今年も最後の1日。
あれよあれよという間に大晦日ですね。
今年は(も)休日に時間が十分取れなくて、展覧会に十分に回れなかったのが残念でした。仕事のこと、家族のこと、いろいろありますし、映画だって観たいし、芝居だって観たいし、本だって読みたいし、年々時間を捻出するのが難しくなるばかり。
さて、拙ブログの今年のエントリーは展覧会の感想のみで38本で、一番エントリーが多かった年の半分と言っていた昨年よりさらに少なくなってしまいました。展覧会の記事は会期が終わるまでに書こうとは思ってるのですが、結局書けずじまいものも多く…。
思うように展覧会に行けなかったのと、結構評判の良い展覧会を見逃がしていて、今年の展覧会ベスト10は全然参考にならないんじゃないかなと思います。そもそも観た分母が少ないこともあってか、ダントツでこれ!といった展覧会もそれほどなく、正直ベスト5以下はかなり迷いました。
とはいえ、今年は大好きな近世初期風俗画と、ここ数年高い関心を持っている京都画壇の作品を観る機会に恵まれ、特に近代京都画壇に連なる呉春の作品に多く触れられたのが個人的には最大の収穫でした。あまり展覧会を回ることができなかったものの、日本美術だけでなく、西洋美術や現代アート、やきものなど、自分が興味を持ったものが優先ではありますが、バランス良く観られたのがせめても救いかなと思います。
で、2019年のベスト10はこんな感じです。
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1位 『遊びの流儀 遊楽図の系譜』(サントリー美術館)
近世初期風俗画の展覧会は特に珍しくありませんが、本展がユニークだったのは、遊楽図に描かれた碁盤や双六、カルタなどが一緒に展示され、遊楽図の展開だけでなく、当時の人々の娯楽やファッションなど風俗が絵画の世界を超えてリアルに伝わってきたこと。遊楽図そのものも名品がずらりと並び、その充実感たるや今年一番だったと思います。これまで縁がなかった「松浦屏風」や「相応寺屏風」、「伝本多平八郎姿絵屏風」など近世初期風俗画の傑作に出会えたことも嬉しかったです。年末に大和文華館で観た『国宝彦根屏風と国宝松浦屏風 遊宴と雅会の美』では本展に出展されなかった「彦根屏風」を久しぶりに観ることもでき、『遊びの流儀』で若干不足していた部分も補って余りあるものがありました。近世初期風俗画ファンとしては大満足の一年でした。
2位 『円山応挙から近代京都画壇へ』(東京藝術大学大学美術館)
近代京都画壇がここ数年のマイブーム(古っw)なのですが、その中心となる円山四条派の祖・応挙と呉春から連なる近代京都画壇への流れをここまで大規模に、しかも東京で取り上げてくれたことにまず感動しました。応挙は見慣れてることもあり特段驚くことはないのですが、大乗寺障壁画の空間再現展示は見応え十分で、応挙門下や幕末から明治にかけての京都画壇が思いの外充実していて素晴らしいものがありました。円山派は円山派の、四条派は四条派のそれぞれの良さも分かり、近代になり両派が渾然一体となり京都画壇を創り上げていく様も見て取れました。
3位 『大竹伸朗 ビル景 1978-2019』(水戸芸術館現代美術ギャラリー)
『ビル景』が40年続いていることが何より驚きで、時に心象風景を具現化するように、時に体の内側から溢れる思いをぶつけるように、時に何かに取り憑かれたように、画面を縦横無尽に走る線や色や形を見てると、大竹伸朗にとって『ビル景』とは、旺盛な制作活動の中で何かに立ち返るための基点的な意味もあるんだろうなと感じたりもしました。何より500点余りという作品はどれも刺激的で、シビれるぐらいかっこよくて、ただただ圧倒されました。
4位 『岡上淑子 沈黙の奇蹟』(東京都庭園美術館)
何年も前から気になっていた岡上淑子の作品にやっと出会えた喜びというんでしょうか、その喜びが期待を超えるぐらいに衝撃的でした。とてもファッショナブルでエレガントで良い意味でクラシカル。超現実的でありながらも、どこか女性の空想や願望がイメージ化されたようなところがあり、そのシュールで洗練された不思議な世界に目を奪われました。旧朝香宮邸のクラシカルな空間も相まって、岡上淑子の魅惑的な夢物語の舞台に迷い込んだような気分になりました。
5位 『画家「呉春」 − 池田で復活(リボーン)!』(逸翁美術館)
