2013/02/13

新春の国宝那智瀧図 仏教説話画の名品とともに

根津美術館で開催の『新春の国宝那智瀧図』展に行ってきました。

根津美術館所蔵の国宝「那智瀧図」が公開されるのは、3年前の根津美術館のリニューアルオープン記念展以来のこと。先日のNHK Eテレで放映された『日曜美術館』の特集『杉本博司 × 那智瀧図』を見て、久しぶりに「那智瀧図」を見たくなったのですが、なかなか時間が思うように作れず、ようやく最終日に駆け込みで観て参りました。

まず、第1室には、サブタイトルにもある“仏教説話”にまつわる作品が展示されています。ここでは4つのテーマに分けられていました。

「仏教説話画のはじまり 本生図と仏伝図」
「テーマの広がり 釈迦から羅漢まで」
「教化と勧進の絵画 巻子本と掛幅装」
「神聖化される伝記 聖徳太子と弘法大師」

釈迦や羅漢、祖師や聖徳太子などの絵伝、またお寺の縁起絵。もともとが仏教を広め、諭す手段として使われたものなので、その絵ひとつひとつに意味があり、また丁寧な解説パネルも手伝って、非常に分かりやすく楽しめました。

吉山明兆 「羅漢図」 (重要文化財)
南北朝時代 14世紀  根津美術館蔵

今回の展示で印象的だったのが、明兆の「羅漢図」。南北朝時代のものだそうですが、非常に色が鮮やかで保存状態がいいのに驚きました。もともとは京都・東福寺伝来の「五百羅漢図」の50幅連作のもので、そのうちの2幅が現在根津美術館所蔵になっているようです。中国から伝わった「五百羅漢図」を原本とした日本での最初期の羅漢図として貴重なものということです。人物描写や色の感じが増上寺所蔵の狩野一信の「五百羅漢図」を思わせ、もしかしたらこの作品の影響を受けているのかもしれないなと思いました。

「善光寺縁起絵」(3幅のうち) (重要文化財)
鎌倉時代 13~14世紀  根津美術館蔵

「善光寺縁起絵」は3幅からなり、三国伝来の霊像と伝えられる長野・善光寺の本尊・阿弥陀三尊像がどのようにして善光寺に辿り着いたのかを絵解きした縁起絵です。一幅目はお釈迦様の時代の天竺から百済へ阿弥陀三尊が渡来するまでを描き、二幅目は大和朝廷での崇仏廃仏の受難と聖徳太子による守屋征伐を、中央に飾られた三幅目では善光寺草創を描いています(上の写真は第三幅)。

そのほかにも、釈迦の前世での善行と現世で悟りを開くまでの物語の絵と経文を上下段に描いた「絵過去現在因果経」(重要文化財)や参詣するとどのような悪趣から救済されるかを描いた「矢田地蔵縁起絵巻」、聖徳太子伝説を描いた「聖徳太子絵伝」などが展示されていました。

「那智瀧図」(国宝)
鎌倉時代 13~14世紀  根津美術館蔵

第2室は「那智瀧図」だけが展示され、ゆったりとした空間の中で落ち着いて拝見することができました。

「那智瀧図」は縦160cmの絹本で、神体である瀧を描いた唯一の垂迹画とされています。一見、日本の伝統的な仏画の手法で描かれているように見えますが、中国の宗・元の水墨画の影響も指摘されているそうです。今は退色し、全体的にやや茶色がかっていますが、かつては岩肌の金泥や針葉樹の緑や紅葉が豊かな色調だったとのこと。それでも瀧の白さは眩いばかりに神々しく、崇高さが失われていないのに驚きます。山の右手上には丸い月が、滝の下部には杉が屋根を貫く拝殿や亀山上皇参詣の碑とされる卒塔婆があるのがかすかに分かります。

「那智瀧図」の展示はまた数年後のことかもしれませんが、公開の際には是非お見逃しなく。


【コレクション展 新春の国宝那智瀧図 仏教説話画の名品とともに】
2013年1月9日~2月11日まで(会期終了)
根津美術館にて

やまと絵 (別冊太陽 日本のこころ)やまと絵 (別冊太陽 日本のこころ)

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