熊谷守一が45年間暮らした椎名町の自宅跡にある豊島区立熊谷守一美術館。開館して今年で30年とのことでそれを記念しての特別展です。
といっても毎年この時期になると、「◯◯周年展」と記念展を行っているので決して特別なことではないのですが、それでも今年は節目の年ということで、熊谷守一の充実したコレクションで知られる愛知県立美術館の木村定三コレクションや岐阜県立美術館などから代表作が集められていて、また個人蔵の作品も多く借り受けています。
熊谷守一 「雨滴」
1961年 愛知県立美術館蔵(木村定三コレクション)
1961年 愛知県立美術館蔵(木村定三コレクション)
美術館は3階建てで、通常3階はギャラリーとして貸し出されていますが、今回は3フロアーを使っての展覧会。1階には後期の油彩画や彫刻、書など、2階は墨絵やクレパス画、3階は初期や戦前の作品から晩年の作品まで幅広く展示されています。
熊谷守一 「白猫」
1959年 豊島区立熊谷守一美術館蔵
1959年 豊島区立熊谷守一美術館蔵
単純で、どこか子どもが描いたようにも思える素朴な線描なんですが、猫にしても花にしても虫にしても、簡素だからこそ、無駄を省いたそのものの本質を捉えている気がします。どれも微笑ましく、優しく、温かく、心をほっこりとさせます。
熊谷守一は猫好きで知られ、猫を描いた作品が多くありますが、この白猫はハイコという名で、猪熊弦一郎の奥さんから譲っていただいた猫なのだそうです。猫好き同士で繋がっていたなんて面白いですね。会場には同じ猫好きで知られる藤田嗣治と一緒に写った写真もありました。
熊谷守一 「蝋燭」
1909年 岐阜県立美術館蔵
1909年 岐阜県立美術館蔵
初期の作品は後年のものと全く違う作風で、東京美術学校での同期に青木繁がいたぐらいですから、明治の近代洋画の香りが強くします。大正から昭和初期にかけては厚塗りの油彩画なんかもあって、これも同じ人なのかというくらい驚きます。若いときの自画像と晩年の自画像も出てるので、その違いを観るのも興味深いものがあります。
熊谷守一 「ヤキバノカエリ」
1948-55年 岐阜県立美術館蔵
1948-55年 岐阜県立美術館蔵
熊谷守一の画風の転換期の重要な作品「ヤキバノカエリ」も展示されています。結核で亡くなった娘・萬の火葬場からの帰り道を描いた作品で、同時期に制作された「仏前」が一緒に並んで観られるのは必見です。
最晩年にはほとんど抽象画のような絵も残していて、太陽と日輪を描いた作品は自分の自画像とも語っているのが興味深い。クレパスの仏画とか、かなりぶっ飛んでます。
熊谷守一 「朝のはぢまり」
1969年 岐阜県立美術館蔵
1969年 岐阜県立美術館蔵
熊谷守一の作品は好きで、我が家の今年のカレンダーも東京国立近代美術館で購入した守一の作品のものなので、割と見知っている作品も多いのですが、それでもやはり板に油彩の質感とか茶の輪郭線とか、実物を見て初めて気づくことも多いですね。図録(1000円)は限定ですのでお早めに。
【熊谷守一美術館30周年展】
2015年6月28日(日)まで
豊島区立熊谷守一美術館にて
守一のいる場所 熊谷守一
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