早いもので今年もあと24時間を切りました。
この1年を振り返り、今年の展覧会ベスト10を出してみました。
展覧会に絞ってみると、今年は64のエントリーがありました。現代アートの展覧会や写真展、ギャラリーの個展などは観ていてもブロ
グに書いてなかったりするので、そうしたものも含めると、たぶん100近い展覧会を観たのだと思います。今年は今までで一番観たかも(笑)
個人的には大規模な展覧会より、規模は大きくないけれど、学芸員さんやキュレーターさんの努力の跡が見えるというか、いい展覧会を創ろうと考えてくれたんだなということが伝わってくる展覧会に惹かれた気がします。そうした企画の良さ、作品のチョイスに唸る展覧会が多くありました。
いつものことですが、そんな中から10本を絞るのは至難の技。ここ1週間ぐらいずっと悩んでいたのですが、結果はこんな感じになりました。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
1位 『東山御物の美』(三井記念美術館)
今年のトップ3はほぼ横一列なのですが、美術的価値でも、企画内容でも、また作品から受けた感動でも、『東山御物の美』はやはり筆頭に上げたい展覧会。今年は『台北 國立故宮博物院展』もあり、中国美術、特に中国絵画の傑作を観る機会に恵まれましたが、東山御物の中国絵画は日本画へより直接的な影響を与えているだけあり、こうして一堂に拝見できた意義は非常に大きかったと思います。これらの作品が室町以降の、狩野派を含めた日本画の発展に大きく寄与したことを考えるととても興味深いし、感慨深いものがありました。この展覧会を実現してくれた方々に感謝。
2位 『松林桂月展』(練馬区立美術館)
近代日本画が洋風化の波から逃れられず、誰もが西洋画の影響を受け、新しい日本画を模索しようとしていた時代に、近代性に染まらず水墨画を極めた稀有な存在として、あらためて桂月の素晴らしさを痛感した展覧会でした。その筆致の巧みさと美しさもさることながら、中国や日本の故事にも精通していて、そうしたものを題材にできる水墨画家はこの人で最後なのかもしれないなと思ったりもしました。
3位 『中村芳中展』(千葉市美術館)
光琳や抱一以外の“そのほか”の琳派の絵師として紹介される程度だった芳中。そんな芳中がこんなにも楽しい、そして素敵な絵を描く絵師だったのかと知り、ちょっと衝撃的でした。ほのぼの系琳派というか脱力系琳派というか。抱一の洗練された正統派琳派とはひと味もふた味も違う、浪花の琳派。面白かったですね~。
4位 『木島櫻谷展』(泉屋博古館分館)
この方も松林桂月と同じく、気になっていたものの、その全貌をなかなか掴めずにいた近代日本画家。今回いろいろと作品を拝見して、歴史画、花鳥画、山水画、それぞれに良いのですが、動物画の素晴らしさは抜きん出ていました。四条派の伝統的な写生力、天性の観察眼と表現力は卓越したものがあるなと感じ入りました。
5位 『菱田春草展』(東京国立近代美術館)
個人的に近代日本画では一番好きな画家の一人。今年一番楽しみにしていた展覧会だったかもしれません。地方の美術館の所蔵作品や個人蔵など出品数も多く、内容が充実していたのも特筆する点です。春草の画家としての約20年の歩みが一望できたのはもちろん、彼の清新清冽な画風と魅力がよく分かる展覧会でした。
6位 『輝ける金と銀』(山種美術館)
日本画の装飾性や効果性を高めるために金と銀がどのように使われてきたかという観点で作品が集められていて、各コーナーにはそれぞれの技法を紹介したサンプルもあり、非常に勉強になった展覧会でした。金泥・箔押し・撒きつぶしがどう違うのか、裏箔の有り無しで絵の印象がどう変わるか、もう目から鱗。日本画を見る目が変わりましたね。企画力の勝利です。そして何より、絵画表現としての金と銀の表現の幅の広さと先人の知恵と技術に感服しました。
7位 『名画を切り、名器を継ぐ』(根津美術館)
蒐集欲のために絵巻や書画を切断してしまったり、ただ美しいという見た目のために故意に茶碗や壷にヒビを入れたりして、そこまでしなくても…、そんなことをしてしまったら…、という気持ちもあるのですが、切断したり、改装したり、改変したりという文化が日本美術にはあるのも事実で、その点に着目したということでとてもユニークな展覧会でした。
8位 『探幽3兄弟展』(板橋区美術館)
探幽の陰に隠れてなかなかスポットの当たらない弟、尚信・安信と合わせ、3兄弟の画業を一堂に観られ、比較ができたという点で、これも興味深い展覧会でした。それぞれに個性があり、技術があり、あらためて江戸狩野派の鉄壁さを思い知ったのと、最近個人的に興味のあった尚信の作品を多く見られたということでも大満足でした。
9位 『京へのいざない(第1期)』(京都国立博物館)