春に『四条派のへの道 呉春を中心として』を観て、夏に『円山応挙から近代京都画壇へ』を観て、秋に『桃源郷展 − 蕪村・呉春が夢みたもの』を観て、その他にも呉春の作品を観る機会が多く、今までこんなに呉春に触れたことがあっただろうかというぐらい今年は呉春づいていました。その決定版がこの『ゴシュン展』だったと思います。展示は呉春の池田時代が中心でしたが、作品の充実度は申し分なく、相次ぐ近親者の死や、師・蕪村や池田の人々との交流も語られ、呉春がどういう思いで池田で過ごしたのかも伝わってくる構成がまた素晴らしかったです。
6位 『茶の湯の銘碗 高麗茶碗』(三井記念美術館)
今年のベスト10で、唯一記事にできていないのですが、今年いくつか観たやきものの展覧会の中では『高麗茶碗展』が一番印象に残っています。高麗茶碗の佇まいの渋さ、侘びた景色が好きなのですが、高麗茶碗と偏に言っても結構さまざまなタイプのものがあって、でもそれぞれに惹かれるものがあり、あらためて自分の好みであることを確信しましたし、高麗茶碗の奥深さに心打たれました。
7位 『奇想の系譜展』(東京都美術館)
まさに江戸絵画の奇想オールスータズ大集合。又兵衛、山雪、若冲、蕭白、芦雪、国芳などの過去の展覧会の集大成であり、ダイジェストであり、辻惟雄氏の『奇想の系譜』に強い影響を受けた身としては夢のような企画展でした。今は目が慣れて奇想を奇想と思わなくなっているところもありますが、江戸絵画の中でいかに彼らが異質だったかをあらためて考えるいい機会になったと思います。
8位 『江戸の園芸熱』(たばこと塩の博物館)
タイトルが園芸「熱」なのがミソで、武家から庶民まで江戸時代の園芸ブームの盛り上がりぶりが浮世絵を通してとてもよく伝わってきましたし、園芸が江戸の人々の身近にあったことも分かり興味深いものがありました。美人画でもなく、役者絵でもなく、名所絵でもなく、あくまでも主役は園芸絵。これまでに見ないタイプの浮世絵も多く、美人画や名所絵だけを観て、江戸の文化や風俗を知ったつもりになっていてはダメだなとも思ったりしました。
9位 『原三溪の美術』(横浜美術館)
日本美術の展覧会を回っていると、「原三溪旧蔵」という文字を目にすることがありますが、いまは散逸し各地の美術館や個人コレクターの手に渡った「原三溪旧蔵」のコレクションが一堂に集まり、これもあれも原三溪が持っていたのかとその審美眼の確かさと趣味の良さに驚くばかりでした。三溪はコレクション公開のための美術館の建設を夢見ていたということを本展で知ったのですが、三溪生誕150年・没後80年という年に、ゆかりの深い横浜の地でこうして展覧会が開かれたこともとても意義深かったと思います。
10位 『塩田千春展 魂がふるえる』(森美術館)
アート作品を観ていて息苦しくなるとか、精神的なものに圧倒されるという経験はそうあるものではありません。塩田千春のこの展覧会は、どの作品からも命の叫びというか、魂も肉体もばらばらになるのを感じながら、制作に打ち込んできたのだろうことが強く伝わってきて、作品の前に立つたびにドーンと来るものがありました。なんだか凄いものを観た感という意味では今年一番のインパクトでした。
10位で迷ったのが埼玉県立歴史と民俗の博物館の『東国の地獄極楽』。関東を中心とした浄土宗の広がりや浄土信仰について詳しく、地味ながらもなかなか収穫の多い展覧会でした。今年も関西に遠征し、いくつか展覧会を観ましたが、京都国立博物館で観た『佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』も今後これだけまとめて佐竹本を観られるかと思うとベスト10に入れておきたかったところです。
今年は観た展覧会は少なかった分、ブログに記事にした展覧会はいずれも推しの展覧会ばかりで、つまらなかったものは一つもないのですが、ベスト10に入れられなかったものの強く印象に残った展覧会としては、『創作版画の系譜』、『へそまがり日本美術』、『国宝 一遍聖絵と時宗の名宝』、『大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋』、『学んで伝える絵画のかきかた』、『松方コレクション展』、『山口蓬春展』、『岸田劉生展』あたりでしょうか。現代アートでは『バスキア展』も楽しかったですね。展覧会とはいえないかもしれませんが、神保町の古書店で観た『奈良絵本を見る!』は観られてとても良かったと思います(第二弾に行けなかったのが残念ですが)。
