2013/08/11

アンドレアス・グルスキー展

国立新美術館で開催中の『アンドレアス・グルスキー展』に行ってきました。

ドイツの現代写真を代表する写真家、グルスキーの日本初の個展だそうです。

グルスキーというと、いま最も高額の値段がつく写真家といわれています。本展は、グルスキー自身が厳選した代表作65点が展示されていて、そのパノラマのスケール感といい、デザイン的な、色彩的な面白さといい、無機質でミニマルな構成といい、切り口の斬新さといい、とてもインパクトのある展覧会でした。

多くの作品が 3m×2m といった大型の作品で、中には横5mを超えるような巨大な作品もありました。時にデジタル信号のような、時に抽象絵画のような、時にだまし絵のような、不思議な錯覚にも陥ってしまう、どこかケレン味のあるユニークな作品が並びます。

アンドレアス・グルスキー 「ベーリッツ」 2007年

アンドレアス・グルスキー 「ライン川 Ⅱ」 1999年

遠目には横線が並んでいるだけのようなのに、平行な線の集まりのようなのに、近くで見るとそれが畑だったとか、実は川だったとか、その驚きと面白さに思わず引き込まれてしまいます。

ただ日常的な風景を切り取ったとか、俯瞰で撮ったとか、広角で撮ったとか、自然なスナップではなく、かなりデジタル処理もされているようで、衛星写真を使ったり、恐らく合成していると思わるような作品も見られます。この「ライン川 Ⅱ」も実は対岸の建造物などをデジタル技術で消し去っているのだそうです。

アンドレアス・グルスキー 「99セント」 2007年

日本でいうところの100円ショップや、ブランド靴やスニーカーの陳列棚、また証券取引所やオフィスビルなど、消費社会を象徴的に写し出した作品も多く、現代社会的な、シニカルな一面も覗かせます。

現実のものなのに非現実的に思えたり、日常的なのに崇高に思えたり、たとえ汚いバンコクの淀んだ水面さえ美しいデザインに思えます。リズミカルというか、ループ的というか、密度の濃さは時に息苦しいほどに圧倒的なのに、そのイメージには心地よささえ感じます。展覧会のメインビジュアルに使われている「カミオカンデ」はなにかSFの世界というより最早宗教的な印象さえ受けます。

アンドレアス・グルスキー 「図書館」 1999年

アンドレアス・グルスキー 「F1ピットストップ Ⅳ」 2007年

大判のプリントの写真のディテールといい、そのシャープさといい、吸い込まれてしまいそうなほどで、細部まで見てみたい楽しさがあるのですが、あまり写真に近づきすぎると警告音が鳴る設定になっていて、会場のあちらこちらでピピピピピーと警告音が鳴っていました(笑)

写真のクリアーさがとても印象的だったのですが、プリントの表面に特殊なアクリルを貼る写真加工法が用いられているのだそうです。これは写真集(もちろん図録も)では決して味わうことのできない、写真プリントならではの視覚的“感触”です。

アンドレアス・グルスキー 「ピョンヤン Ⅰ」 2007年

『アメリカン・ポップ・アート展』に来たついでに観ていこうといったつもりで覗いた展覧会だったのですが、ふたを開けたらその面白さに、結局『アメリカン・ポップ・アート展』に要した時間の2倍の時間も使って観ていました。会場の展示構成もグルスキーが考えたもののようで、出展作品リストの順番と大きく異なっていますが、出展作品リストには簡単な解説も書かれているので、ときどき照らし合わせながら観ると良いと思います。オススメの展覧会です。


【アンドレアス・グルスキー展】
2013年9月16日(月)まで
国立新美術館にて


美術手帖 2012年 08月号 [雑誌]美術手帖 2012年 08月号 [雑誌]


Andreas Gursky: Werke/ Works 80-08Andreas Gursky: Werke/ Works 80-08


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