本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、新年最初の美術館巡りは、毎年恒例ですが、東京国立博物館の『博物館に初もうで』からスタートいたしました。
初日にあたる昨日は家族ずれや外国人観光客の姿も多く、大勢のお客さんで賑わっていました。
毎年、干支にちなんだ日本画や美術品、また選りすぐりの国宝を展示したり、楽しいイベントもあったりと、話題に事欠きませんが、今年の目玉は長谷川等伯の「松林図屏風」が公開されるということでしょう。トーハク所蔵作品の中でも一、二を争う人気の屏風。昨日も屏風の前には人だかりができていました。
国宝 長谷川等伯 「松林図屏風」
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
等伯の「松林図屏風」は2階国宝室に展示されていますが、本作以外にも2階特別1室・2室の企画展示『博物館に初もうで -午年によせて-』では干支の午が描かれている「伝名和長年像」と「牧馬図屏風」も展示されています。どちらも等伯が信春を名乗っていた頃の若書きの作品で、特に「牧馬図屏風」は馬の調教や騎馬、野生馬など様々な馬が描かれたユニークな屏風です。
重要文化財 長谷川等伯 「伝名和長年像」
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
重要文化財 長谷川等伯 「牧馬図屏風」
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
安土桃山時代・16世紀 (1/26まで展示)
さて、国宝室のとなり、≪宮廷の美術 平安~室町≫では、こちらも国宝で、現存最古の「十六羅漢像」の16幅の内3幅が展示されています。十六羅漢は日本では10世紀末に信仰が広まったそうで、本作はその最初期の作品。よく見る十六羅漢像は奇異な風貌が特徴的ですが、東博所蔵のこの「十六羅漢像」は古い唐代図像の流れを汲んだもので、平安仏画特有の雰囲気と色彩感があります。
国宝 「十六羅漢像(第十尊者)」
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
国宝 「十六羅漢像(第十二尊者)」
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
国宝 「十六羅漢像(第五尊者)」
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
平安時代・11世紀 (2/9まで展示)
「十六羅漢像(第五尊者)」のみ特別1室に展示されています。
重要文化財 「二河白道図」
鎌倉時代・13世紀 (2/9まで展示)
鎌倉時代・13世紀 (2/9まで展示)
会場には1/15から始まる『クリーブランド美術館展』の出展作の関連作品も展示されています。クリーブランド美術館所蔵本とは構図がほぼ同じですが、東博本の方が年代が少し古いようです。
国宝 雪舟等楊 「破墨山水図」
室町時代・明応4年(1495) (1/13まで展示)
室町時代・明応4年(1495) (1/13まで展示)
≪禅と水墨画 鎌倉~室町≫には雪舟の国宝「破墨山水図」が限定公開されています。墨の濃淡だけで表現した立体感や奥行き、また筆の勢いに雪舟の極めた感が強く感じられます。雪舟76歳のときの作で、絵の上部には雪舟自身による画学の系譜を記した序と京都五山の詩僧による題詩が書かれているそうです。今回は10日程の限定公開ですが、国宝室のスケジュールによれば今年の11月にも公開されるようです。
重要文化財 雪村周継 「鷹山水図屏風」
室町時代・16世紀 (2/9まで展示)
室町時代・16世紀 (2/9まで展示)
そばには雪村の代表作の一つ「鷹山水図屏風」も。獲物を追う鷹の猛然とした佇まいは、今度の『クリーブランド美術館展』で待望の来日を果たす雪村の傑作「龍虎図屏風」に通じるものがあります。同じ部屋には、室町水墨の代表的な画僧・賢江祥啓の「富嶽図」もありました。
重要文化財 狩野永徳 「許由巣父図」
安土桃山時代・16世紀 (1/13まで展示)
安土桃山時代・16世紀 (1/13まで展示)