記事としては書けていませんが、日本美術では『ラスト・ウキヨエ』、西洋美術では『ギュスターヴ・モロー展』や『クリムト展』、『ウィーン・モダン展』、『ルート・ブリュック展』、『メスキータ展』、『コートルード美術館展』もとても印象的でした。
残念ながら結局行けずじまいだった『顔真卿』、『ジョゼフ・コーネル展』や『世紀末ウィーンのグラフィック展』、『キスリング展』、地方で遠征できなかったのですが、『月僊展』、 『増山雪斎展』、『山元春挙展』、『驚異と怪異』あたりは観ておきたかったなと思います。
ちなみに今年アップした展覧会の記事で拙サイトへのアクセス数は以下の通りです。
1位 奇想の系譜展
2位 創作版画の系譜
3位 河鍋暁斎 その手に描けぬものなし
4位 岡上淑子 沈黙の奇蹟
5位 原三溪の美術
6位 はじめての古美術鑑賞 絵画のテーマ
7位 四条派のへの道 呉春を中心として
8位 桃源郷展
9位 大徳寺龍光院 国宝曜変天目と破草鞋
10位 尾形光琳の燕子花図
このブログも今年でちょうど10年を迎えました。このブログの前にやっていた映画のホームページ時代から入れると、なんと20年もちまちまつまらないことを書いていたんですね。。。ちょうど切りも良いので今年でブログを一旦クローズしようと思います。どうしても記事にしたいという展覧会が出てきたり、思い出したように書き出したりするかもしれませんが、また時間が作れるようになって再オープンできる時までしばらくお休みするつもりです。10年間、こんな拙いサイトにも関わらず、足をお運びいただきありがとうございました。
【参考】
2018年 展覧会ベスト10
2017年 展覧会ベスト10
2016年 展覧会ベスト10
2015年 展覧会ベスト10
2014年 展覧会ベスト10
2013年 展覧会ベスト10
2012年 展覧会ベスト10
日経おとなのOFF 2020年 絶対に見逃せない美術展(日経トレンディ2020年1月号増刊)
美術展ぴあ2020 (ぴあ MOOK)
2019/12/31
2019/12/08
窓展:窓をめぐるアートと建築の旅
東京国立近代美術館で開催中の『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』を観てきました。
その人の人生や暮らし、時代…。窓にインスパイアされて制作された作品…。そうした窓を通して見えるいくつもの風景を、さまざまな切り口で紹介する企画展です。
「『窓学』を主宰する一般財団法人 窓研究所とタッグを組んで行われるこの展覧会」、 窓研究所とはなんぞやと思って調べたら、なるほど「窓のあるくらし」のコピーで有名なYKK APが設立した団体なんですね。なんでいきなり窓なんだろうと不思議に思ってました。
絵画や写真、サイレント映画や実験映像、インスタレーションや建築物などジャンルを超えた作品が‟窓”をテーマに14の章に分けて展示されています。開幕早々に観たのですが、展示作品は幅広く、特定のカテゴリーにターゲットを絞ったというわけでもないのですが、若い方も結構多く、みんな思い思いに作品を見入っているのが印象的でした。
美術館の前庭に何やら見知らぬ建物が。これも『窓展』の展示のひとつ。建築家・藤本壮介の窓の新しい概念を提示したインスタレーションだそうです。部屋?の中に木が立っていて、ここは中なのか外なのか中庭なのか。いろいろ想像が膨らみます。行った日は天気が悪くて、写真がいまいち映えなかったのが残念。
会場に入ると、壁一面にバスター・キートンの映画『キートンの蒸気船』が映し出されてます。家の外壁が倒れてきたと思ったら、家の前に立ってる人はうまいこと窓の枠の中にすっぽりはまって命拾いするという、まるでドリフのギャグ。
印象的だったのが、ニューヨークのアパートの窓から通りを見やる人々を捉えた郷津雅夫の写真。黒人や移民と思しき人々、老人や子どもたちが窓辺に集まって外を眺めています(パレードの様子を眺めてるとか)。下町のアパートに暮らす、決して裕福とはいえない人々のドラマが浮かび上がってくるようです。
ガラス技術が発展し、ショーウィンドウが都市に普及したのが19世紀だといいます。ショーウィンドウのマネキンや商品を眺める人々は写真の恰好の被写体になります。面白かったのがドアノーの写真で、ショーウィンドウに飾られた女性の裸婦像を観て驚く老婦人やじっと見つめる男性などが、まるで隠しカメラのように写されています。
