2015/02/02

RIMPA 岡田美術館所蔵 琳派名品展

会期が終了してしまいましたが、日本橋三越本店の『RIMPA 岡田美術館所蔵 琳派名品展』に行ってきました。

今年は琳派400年を記念しての琳派イヤー。琳派に関する美術展の開催や関連書籍の出版が相次いで予定されています。

その初っ端を飾るのが本展。2013年に箱根・小涌谷にオープンした岡田美術館から、琳派の所蔵名品が貸し出されています。

私はまだ箱根の岡田美術館には伺っていないのですが、岡田美術館といえば近世・近代の日本画や工芸品の充実したコレクションで知られる美術館。実業家の所蔵品を展示した私設美術館としては異例の規模と所蔵品の質の高さで、驚きをもって迎えられたのは記憶に新しいところです。

たぶん箱根の岡田美術館への宣伝を兼ねた展覧会だろう、会場もデパートの中だから貴重なものは出てこないだろう、と高をくくっていたら、それが大間違い。予想を超えるクオリティの高さに目がクラクラしてしまいました。


琳派以前 -町衆の台頭による美意識の変革-

まず琳派誕生前夜の絵画の潮流から入るのが面白い。ここでは長谷川派の作品を紹介していて、長谷川派が得意とした「浮草図屏風」や「柳橋水車図屏風」はその大胆な構図が琳派に通じるとしています。展示されている「柳橋水車図屏風」 は長谷川派の典型的な構図に基づいているものの、長谷川派の手によるものではないということですが、デザイン化された構図や金泥など贅沢な金の使い方が琳派との関連を強く感じさせます。


琳派の誕生 -日本美の系譜の礎-

次に登場するのが俵屋宗達、またその工房である伊年印の作品。『源氏物語』や『伊勢物語』に材を取った作品を通して本歌取りと琳派の関係に触れています。ただ本歌取りは琳派に限ったことでなく、やまと絵や狩野派など日本画ではフツーに観られますけどね。

俵屋宗達 「明石図 (源氏物語図屏風断簡)」
江戸時代初期・17世紀前半 岡田美術館蔵

光悦と宗達の作品もいくつか展示されていて、中でも白眉は完本の「花卉に蝶摺絵新古今集和歌巻」。今に残る光悦の書の巻物はほとんどが断簡で、巻物として完全な形で残っているのは4本しかないそうです。宗達がデザインした色変わりの綺麗な料紙の上に流麗で美しい光悦の書。うっとりするほどの逸品です。

下絵・俵屋宗達、書・本阿弥光悦 「花卉に蝶摺絵新古今集和歌巻」(一部)
桃山時代末期~江戸時代初期・17世紀初頭 岡田美術館蔵

宗達では押絵貼屏風を掛軸にしたものとされる水墨の「烏図」と「白鷺図」が状態も良く、まるで双幅の掛軸のように黒と白の対比で面白かったです。


琳派の興隆 -天才画工による黄金時代-

琳派黄金時代の天才画工といえば、もちろん光琳・乾山兄弟。ここでは光琳・乾山それぞれの絵画や、乾山の色絵皿や茶碗、光琳の蒔絵螺鈿箱などが充実しています。

尾形光琳 「菊図屏風」(右隻)
江戸時代前期・18世紀初頭 岡田美術館蔵

その中でチラシのメインヴィジュアルにもなっている「雪松群禽図屏風」は会場の解説でも、光琳の最も得意とする買いが世界であり、完成度の度の高い傑作とベタ褒め。岡田美術館の名誉館長岡田氏も相当思い入れのある作品のようです。

個人的にはその並びにあった6曲1双の「菊図屏風」に釘づけ。花びら一枚一枚を白の胡粉で丹念に盛り上げ、葉は緑と黒で描き分け、その色彩の単純化と洗練された構図による装飾美と金屏風という豪奢な感覚のバランスが素晴らしい。


江戸琳派 -粋と諧謔の精神-

江戸琳派は抱一と其一。抱一得意の「十二ヶ月花鳥図」を思わせる「檜に啄木鳥・紅梅に鴛鴦図」や草花の生命力を感じさせる「芙蓉秋草図屏風」、淡い色彩と丁寧な描写が美しい「桜図」 などどれも素敵なのですが、 ここではやはり風雅な「月に秋草図屏風」がいい。銀による半月は変色していますが、その景色といい、すーっと立つススキや草花の細い線といい、洒脱な趣が抱一らしい。

酒井抱一 「月に秋草図屏風」
江戸時代 文政8年(1825) 岡田美術館蔵

其一は「名月に秋草図」と「木蓮小禽図」。「名月に秋草図」は左右幅に秋草を配し、中幅に名月という三幅対で、同種の三幅対は抱一やほかの絵師にもありますが、其一のはやはり青や緑といったはっきりとした色の使い方が巧い。ただ、三幅が少し離れて展示されていて、最初は別々の掛軸かと思ってしまいました。もう少しそれぞれを近づけて掛けた方が引き立つ気がします。

「木蓮小禽図」も絶品。どこか西洋画にすら見えてくる写実的かつ濃厚で艶やかな色合いの木蓮が素晴らしい。木蓮の芳醇な香りが漂ってくるようです。どこに鳥が?と思うのですが、下から1/3ぐらいのところにかわいい鳥が。葉に同化していてほとんど分かりません(笑)

鈴木其一 「木蓮小禽図」
江戸時代後期・19世紀中頃 岡田美術館蔵


近代の琳派 -さらなる価値づけと発展-

最後に近代。ここでは神坂雪佳、前田青邨、速水御舟、梥本一洋、加山又造の作品を紹介。近代琳派として取り上げられることが多い雪佳、又造は別として、ほかの3人はあまり琳派と繋がらない画家ですが、琳派と関連した画題の作品ということで面白く拝見しました。


どの作品も、それぞれの絵師の作品として代表作に数え上げていいのではないかと思えるほどクオリティが高く、また保存状態も非常に良いのに驚かされました。またいずれ箱根の岡田美術館で拝見できると思いますが、こうして東京の中心で観られたことに感謝したいですね。


【琳派400年記念 RIMPA 岡田美術館所蔵 琳派名品展 ~知られざる名作初公開~】
2015年2月2日(月)まで
日本橋三越本店新館7階ギャラリーにて


「琳派」最速入門: 永遠に新しい、日本のデザイン (和樂ムック)「琳派」最速入門: 永遠に新しい、日本のデザイン (和樂ムック)

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