京博に新しくオープンした平成知新館のオープニング展。念願だった京博所蔵の国宝や重文の数々を観られたということだけでなく、建物のデザインやムード、照明、作品の見せ方も含めて、強く印象に残った展覧会でした。
10位 『白絵 -祈りと寿ぎのかたち-』(神奈川県立歴史博物館)
全くのノーマークだったのですが、ネット上で評判を目にして観に行った展覧会。古来より白い色に込められた人々の思いを“白絵”を中心に展観し、美術的にだけでなく、文化的にも民俗学的にも、とても興味深かったです。非常に良い企画展だったと思います。
気づけば今年は日本画系ばかり。西洋画も入れたかったのですが…。西洋画の美術展では、『オルセー美術館展』、『ヴァロットン展』、『オランダ・ハーグ派展』、『ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900』、『ラファエル前派展』あたりが個人的にはとても好きでした。
ちなみに今年アップした展覧会の記事で拙サイトへのアクセス数は以下の通りです。
1位 『オルセー美術館展』
2位 『ヴァロットン展』
3位 『バルテュス展』
4位 『江戸絵画の真髄』
5位 『菱田春草展』
6位 『ザ・ビューティフル』
7位 『キトラ古墳展』
8位 『ジャック・カロ展』
9位 『華麗なるジャポニスム展』
10位 『ボストン美術館 ミレー展』
拙いサイトにも関わらず、今年も一年間足をお運びいただきありがとうございました。来年はさらにいろんな展覧会を観て、充実した内容にできればと思っています。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
【参考】
2013年 展覧会ベスト10
2012年 展覧会ベスト10
2014/12/31
2014/12/29
ホイッスラー展
横浜美術館で開催中の『ホイッスラー展』に行ってきました。
ホイッスラーの作品は美術展ではたびたび見かけることがあって、今年も『オルセー美術館展』や『ザ・ビューティフル』、『華麗なるジャポニスム展』などで拝見する機会があり、一度まとめて観たいなと思っていたところでした。
本展は京都から巡回しての展覧会。日本でも割と人気のある画家だと思うのですが、日本での回顧展は実に27年ぶり、世界でも約20年ぶりなのだそうです。
約130点の出品作品のうち、半分がエッチングやリトグラフなど版画の作品で、油彩画は30数点、ほかに水彩画や習作、また絵筆や眼鏡、お皿などホイッスラーの旧蔵品も展示されています。
第1章 人物画
会場に入ってすぐのところに飾られていたのがホイッスラー38歳のときの自画像。ホイッスラーはアメリカ人ですが、幼少期をロシアで過ごし、その後もロンドンやパリで活動をしたいたこともあり、とてもヨーロッパ的。風貌もエレガントなロンドンの画家という感じです。ちょうど画家として名声を得た頃の作品ということで、その表情も自信に満ちているようです。
ほかにも20代前半の頃の油彩画や、24歳のとき初めて出版したエッチング集(「フレンチ・セット」)など初期の作品も充実しています。クールベの写実主義の影響もあって、前半期の作品は隅々までしっかりと描きこまれ、筆運びも丁寧なのが印象的です。
『オルセー美術館展』で感銘を受けた作品の一つ、 「灰色と黒のアレンジメント第1番」のバリエーション作品もありました。解説によると、「母の肖像」が好評で、それと同じ構図で描いて欲しいというリクエストだったのだとか。この色合い、静謐さ、写実性。個人的にはこの頃の作品が一番好きかも。
今回のホイッスラー展で発見だったのは女性を描いた肖像画がとても良かったということ。その中で「ライム・リジスの小さなバラ」は茶褐色のトーンと少女の幼げだけど意志をもった瞳が印象的です。隣にあった「リリー:楕円形の肖像画」もいい。
晩年の「赤と黒:扇」にもシビれました。真紅のドレスと黒いストール(?)のコントラスト。日本画の影響もあるのでしょうか、ストールはまるで墨で掃いたような粗い筆遣い。素晴らしい。
第2章 風景画
ホイッスラーの風景画は、丁寧な筆致とリアリズムな画面が印象的な50~60年代前半の作品、薄塗りのタッチと色彩感が出てきて独自の画風を確立していく60年代後半以降の作品、それぞれに魅力があります。
ホイッスラーの海景画もいくつかあって、クールベとも違うホイッスラーらしい情景と丁寧な筆致が印象的です。後期の水彩画も「チェルシーの通り」のように温かみのある色合いの作品もあったりして、どうしても「ノクターン」などのイメージが強いせいか、こういう作品も描くんだなと意外でした。
エッチングも初期の「テムズ・セット」とその約20年後に手がけた「ベニス・セット」が面白い。メリヨンの版画を思わせる繊細で写実的な「テムズ・セット」、「ノクターン」とも通じる神秘的で詩趣溢れる「ヴェニス・セット」。画風の違いも分かります。
第3章 ジャポニスム
