) 山種美術館蔵 

その中でとりわけ面白かったのが、川端龍子の「百子図」で、戦後インドから上野動物園に贈られた象・インディラと子どもたちを描いた作品です。戦争で動物のいなくなった上野動物園に象が欲しいという子どもたちの願いと、象が子どもたちと一緒に行進して動物園にやってきたというエピソードに触発されて描いたといいます。平和の象徴のように象を取り囲む子どもたちとは裏腹に象の目が怖い(笑)という龍子らしいインパクトのある作品です。

川端龍子 「百子図」
1949年(昭和24年) 大田区立龍子記念館 

動物を描いたものとしては、京狩野派の狩野永良の「親子犬図」が個人的にとても興味を引きました。狩野派的な動物画というより中国絵画的な写生画という趣きですが、じゃれあう仔犬たちを囲むアットホームな雰囲気の中にも仔を守らんとする親犬の緊張感もあり、永良の画技の確かさを感じさせます。

狩野永良 「親子犬図」
18世紀(江戸時代) 静岡県立美術館蔵 (展示は2/2まで)

山種美術館の展覧会だけあり、栖鳳や土牛、川合玉堂、安田靫彦、堂本印象、西山翠嶂などのお馴染みの面々の作品が並びます。山種美術館所蔵作品の中では、福田平八郎の「桐双雀」が一番好きでした。

竹内栖鳳 「みゝづく」
1933年(昭和8年)頃 山種美術館蔵 

サントリー美術館から借りてきたお伽草子の絵巻も2点。老夫婦が育てた娘が猿にさらわれてしまうという「藤袋草子絵巻」と、子どもを亡くした雀が出家するという「雀の小藤太絵巻」で、一昨年サントリー美術館で開催された『お伽草子展』にも出展されていたものです。この素朴さとユーモラスな動物の描写がたまらなくカワイイですね。

「藤袋草子絵巻」
16世紀(室町時代) サントリー美術館蔵 

ほかに、若冲の「托鉢図」は初めて観たと思うのですが、若冲らしいユニークな筆致で、なんとも楽しい。お坊さん一人一人の表情に味があって、思わず笑ってしまいます。

伊藤若冲 「托鉢図」
1793年(寛政5年)(展示は2/2まで)

第二会場では近現代の作品を中心に展示。その中でも熊谷守一と谷内六郎の作品が複数点展示されていて、そのほのぼのとしたタッチに思わずほっこりとした気持ちになります。

谷内六郎 「にっぽんのわらべうた ほ ほ ほたるこい」
1970年(昭和45年)頃 

正直、この絵のどこがカワイイの?みたいな、ちょっとビミョーな絵もなくはありませんでしたが、企画の主旨からしても難しく考えて観るような作品はなく、楽しい気分、優しい気持ちにさせてくれるような展覧会だと思います。


【Kawaii 日本美術 -若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで-】
2014年3月2日(日)まで
山種美術館にて


谷内六郎 昭和の想い出 (とんぼの本)谷内六郎 昭和の想い出 (とんぼの本)


熊谷守一―気ままに絵のみち (別冊太陽)熊谷守一―気ままに絵のみち (別冊太陽)


かわいい江戸絵画かわいい江戸絵画

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