2015/06/07

華麗なる江戸の女性画家たち

渋谷の実践女子学園香雪記念資料館で開催されている『華麗なる江戸の女性画家たち』を観てまいりました。

恵比寿の山種美術館からは徒歩約10分。山種美術館で『松園と華麗なる女性画家たち』を観た足でそのまま向かいました。静かな住宅街を通り抜け、ちょっとした散歩気分です。

こちらは江戸時代を中心に女性画家の作品を特集した展覧会。一部、他館や個人蔵の作品もありますが、ほとんどの作品が香雪記念資料館と実践女子大学の所蔵作品。近代の作品は山種美術館に現在貸し出しているぐらいなので、ここは女性画家のコレクションがほんと充実しているんですね。

正直なところ、本展で知っていた女性画家は清原雪信と池玉瀾ぐらいだったのですが、江戸の女性絵師の作品を観る機会はそうそうないので、とても興味深く拝見しました。

いくつかのテーマに沿って作品が紹介されていて、メインの会場では<多彩な人物表現>、<花鳥の美>、<清雅な山水・花鳥>に分けられています。

清原雪信 「菊慈童図」
17世紀後半 実践女子学園香雪記念資料館蔵

江戸時代の女性絵師として有名な清原雪信がいくつかあったのですが、そのクオリティの高さには驚きました。雪信作品で観たことがあるのはこれまで数えるほどで、どんな絵師なのかよく掴めないでいました。端正な姿と静かな趣きが印象的な「菊慈童図」、やまと絵風の「紫式部図」、江戸狩野派らしい淡麗な味わいの中にも華やかさと優雅さが光る「四季花鳥図屏風」が秀逸です。雪信の娘・春信の屏風絵もあり、確かな画技を感じさせます。

谷文晁 「江村晩晴図」、谷幹々 「雪景楊柳図」
寛政7年(1795) 実践女子学園香雪記念資料館蔵

山種美術館でも意外と南画の作品が多かったのが印象的でしたが、実は江戸後期に最も多くの女性画家を輩出していたのは南画なのだそうです。池大雅の妻・玉瀾はこれまでも何度か作品に触れる機会があったのですが、谷文晁の妻や妹も南画家として作品を残していたことを初めて知りました。絵師の妻が絵を嗜むというのは他の派ではあまり聞かない気がします。

梁川紅蘭 「秋卉舞蝶図」
天保5年(1834) 実践女子学園香雪記念資料館蔵

梁川紅蘭の「秋卉舞蝶図」は、失恋した女性の涙が落ちた土から生えたという伝承のある秋海棠を中心に秋の草花を描いたもので、なにか女性の深い思いを感じさせるような一枚。ほかにも、池玉瀾の「漁楽図」、江馬細香の「雪中生筍図」、河邊青蘭の「竹・菊図」、林珮芳の「山水図」が印象に残りました。

別室(?)の小さな部屋には<学祖・下田歌子と女性画家>と題し、実践女子学園の創立者・下田歌子の関連資料や、跡見学園の学祖・跡見花蹊やその従妹で日本画家の跡見玉枝の作品を展示。ここでは野口小蘋の華やかな「海棠小禽図」が目を惹きます。

徳山(池)玉瀾 「漁楽図」
18世紀後半 実践女子学園香雪記念資料館蔵

会場は大学(しかも女子大)の構内にあるので、264号側の正門の警備室のところで名前を書いて、通行証をもらって入ります。 土日も開館していますが、月曜日が休館なので注意。入館料は無料です。


【実践女子学園創立120周年記念特別展 華麗なる江戸の女性画家たち】
2015年6月21日(日)まで
実践女子学園香雪記念資料館にて


近世の女性画家たち―美術とジェンダー近世の女性画家たち―美術とジェンダー

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