2015/01/02

博物館に初もうで

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


さて、ここに行かずば美術館巡りは始まらない、ということで、今年も美術館はじめはトーハクの『博物館に初もうで』からスタートです!

今年は初めて開館前から並んでみました。30分前に到着した時には既に100人ぐらいの行列。あれよあれよという間に開館時には長い行列ができていました。13時ぐらいまで滞在していましたが、帰りも切符売り場には長い行列ができていました。JR上野駅公園口そばのミュージアムチケット(駅構内)でも入場券が買えますので事前に用意しておくことをお勧めします。

今年も一押しは等伯の「松林図屏風」。ここ何年かお正月の定番になってきましたね。昼間に来るといつも黒山の人だかりですが、今朝は朝一番だったので、ゆっくりと鑑賞させていただきました。ありがたやありがたや。

国宝 長谷川等伯 「松林図屏風」
安土桃山時代・16世紀 (1/12まで展示)

2階の特別室1では≪特集 博物館に初もうで~ひつじと吉祥~≫と題し、干支の羊にちなんだ絵画や美術品、また吉祥画題の作品などが展示されています。

重要文化財 趙福 「羊図(唐絵手鑑「筆耕園」のうち)」
中国 明時代・16世紀 (1/12まで展示)

「羊」という字は「よう」とも読みますが、音が「陽」と同じなので羊の絵はお祝いの席などに飾られたのだそうです。羊は日本にはいなかったので他の干支に比べて馴染みは薄く、中国絵画で描かれた羊を真似て描いていたようで、羊なのかヤギなのか、はたまた「これヒツジ?」というのもありました。

北尾重政 「羊と遊ぶ唐美人と唐子」
江戸時代・18世紀 (1/12まで展示)

北尾重政の浮世絵は羊というよりロバ?

歌川国芳 「よきことを菊の十二支」
江戸時代・19世紀 (1/12まで展示)

国芳の羊は最早何がなんだか分からない(笑)

[写真左] 雪村周継 「松鷹図」 室町時代・16世紀
[写真右] 渡辺南岳 「十二支図」 江戸時代・18世紀 (1/12まで展示)

そのほかに、雪村の「松鷹図」、雪舟と伝わる「梅下寿老図」、渡辺南岳の「十二支図」がいいですね。南岳は応挙の高弟といわれるだけあり、その生き生きとした動きや写実性と墨の筆触が見事。ただし、羊はヒツジというかシカというか…。

伊藤若冲 「松梅群鶏図屏風」
江戸時代・18世紀 (1/25まで展示)

2階7室の≪屏風と襖絵≫には若冲の「松梅群鶏図屏風」が展示。どの鶏も愛嬌があって何度観ても面白い。外国人の方もとても楽しそうに見入っていました。若冲の絵の魅力は万国共通ですね。ほかに池大雅の「西湖春景銭塘観潮図屏風」も素晴らしい。

英一蝶 「富士山図」
江戸時代・18世紀 (1/25まで展示)

つづく8室は江戸時代の書画。お正月らしくおめでい画題や十二支を描いた作品が並びます。

[写真左] 狩野探信 「百猿図」 江戸時代・18世紀
[写真右] 円山応挙 「虎嘯生風図」 江戸時代・天明6年(1786) (1/25まで展示)

応挙の「虎嘯生風図」は“空に向かって吼え、風を巻き起こす虎”を表した図。毛のふわっとした感触はさすが応挙。撫でたらさぞ気持ちいいだろうなと思わせます。江戸後期の鍛冶橋狩野家の絵師・探信の「百猿図」も果物の実のように連なる猿がかわいい。

歌川国貞(三代豊国) 「二見浦曙の圖」
江戸時代・19世紀 (1/25まで展示)

歌川広重 「名所江戸百景・山下町日比谷外さくら田」
江戸時代・安政4年(1857) (1/25まで展示)

10室の浮世絵コーナーでは国貞の「二見浦曙の圖」がいいですね。日の出がビームのように差し込んで夫婦岩も神々しい。一方の広重は「名所江戸百景」が3点出ていて、凧揚げを描いた「山下町日比谷外さくら田」」や「霞が関」、現在の三越本店、三井本館あたりの「するがてふ」には富士山が大きく、お正月らしさを演出しています。

鳥文斎栄之 「隅田川図巻」
江戸時代・19世紀 (1/25まで展示)


浮世絵では鳥文斎栄之の肉筆画「隅田川図巻」が素晴らしい。福禄寿と大黒天、恵比須が隅田川を上り吉原で花見をするという絵巻で、太夫たちに囲まれて遊興にふける神様たちが可笑しい。美人画の名手で知られた栄之らしい品とウィットを感じさせる逸品。

[写真左] 下村観山 「老子」 大正時代・20世紀
[写真右] 横山大観 「釈迦十六羅漢」 明治44年(1911) (2/8まで展示)

[写真左] 前田青邨 「竹取物語」 明治44年(1911)
[写真右] 小林古径 「阿弥陀堂」 大正4年(1915) (2/8まで展示)

1階18室は明治・大正の近代美術が中心。観山の「老子」は横浜美術館の『下村観山展』にも出品されてましたね。大観の「釈迦十六羅漢」は初めて見たかな?。古径の「阿弥陀堂」も昨年の『世紀の日本画』にも出ていました。青邨の「竹取物語」は月に帰るかぐや姫を武士たちが守る場面ですが、武士たちの慌てた表情の描写がうまい。

横山大観・下村観山・今村紫紅・小杉未醒 「東海道五十三次絵巻 巻3」
大正4年(1915) (2/8まで展示)

上右から下村観山、横山大観、下右から今村紫紅、小杉未醒

ここでは大観・観山・紫紅・未醒の日本美術院の4人の画家が分担して描いた「東海道五十三次絵巻」がオススメ。東海道を写生しながら旅し、全9巻をほぼ旅の間に完成させたそうです。今回はその内の一つで、三島から薩堆峠を展示。絵に4人それぞれの個性が出ていて、観ていて面白い。

藤島武二 「静」
大正5年(1916) (2/8まで展示)

最後には藤島武二の「静」。夕暮れなのでしょうか、赤く染まった雲と2本の虹。湖と山と空の色のコントラストがいい。

重要文化財 上野法橋・但馬房筆 「聖徳太子絵伝」
鎌倉時代・嘉元3年(1305) (1/12まで展示)

法隆寺宝物館には聖徳太子の生涯約70場面を季節ごと4面に分けて描いた「(嘉元本)聖徳太子絵伝」が出品中。馬屋での太子生誕や富士を黒駒で飛び越える話など有名な説話が描かれています。よく見ると確かに桜や紅葉、雪山や梅などがところどころに見え季節も分かります。12月頭まで公開されていた国宝「(延久本)聖徳太子絵伝」に次いで古い絵伝だそうです。ちなみに本館3室にも南北朝時代の「聖徳太子絵伝」が出ています。こちらは状態も良く、比較的きれい。川合玉堂の旧蔵品とか。


今年の『博物館に初もうで』はいつもの年より期間が短いので行くならお早めに。同じ期間中、黒田記念館が久しぶりにオープンし、黒田清輝の作品展が行われています。こちらも忘れずに。
黒田記念館リニューアルオープン


【博物館に初もうで】
日程: 2015年1月2日(金) ~ 2015年1月12日(月)
時間: 9:30~17:00(入館は16:30まで)
詳しくは東京国立博物館のウェブサイトでご確認ください。

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