途中、建築や絵画における‟窓”の歴史が12mぐらいの長い年表で紹介されています。ヨーロッパの絵画に窓が登場するようになるのは約600年ぐらい前からになるそうですが、年表はそれこそ古代の窓と美術に関することから記されていて、窓の技術や歴史的な出来事にまで触れられていて、結構見入ってしまいます。
絵画は20世紀以降の作品が展示されています。ボナールやマティスといったポスト印象派から、ロスコやリヒター、キルヒナー、アルバース、リキテンシュタイン、デュシャンといった現代美術まで。ロスコ(福岡市美術館の所蔵品)がとても良かったのですが、現代美術はほとんど撮影禁止でした。
現代美術になると、これは窓なのか?ただの枠ではないのか?とか、クレーでさえ窓との関係がちょっとこじつけ感があるのですが、ラインハートの「抽象絵画」まで来ると最早窓を感じ取ることさえ難しい……。
岸田劉生の「麗子肖像」があって、この作品と‟窓”に何の関係が?と思ったのですが、そばにあった解説に「『絵画=窓』とするなら、額縁は窓枠のようなもの」であり、この作品は「『額縁に入った麗子の肖像画』を描いた絵」とありました。一方で、麗子の背景に影が薄く落ちていることから、麗子が背景から浮かび上がり、だまし絵のような効果を劉生は狙ったのではないかと。10月に観た『岸田劉生展』では北方ルネサンスの影響、特にデューラーについて触れられていましたが、本展ではクラナッハが取り上げられていました。
つづいて奈良原一高。代表作『王国』から12点が展示されています。『王国』は修道院と女子刑務所をという外部から隔絶された空間に生きる人々を写した作品。かれこれ5年前に同じ東近美で『王国』の特集展示があり、とても感動して写真集を買ったほどなのですが、今回はその中から窓が印象的な作品を選んで展示しているようです。
《TINTIN》が東京国立近代美術館に所蔵されているとは。今の時代なら「絶対マネしないように」って注意書きがありそうなシーン(笑)
ピンホールカメラの手法を用いた山中信夫の「ピンホール・ルーム」シリーズが一区画に3点ほど展示されていて、個人的にはとても好みでした。
後半にはいろいろユニークなインスタレーションがあったり、懐かしいリプチンスキーの映像があったりして飽きません。この日は用事があって、1時間ぐらいしかいられなかったのですが、ほんとならもっと時間を取って見たかったなと思います。
【窓展:窓をめぐるアートと建築の旅】
2020年2月2日(日)まで
東京国立近代美術館にて
窓展: 窓をめぐるアートと建築の旅
その人の人生や暮らし、時代…。窓にインスパイアされて制作された作品…。そうした窓を通して見えるいくつもの風景を、さまざまな切り口で紹介する企画展です。
「『窓学』を主宰する一般財団法人 窓研究所とタッグを組んで行われるこの展覧会」、 窓研究所とはなんぞやと思って調べたら、なるほど「窓のあるくらし」のコピーで有名なYKK APが設立した団体なんですね。なんでいきなり窓なんだろうと不思議に思ってました。
絵画や写真、サイレント映画や実験映像、インスタレーションや建築物などジャンルを超えた作品が‟窓”をテーマに14の章に分けて展示されています。開幕早々に観たのですが、展示作品は幅広く、特定のカテゴリーにターゲットを絞ったというわけでもないのですが、若い方も結構多く、みんな思い思いに作品を見入っているのが印象的でした。
藤本壮介 「窓の住む家/窓のない家」 2019
美術館の前庭に何やら見知らぬ建物が。これも『窓展』の展示のひとつ。建築家・藤本壮介の窓の新しい概念を提示したインスタレーションだそうです。部屋?の中に木が立っていて、ここは中なのか外なのか中庭なのか。いろいろ想像が膨らみます。行った日は天気が悪くて、写真がいまいち映えなかったのが残念。
会場に入ると、壁一面にバスター・キートンの映画『キートンの蒸気船』が映し出されてます。家の外壁が倒れてきたと思ったら、家の前に立ってる人はうまいこと窓の枠の中にすっぽりはまって命拾いするという、まるでドリフのギャグ。
郷津雅夫 「《Window》より」 1972−1990 個人蔵