トーハクの中で一番好きな部屋、7室の≪屏風と襖絵 安土桃山~江戸≫には狩野永徳の「許由巣父図」、土佐光起の「源氏物語図屏風(初音・若菜上)」、そして池大雅の国宝「楼閣山水図屏風」が公開されています。「許由巣父図」は永徳らしい画力を強く感じさせる傑作です。
国宝 池大雅 「楼閣山水図屏風」
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
江戸絵画好き要チェックの8室≪書画の展開 安土桃山~江戸≫には、芦雪の「蝦蟇仙人図」や岡本秋暉の「孔雀図」、住吉如慶の「東照宮縁起絵巻」、立原杏所の「葡萄図」といった作品は見ものだと感じました。また、酒井抱一の「富士越龍図」があって、これは抱一でもあまり見たことのないタッチの作品でなかなか良かったです(写真撮影不可だったため写真なし)。
長沢芦雪 「蝦蟇仙人図」
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
岡本秋暉 「孔雀図」
江戸時代・19世紀 (1/13まで展示)
江戸時代・19世紀 (1/13まで展示)
そんな作品の中で、とても印象に残ったのが柴田義董の「鹿図屏風」で、四条派らしい写実性と空間を巧く活かしたすっきりとした構図が見事。どこか近代的な匂いさえします。調べたら、呉春の弟子なんですね。鹿の凛とした表情が素晴らしい。
柴田義董 「鹿図屏風」
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
江戸時代・18世紀 (1/13まで展示)
≪浮世絵と衣装 江戸(浮世絵)≫では新年に相応しいおめでたい絵柄が多くありました。
葛飾北斎 「宝船の七福神」
江戸時代・19世紀 (1/26まで展示)
江戸時代・19世紀 (1/26まで展示)
北斎の「宝船の七福神」も豪華で楽しげでいいですねぇ。江戸の人々はこうした浮世絵を枕の下に忍ばせ、初夢を見たのでしょうか。豊国の「見立七福神宝船」は花魁や遊女を七福神に見立てたシャレた作品。小槌や釣竿などの特徴で誰が何かが分かります。
歌川豊国 「見立七福神宝船」
江戸時代・18世紀 (1/26まで展示)
江戸時代・18世紀 (1/26まで展示)
お気に入りは鳥文斎栄之の美人画。いいですねぇ。黄摺背色のトーンも美しい。
鳥文斎栄之 「風流五節句・元旦」
江戸時代・18世紀 (1/26まで展示)
江戸時代・18世紀 (1/26まで展示)
現在、2階の高円宮コレクション室では現代の工芸作家による根付が展示されています。魚やウサギといった日本的な根付に混じって、カチカチ山や河童などユニークな根付も。
高木喜峰 「かちかち山」
1995年 (3/23まで展示)
1995年 (3/23まで展示)
つづいて1階へ。≪金工 江戸時代の金工≫には、『開運!なんでも鑑定団』に登場すると必ず高額の値が付く自在置物が5点も展示されています。中でも、明珍宗察の「龍」は現存最古の自在置物。鱗一枚一枚が精巧に作られ、まるで生き物のような触感と躍動感が伝わってきます。必見です。
明珍宗察 「自在置物 龍」
江戸時代・正徳3年(1713) (2/16まで展示)
江戸時代・正徳3年(1713) (2/16まで展示)
明珍宗清 「自在置物 伊勢海老」
江戸時代・18~19世紀 (2/16まで展示)
江戸時代・18~19世紀 (2/16まで展示)
ほかにも「伊勢海老」「ヘビ」「鯉」など。2階の8室には見事な「鷹」の自在置物もありますのでお見逃しなく。
明珍清春 「自在置物 鷹」
江戸時代・18~19世紀 (2/16まで展示)
江戸時代・18~19世紀 (2/16まで展示)
なお、1階は15室から19室がリニューアル工事のため閉室。そのため近代日本画の展示はありません。
『博物館に初もうで』の企画自体は1/26までやっていますが、作品によっては1/13までの展示のものもありますので、ご注意を。
【博物館に初もうで】
日程: 2014年1月2日(木) ~ 2014年1月26日(日)
時間: 9:30~17:00(入館は16:30まで)
詳しくは東京国立博物館のウェブサイトでご確認ください。
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