2012/04/29

蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち

すっかりアップが遅くなってしましました。もうかれこれ2週間前ですが、千葉市美術館で開催中の『蕭白ショック!! 曽我蕭白と京の画家たち』(前期展示)に行ってきました。

蕭白の傑作の数々がこぞって来日している東京国立博物館の『ボストン美術館 日本美術の至宝』展、そしてこの蕭白展。蕭白単独の展覧会は2005年に京都国立博物館でありましたが、首都圏で開催されるのは1998年以来とのこと。本展が『ボストン美術館展』にぶつけてきた企画なのかどうか知りませんが、蕭白の全貌を知るにはこれ以上の機会はありません。これだけ多くの蕭白の作品を、同じ時期に同じ首都圏で観られるなんて、今後二度とないんじゃないでしょうか。そのぐらい凄いことが今起きています。

伊藤若冲や長沢芦雪らとともに“奇想の絵師”として紹介される曽我蕭白。その奇矯な画風やアクの強さばかりに目が行きがちですが、その水墨画技法は実に正統で、時に荒唐無稽ですらあるその作品が非常に卓越した技量とズバ抜けた描写能力に支えられたものであることがよく分かる展覧会です。

展覧会の構成は以下の通りです。
第一章 蕭白前史
第二章第一部 曾我蕭白-蕭白出現-
第二章第二部 曾我蕭白-蕭白高揚-
第二章第三部 曾我蕭白-蕭白円熟-
第三章 京の画家たち

まず第一章では、蕭白に先駆けて復古的かつ個性的な傾向を示した画家を紹介しています。蕭白は曽我派の画系にあるわけではなく、単にその継承者を自負し曽我姓を名乗っているだけで、実際には雪舟の流れを組む雲谷派に学んだともいわれています。ここでは蕭白が師事したとされる高田敬輔の作品や蕭白が影響を受けたという唐画などを展示。蕭白の特異な画風の背景を推察することができます。

曽我蕭白「柳下鬼女図屏風」
東京藝術大学蔵(※4/30まで展示)

つづく第二章は、3つのパートに分け、蕭白の作品を年代順に追っています。東京国立博物館で開催中の『ボストン美術館展』では、制作時期を確定できる蕭白の最古の作品「龐居士・霊昭女図屏風」が展示されていますが、「龐居士・霊昭女図屏風」と同じく、蕭白が伊勢を行脚したときに描かれた初期作品がいくつか展示されています。「柳下鬼女図屏風」は「龐居士・霊昭女図屏風」と同時期か少し前に描かれた作品とされ、鬼女のただならぬ形相と妖気が観る者に強烈なインパクトを与える初期の代表作です。

曽我蕭白「林和靖図屏風」(右隻)
三重県立美術館蔵(※4/30まで展示)

「林和靖図屏風」は蕭白の初期の基準作とされる重要作品の一つ。右隻は大きくうねった大樹と真ん中にちょこんと座る疲れ切った表情の林和靖という大胆かつ奇抜な構図なのに対し、左隻は余白を大きく取り、月に鶴という極端にシンプルなのが面白いところ。「第一部 蕭白出現」ではほかに、“レレレのおじさん”と解説されていた「寒山拾得図屏風」(4/30まで展示)や蝶に怯える獅子といじけた虎という“草食系”の「獅子虎図屏風」 (5/6まで展示)が印象的でした。5/8からは代わって蕭白の代表作のひとつ「寒山拾得図」(重要文化財)が展示されます。

曽我蕭白「鷹図」
香雪美術館蔵(※4/30まで展示)

曽我派は鷙鳥図(鷲や鷹などの猛禽を主題にした作品)を得意としたとされ、蕭白も曽我派を語るだけあり、優れた鷙鳥図が多くあります。『ボストン美術館展』にも蕭白の鷙鳥図が展示されていましたが、本展でも猿を襲う獰猛な2羽の鷲を描いた「鷲図屏風」(5/6まで展示)や12枚の鷹の絵からなる「鷹図押絵貼屏風」(前期:右隻/後期:左隻)などが展示されていました。上の「鷹図」は珍しく着色されたもので、猛禽の猛々しい場面が多い鷙鳥図の中でも、色とりどりに草花が咲き誇り、美しさに目が行く異色の作品です。

曽我蕭白「雪山童子図」
三重 継松寺蔵(※5/6まで展示)

蕭白は水墨画に、効果を狙って部分的に着色や金泥を使うことはよくありますが、着色画自体は比較的少なく、「雪山童子図」はその代表作の一つに数えられています。鬼をからかうような童子と意表を突かれた鬼。表情のユニークさ、色の美しさと毒々しさが蕭白らしい一枚です。

曽我蕭白「竹林七賢図襖」(部分) 重要文化財
三重県立美術館蔵(※全期間展示)

「第二部 蕭白高揚」の目玉はなんといっても、旧永島家の襖絵が展示されたコーナー。広いスペースの周りを囲むように襖絵が飾られている様は永島家の広間にいるような錯覚さえ覚えます。永島家は伊勢の豪農で、7作品44面の襖絵が現存しています。画題も山水図、人物図、花鳥図、禽獣図、鷙鳥図と多岐に渡っています。2004年から6年をかけて修復作業が行われ、本展が修復後初公開だそうで、前後期に分かれますが、全7作品が出展。「竹林七賢図襖」のみ全期間展示されています。

 曽我蕭白「群仙図屏風」(右隻) 重要文化財
文化庁蔵(※5/2から展示)

「第二部 蕭白高揚」では、5/2から蕭白の最高傑作のひとつ「群仙図屏風」が、5/8からは松園の「焔」に影響を与えたとされる「美人図」、「獅子虎図屏風」(前期展示)とは対照的な豪壮な「唐獅子図」(5/8から展示)などが展示されます。

曽我蕭白「虎渓三笑図」
千葉市美術館蔵(※全期間展示)

「第三部 蕭白円熟」ではその名の通り、熟達の域に達した蕭白の水墨画の数々を堪能できます。伊勢や播州の遊歴を経て、京都に腰を落ち着けてからの晩年の蕭白の水墨技術の高さは目を見張るものがあります。「虎渓三笑図」は硬質な筆致と密度の高さが圧倒的な傑作。ほかにも、 蕭白らしさを集約したような「仙人図屏風」(4/30まで展示)、濃墨と淡墨の使い分けが見事な「滝山水図」 (4/30まで展示)、楷体山水と行体山水が混在した最晩年の「瀟湘八景図屏風」(5/6まで展示)などが展示されています。

曽我蕭白「楼閣山水図(月夜山水図)屏風」(右隻) 重要文化財
滋賀 近江神宮(※5/8から展示)

後期展示では、晩年の山水図の代表作「楼閣山水図(月夜山水図)屏風」や速筆で描かれた「達磨図」(5/2から展示)、流麗な筆致が美しい「山水図押絵貼屏風」(5/2から展示)などが展示されます。

最後の第三章では「京の画家たち」とし、伊藤若冲や池大雅、円山応挙といった同時代の絵師の作品を紹介。当時の京画壇の濃さにあらためた驚かされます。


【蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち】
2012年5月20日(日)まで
千葉市美術館にて


もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)もっと知りたい曾我蕭白―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)









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