最後は“ジャポニスム”。途中にホイッスラーがデザインした、フレデリック・レイランド邸のダイニング・ルーム<ピーコック・ルーム>を再現した部屋があり、これが見もの。現在はアメリカのフリーア美術館に移築されているそうですが、<ピーコック・ルーム>を撮影した映像が壁三面に大きく映し出され、その美しさに圧倒されます。ピーコックグリーンと金色、また孔雀の羽模様などで装飾された部屋は唯美主義を象徴する部屋とされ、ホイッスラーが勝手にデザインしレイランドを激怒させたものの、生涯レイランドは部屋を改装しなかったという気持ちが分かる気がします。
ほかに絵画では、ラファエル前派の影響を受けた「白のシンフォニー」シリーズの2作品「白のシンフォニー No.2」と「白のシンフォニー No.3」がやはり素晴らしい。オリエンタル・ペインティングの「紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン」や浮世絵の影響を感じさせる「リンジー・ハウスから見たバターシー・リーチ」などもいい。
「ノクターン」シリーズの作品などで、特に浮世絵の構図を模した作品は、その元ネタとなる広重や清長、北斎らの浮世絵が並んで展示されていて、“ジャポニスム”の影響を分かりやすく解説しています。「青と銀色のノクターン」なんて浮世絵というより、ほとんど水墨画の世界ですね。
展示がテーマ別で、その中でざっと年代順になってますが、特に作風の変遷にこだわって並べていないので、その点が分かりにくいかなという感じを受けました。また、代表作は多いものの、油彩画の展示数が少ないので一部には物足らなさが残るかもしれません。それでもこれだけホイッスラーの作品をまとめて観る機会は久しぶりのようですし、自分は新しい発見もあったので、ホイッスラーの好きな人なら観ておく展覧会だと思います。
【ホイッスラー展】
2015年3月1日(日)まで
横浜美術館にて
ホイッスラー (アート・ライブラリー)
ホイッスラーの作品は美術展ではたびたび見かけることがあって、今年も『オルセー美術館展』や『ザ・ビューティフル』、『華麗なるジャポニスム展』などで拝見する機会があり、一度まとめて観たいなと思っていたところでした。
本展は京都から巡回しての展覧会。日本でも割と人気のある画家だと思うのですが、日本での回顧展は実に27年ぶり、世界でも約20年ぶりなのだそうです。
約130点の出品作品のうち、半分がエッチングやリトグラフなど版画の作品で、油彩画は30数点、ほかに水彩画や習作、また絵筆や眼鏡、お皿などホイッスラーの旧蔵品も展示されています。
第1章 人物画
会場に入ってすぐのところに飾られていたのがホイッスラー38歳のときの自画像。ホイッスラーはアメリカ人ですが、幼少期をロシアで過ごし、その後もロンドンやパリで活動をしたいたこともあり、とてもヨーロッパ的。風貌もエレガントなロンドンの画家という感じです。ちょうど画家として名声を得た頃の作品ということで、その表情も自信に満ちているようです。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「灰色のアレンジメント:自画像」
1872年頃 デトロイト美術館蔵
1872年頃 デトロイト美術館蔵
ほかにも20代前半の頃の油彩画や、24歳のとき初めて出版したエッチング集(「フレンチ・セット」)など初期の作品も充実しています。クールベの写実主義の影響もあって、前半期の作品は隅々までしっかりと描きこまれ、筆運びも丁寧なのが印象的です。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
「灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像」
1872-73年 グラスゴー美術館蔵
「灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像」
1872-73年 グラスゴー美術館蔵
『オルセー美術館展』で感銘を受けた作品の一つ、 「灰色と黒のアレンジメント第1番」のバリエーション作品もありました。解説によると、「母の肖像」が好評で、それと同じ構図で描いて欲しいというリクエストだったのだとか。この色合い、静謐さ、写実性。個人的にはこの頃の作品が一番好きかも。
【参考】ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
「灰色と黒のアレンジメント第1番:母の肖像」
※本展には出品されていません
「灰色と黒のアレンジメント第1番:母の肖像」
※本展には出品されていません
今回のホイッスラー展で発見だったのは女性を描いた肖像画がとても良かったということ。その中で「ライム・リジスの小さなバラ」は茶褐色のトーンと少女の幼げだけど意志をもった瞳が印象的です。隣にあった「リリー:楕円形の肖像画」もいい。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「ライム・リジスの小さなバラ」