印象的だったのが、ニューヨークのアパートの窓から通りを見やる人々を捉えた郷津雅夫の写真。黒人や移民と思しき人々、老人や子どもたちが窓辺に集まって外を眺めています(パレードの様子を眺めてるとか)。下町のアパートに暮らす、決して裕福とはいえない人々のドラマが浮かび上がってくるようです。
ロベール・ドアノー 「《ヴィトリーヌ、ギャルリー・ロミ、パリ》より」
1948 東京都写真美術館蔵
1948 東京都写真美術館蔵
ガラス技術が発展し、ショーウィンドウが都市に普及したのが19世紀だといいます。ショーウィンドウのマネキンや商品を眺める人々は写真の恰好の被写体になります。面白かったのがドアノーの写真で、ショーウィンドウに飾られた女性の裸婦像を観て驚く老婦人やじっと見つめる男性などが、まるで隠しカメラのように写されています。
途中、建築や絵画における‟窓”の歴史が12mぐらいの長い年表で紹介されています。ヨーロッパの絵画に窓が登場するようになるのは約600年ぐらい前からになるそうですが、年表はそれこそ古代の窓と美術に関することから記されていて、窓の技術や歴史的な出来事にまで触れられていて、結構見入ってしまいます。
ピエール・ボナール 「静物、開いた窓、トルーヴィル」
1934 アサヒビール大山崎山荘美術館蔵
1934 アサヒビール大山崎山荘美術館蔵
アンリ・マティス 「待つ」
1921−22 愛知県立美術館蔵
1921−22 愛知県立美術館蔵
絵画は20世紀以降の作品が展示されています。ボナールやマティスといったポスト印象派から、ロスコやリヒター、キルヒナー、アルバース、リキテンシュタイン、デュシャンといった現代美術まで。ロスコ(福岡市美術館の所蔵品)がとても良かったのですが、現代美術はほとんど撮影禁止でした。
パウル・クレー 「花ひらく木をめぐる抽象」
1925 東京国立近代美術館蔵
1925 東京国立近代美術館蔵
アド・ラインハート 「抽象絵画」
1958 東京国立近代美術館蔵
1958 東京国立近代美術館蔵
現代美術になると、これは窓なのか?ただの枠ではないのか?とか、クレーでさえ窓との関係がちょっとこじつけ感があるのですが、ラインハートの「抽象絵画」まで来ると最早窓を感じ取ることさえ難しい……。
岸田劉生 「麗子肖像(麗子五歳之像)」
1918 東京国立近代美術館蔵
1918 東京国立近代美術館蔵
岸田劉生の「麗子肖像」があって、この作品と‟窓”に何の関係が?と思ったのですが、そばにあった解説に「『絵画=窓』とするなら、額縁は窓枠のようなもの」であり、この作品は「『額縁に入った麗子の肖像画』を描いた絵」とありました。一方で、麗子の背景に影が薄く落ちていることから、麗子が背景から浮かび上がり、だまし絵のような効果を劉生は狙ったのではないかと。10月に観た『岸田劉生展』では北方ルネサンスの影響、特にデューラーについて触れられていましたが、本展ではクラナッハが取り上げられていました。
奈良原一高 「《王国》より 沈黙の園」
東京国立近代美術館蔵
東京国立近代美術館蔵
つづいて奈良原一高。代表作『王国』から12点が展示されています。『王国』は修道院と女子刑務所をという外部から隔絶された空間に生きる人々を写した作品。かれこれ5年前に同じ東近美で『王国』の特集展示があり、とても感動して写真集を買ったほどなのですが、今回はその中から窓が印象的な作品を選んで展示しているようです。
エルジュ 「《タンタン アメリカへ》より No.19」
1931 東京国立近代美術館蔵
1931 東京国立近代美術館蔵
《TINTIN》が東京国立近代美術館に所蔵されているとは。今の時代なら「絶対マネしないように」って注意書きがありそうなシーン(笑)
山中信夫 「ピンホール・ルーム2」
1973 東京国立近代美術館蔵
1973 東京国立近代美術館蔵
ピンホールカメラの手法を用いた山中信夫の「ピンホール・ルーム」シリーズが一区画に3点ほど展示されていて、個人的にはとても好みでした。
後半にはいろいろユニークなインスタレーションがあったり、懐かしいリプチンスキーの映像があったりして飽きません。この日は用事があって、1時間ぐらいしかいられなかったのですが、ほんとならもっと時間を取って見たかったなと思います。
ゲルハルト・リヒター 「8枚のガラス」
2012 ワコウ・ワークス・オブ・アート蔵
2012 ワコウ・ワークス・オブ・アート蔵
【窓展:窓をめぐるアートと建築の旅】
2020年2月2日(日)まで
東京国立近代美術館にて
窓展: 窓をめぐるアートと建築の旅