2012/09/19

平家物語画帖

根津美術館で開催中の『平家物語画帖-諸行無常のミニアチュール』展に行ってきました。

『平家物語』を120図の扇形の紙に絵画化した「平家物語画帖」は上中下の3帖からなり、本展では前後期に分け、全場面を展示します。

岩波文庫版の『平家物語』を全巻読破し、低視聴率と画面の汚さで話題の大河ドラマだって毎週欠かさず見ている自称・平家物語ファン(?)のわたしですから、これを見ずしてどうするのでしょう(笑)。ということで、早速伺ってまいりました。

『平家物語』または平家一門の栄枯盛衰を絵画化した作品は、「平家物語絵巻」や今年東京国立博物館などで公開された「平治物語絵巻」を出すまでもなく数多く存在し、それらは“平家絵”というジャンルでくくられるのだそうです。平安時代に書かれた『源氏物語』の“源氏絵”や同じく『伊勢物語』の“伊勢絵”が、物語成立後ほどなくして絵画化されたのとは異なり、“平家絵”は中世にさかのぼる遺品は稀で、大半は近世以降の作品とのことでした。この「平家物語画帖」も17世紀の作と考えられています。

「平家物語画帖」(根津本)は縦17cm、横26.7cmの折帖に、扇面画が貼り込まれたもの。扇面は、上弦(上側の曲面)約24.5cm、下弦(下側の曲面)約11cmで、通常の扇のサイズの約半分程度と小ぶりです。詞書と扇絵が交互に連続していて、一種の絵巻のような形態になっています。台紙には金の切箔を散らしてあって、金泥の霞が引かれ、さらに松や竹、山桜、また杜若や菊などの花木が下絵に描かれています。

巻第六 「小督の事」
江戸時代(17世紀) 根津美術館蔵 (展示は9/30まで)

扇絵も金泥・銀泥、また金砂子がふんだんに使われ、とても装飾的で、非常に贅沢な作りになっています。線描は丁寧で美しく、彩色も鮮やか。人物の顔にも大和絵特有の上品さが漂っています。『平家物語』というと、非道なストーリー展開や血なまぐさい合戦も多いのですが、そうした凄惨さは全くありません。恐らくは嫁入り道具のように大名など特権階級からの需要により制作されたものではないかということでした。

巻第九 「宇治川先陣の事」
江戸時代(17世紀) 根津美術館蔵

作者は土佐派を代表する絵師・土佐光起の長子・土佐光成筆と伝えられているそうですが、はっきりと断定はされていないようです。根津本とほぼ同じ図柄の同一工房の作と思われる扇面画の平家絵が複数存在することが分かっていて、何れにしても土佐派の系統に連なる絵師グループによるものだろう考えられているそうです。

巻第九 「敦盛最期の事」
江戸時代(17世紀) 根津美術館蔵 (展示は9/30まで)

諸本によっても異なりますが、『平家物語』は全190段以上あり、「平家物語画帖」(根津本)はその中から120のエピソードをピックアップしています。ただし、小督が清盛から逃げるように嵯峨野に隠れ潜むという有名な「小督の事」の次の扇絵が、いきなり清盛の葬送の夜の場面になっているなど、「入道死去」やまた「奈良炎上」といった重要な場面がいくつか欠落していることも指摘されています。

この『平家物語』の長大さや人間関係の複雑さは、昔の人にとってもとっつきにくかったのかもしれません。「平家物語画帖」はそうした『平家物語』を手軽に楽しむためのアイテムとして恐らくは作られたのでしょう。会場では、各挿話ごとにストーリーが簡単に紹介されていて、『平家物語』を読んだことのない人や詳しく知らない人でも、絵を見ているだけでその世界に耽ることができるようになっています。

巻第十一 「先帝ご入水の事」(部分)
江戸時代(17世紀) 根津美術館蔵 (展示は10/2から)

本展には、「平家物語画帖」以外にも関連の作品が展示されています。

入口を入ったところに展示されていたのが「源平合戦図屏風」。6曲1双の屏風で、保元物語と平治物語に取材したもの。非常に丁寧な作りで、見事な屏風絵でした。展示されていたのは左隻のみで、これとは別の右隻には瀬戸内での合戦が描かれているとのこと。できればそちらも拝見してみたかったです。

『平家物語』の読み本系のルーツ本のひとつ、「長門本」や、平家納経の流出物の一部である「厳島切(無量義経断簡)」など貴重な作品も展示されています。今年、東京国立近代美術館で開催された『吉川霊華展』で引き合いに出されていた復古大和絵の絵師・冷泉為恭の作品も展示されていました。

大河ドラマの『平清盛』もいよいよ終末に向けてラストスパートです。ドラマの予習・復習にもちょうど良い企画展ですので、是非この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。扇面画に描かれている絵は少し小さめで細密なので、単眼鏡などがあるとより楽しめると思います。


【平家物語画帖-諸行無常のミニアチュール】
2012年10月21日(日)まで
根津美術館にて

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