1895年 ボストン美術館蔵
1895年 ボストン美術館蔵
晩年の「赤と黒:扇」にもシビれました。真紅のドレスと黒いストール(?)のコントラスト。日本画の影響もあるのでしょうか、ストールはまるで墨で掃いたような粗い筆遣い。素晴らしい。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「赤と黒:扇」
1891-94年 ハンテリアン美術館蔵
1891-94年 ハンテリアン美術館蔵
第2章 風景画
ホイッスラーの風景画は、丁寧な筆致とリアリズムな画面が印象的な50~60年代前半の作品、薄塗りのタッチと色彩感が出てきて独自の画風を確立していく60年代後半以降の作品、それぞれに魅力があります。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
「オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後」
1862年 ボストン美術館蔵
「オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後」
1862年 ボストン美術館蔵
ホイッスラーの海景画もいくつかあって、クールベとも違うホイッスラーらしい情景と丁寧な筆致が印象的です。後期の水彩画も「チェルシーの通り」のように温かみのある色合いの作品もあったりして、どうしても「ノクターン」などのイメージが強いせいか、こういう作品も描くんだなと意外でした。
エッチングも初期の「テムズ・セット」とその約20年後に手がけた「ベニス・セット」が面白い。メリヨンの版画を思わせる繊細で写実的な「テムズ・セット」、「ノクターン」とも通じる神秘的で詩趣溢れる「ヴェニス・セット」。画風の違いも分かります。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「チェルシーの通り」
1888年 イェール大学英国芸術センター蔵
1888年 イェール大学英国芸術センター蔵
第3章 ジャポニスム
最後は“ジャポニスム”。途中にホイッスラーがデザインした、フレデリック・レイランド邸のダイニング・ルーム<ピーコック・ルーム>を再現した部屋があり、これが見もの。現在はアメリカのフリーア美術館に移築されているそうですが、<ピーコック・ルーム>を撮影した映像が壁三面に大きく映し出され、その美しさに圧倒されます。ピーコックグリーンと金色、また孔雀の羽模様などで装飾された部屋は唯美主義を象徴する部屋とされ、ホイッスラーが勝手にデザインしレイランドを激怒させたものの、生涯レイランドは部屋を改装しなかったという気持ちが分かる気がします。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「白のシンフォニー No.3」
1865-67年 ハーバー美術館蔵
1865-67年 ハーバー美術館蔵
ほかに絵画では、ラファエル前派の影響を受けた「白のシンフォニー」シリーズの2作品「白のシンフォニー No.2」と「白のシンフォニー No.3」がやはり素晴らしい。オリエンタル・ペインティングの「紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン」や浮世絵の影響を感じさせる「リンジー・ハウスから見たバターシー・リーチ」などもいい。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー
「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」
1872-75年 テート美術館蔵
「ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ」
1872-75年 テート美術館蔵
「ノクターン」シリーズの作品などで、特に浮世絵の構図を模した作品は、その元ネタとなる広重や清長、北斎らの浮世絵が並んで展示されていて、“ジャポニスム”の影響を分かりやすく解説しています。「青と銀色のノクターン」なんて浮世絵というより、ほとんど水墨画の世界ですね。
ジェームズ・マクニール・ホイッスラー 「青と銀色のノクターン」
1872-78年 イェール英国芸術センター蔵
1872-78年 イェール英国芸術センター蔵
展示がテーマ別で、その中でざっと年代順になってますが、特に作風の変遷にこだわって並べていないので、その点が分かりにくいかなという感じを受けました。また、代表作は多いものの、油彩画の展示数が少ないので一部には物足らなさが残るかもしれません。それでもこれだけホイッスラーの作品をまとめて観る機会は久しぶりのようですし、自分は新しい発見もあったので、ホイッスラーの好きな人なら観ておく展覧会だと思います。
