2019/01/25

奈良絵本を見る!

神保町の八木書店古書部で開催中の『奈良絵本を見る!』を観てきました。

八木書店は神保町の古書街にある古書店の老舗。近代日本文学や古文書などの取り扱いに定評があります。3階にある催事用のスペースに個人コレクションを中心とした奈良絵本や絵巻が30点ほど展示されていました。

奈良絵本とは、室町時代後期から江戸時代中期にかけて作られた絵入りの冊子本のこと。御伽草子を題材にした素朴なタッチの作品は庶民に広く普及したといいますが、中には嫁入り本として金銀泥を用いた極彩色の豪華な作品もあります。

これまでも『お伽草子展』(サントリー美術館)や『つきしま かるかや』(日本民藝館)、『神仏・異類・人』(國學院大學博物館 )など奈良絵本が取り上げられた展覧会を何度か観ていますが、一度にこれだけの数を観たのは初めてかも。8畳ぐらいの狭いスペースなので、美術館のようにはもちろんいきませんが、書店のショーケースに奈良絵本がびっしりと並んだ様はマニア心をくすぐります。

「一寸法師(断簡)」 寛文頃

「浦島太郎(断簡)」 元禄頃

お伽草子といったら、定番の「一寸法師」に「浦島太郎」。素朴な絵がじわじわきます。でも、よくある稚拙な絵というのがないんですよね。みんなそれなりに線や表現がしっかりしていて、素朴なりにも巧い。これはコレクターの方の好みなのでしょうか。

「七夕の本地」 寛文頃

「猫の草紙(断簡)」 寛文頃

「磯崎」 寛文頃

中にはいまの昔話ではあまり馴染みのない作品もありますが、会場では解説の書かれたミニ冊子がもらえるので、物語をよく知らないお伽草子もミニ冊子を読みながら鑑賞できます。「猫の草子」がかわいい。

「玉水」 元禄頃

今年のセンター試験の古文の問題に取り上げられたことで話題になった『玉水物語』もありましたよ。狐さん。

「山中常盤」 寛文頃

岩佐又兵衛の「山中常盤物語絵巻」も元は御伽草子と聞いてますが、奈良絵本の「山中常盤」は初めて観ました。あんな描写やこんな描写は奈良絵本ではどう描かれているのでしょうか。。。

[写真上] 「八幡縁起絵巻(断簡)」 天正期以前
[写真下] 「堀江物語(断簡)」 寛永頃

「堀江物語」も岩佐又兵衛の絵巻以外で観たのは初めてかも。

「木曽御嶽の本地」 元禄頃

金泥や銀泥で装飾されたり、割と豪華なものもあります。「木曽御嶽の本地」は銀が黒変してますが、障壁画が金泥と銀泥を使い、とても丁寧に描かれています。こうしたものは大人向けだったんでしょうね。

「瓜子姫(断簡)」 元禄頃

近年は奈良絵本の研究も進み、作り手の特定もできるものもあるそうです。その中でも「居初つな」は日本で最初の女性絵本作家だったのではないかといわれているとか。会場には、居初つなが描いたとされる「瓜子姫」や「烏帽子折」、「鉢かづき」といった奈良絵本や歌仙絵があって、比べてみると、顔の表情(特に目鼻や口)や身体の形態の描き方に特徴があって、とても個性的です。

[写真左] 「瓜子姫」/[写真右] 「烏帽子折」

「鉢かづき」 元禄頃

居初つなについてはこちらのブログで詳しく取り上げられています。
http://yagiken.cocolog-nifty.com/yagiken_web_site/2013/03/post-a5a5.html

「酒呑童子」 寛文頃

もう一人、解説に名前があったのが「浅井了意」。仮名草子作家として活躍した人だそうで、会場には「酒呑童子」と「子易物語」の絵巻が2点展示されていました。こちらも比べてみると、人物の描き方に特徴がありますね。鬼なんて全く一緒。

[写真左] 「酒呑童子」/[写真右] 「子易物語」

[写真左] 「酒呑童子」/[写真右] 「子易物語」

会場にいた書店の方に伺ったところ、この「蓬莱山」も浅井了意の作といわれているとのことでした。

「蓬莱山」 寛文頃

観に行った同じ日に、日比谷で奈良絵本に関する講演会があったそうで、気が付いた時には既に満員で話を聞けなかったのがとても残念。もうちょっと早く知っていたら。。。

会場内はこんな感じです。


【奈良絵本を見る!】
2019年1月26日(土)まで
八木書店古書部3階にて


奈良絵本集〈1〉 (新天理図書館善本叢書)奈良絵本集〈1〉 (新天理図書館善本叢書)

0 件のコメント:

コメントを投稿