【ホイッスラー展】
2015年3月1日(日)まで
横浜美術館にて
ホイッスラー (アート・ライブラリー)
2014/12/27
フェルディナント・ホドラー展
国立西洋美術館で開催中の『ホドラー展』に行ってきました。
本展は日本とスイスの国交樹立150周年を記念した展覧会。日本では約40年前に同じ国立西洋美術館で開かれて以来の回顧展とのこと。
ホドラーはスイスでは今も人気が高く国民画家として愛されてるといいます。生涯を通じて活動の拠点をスイス国内に置いていたこともあり、国外での知名度はそれほど高くないようですが、近年は欧米でも相次いで展覧会が開かれるなど、改めて国際的な注目が集まっているそうです。
実はこの展覧会までホドラーのことを全然知りませんでした。いつものことながら、ほんと勉強不足ですいません。この10月、11月は展覧会が多く、優先順位が下がってしまっていたのですが、漏れ聞こえる評判の声に後押しされ、先日ようやく観てまいりました。
PART 1 光のほうへ-初期の風景画
ホドラーは母親の再婚相手(実父は病死)が装飾画家で、その手伝いをするうちに画家という仕事に興味を持つようになったようです。この装飾美術という、いわば出発点が後年大きな意味を持ってくるのですが、これも運命だったんでしょうね。
最初は風景画家として、というよりも工房で主に観光客の土産用の絵を描いていたとか。しかし、工房では師匠の手本を真似て描くだけで署名を入れることさえ許されなかったといいます。やがて、そこから逃げ出すように自分の描きたい絵を模索し始めます。あまり個性が感じられなかった絵も、1880年前後から陽光のとらえ方に特色が出てくるなど徐々に変わっていくのが分かります。
PART 2 暗鬱な世紀末?-象徴主義者の自覚
この頃、遅ればせながらクールベを強く意識したといいます。「怒れる人(自画像)」や「死した農民」、「ベルン州での祈り」あたりからはクールベを経て生まれた作品なのだろうなと感じます。そして時代は19世紀末。象徴主義と出会うことで、ホドラーは内面に目を向けた作品を描くようになります。
「傷ついた若者」は新約聖書の「善きサマリア人」のたとえ話から生まれた作品とのこと。頭に傷を負い身体をよじらせ苦しみ横たわる肌の白さと緑の木々が色の対比が印象的です。
PART 3 リズムの絵画へ-踊る身体、動く感情
「オイリュトミー」を発表して以降、躍動的な身体や感情を表現した作品を手がけるホドラー。この時代の作品を紐解くのに、<良きリズム>という意味の“オイリュトミー”と、“パラレリズム”(平行主義)というキーワードが登場します。このあたりからホドラーの絵は途端に面白くなります。そこはもうホドラーだけの世界。
うつむいた老人が並ぶ「オイリュトミー」と首を横に向いた女性が並ぶ「感情Ⅲ」は対を成す作品。ほかにもプリミティブなダンスを感じさせる作品やピナ・バウシュの舞踊を思わせるものなど、どれもリズムというか鼓動というか、音楽が流れてくるようです。
PART 4 変貌するアルプス-風景の抽象化
後年の風景画のコーナーは部屋の片側にアルプスを描いた絵が、片側には湖を描いた絵が並べられています。同じモチーフがパターン化(反復)され、一枚一枚がそのヴァリエーションのよう。作品はカチッとした簡潔な線描とコントラストの強い色面で構成され、これまでとまた違う面白さがあります。
PART 5 リズムの空間化-壁画装飾プロジェクト
PART 6 無限へのまなざし-終わらないリズムの夢
ここではホドラーの代表的な装飾プロジェクトを紹介。イエナ大学やハノーファー市庁舎の会議室、チューリヒ美術館に飾るために制作された壁画装飾、スイス国立博物館のフレスコ画などの習作やパネルなどで構成されています。ある意味、壁画装飾はホドラーの完成形なのでしょう。どこかスイスのナショナリズムを感じさせるところもあり、そのあたりが国民画家とされるところと関係してるのかもしれません。
PART 7 終わりのとき-晩年の作品群
最後は晩年の作品。最愛の恋人の朽ちていく死骸を描いた「バラの中の死したヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルの遺骸」と一連の習作、より抽象化・形式化が進んだ「白鳥のいるレマン湖とモンブラン」が強く印象に残ります。
【フェルディナント・ホドラー展】
2015年1月12日まで
国立西洋美術館にて
シュタイナー教育とオイリュトミー―動きとともにいのちは育つ
いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫)
本展は日本とスイスの国交樹立150周年を記念した展覧会。日本では約40年前に同じ国立西洋美術館で開かれて以来の回顧展とのこと。
ホドラーはスイスでは今も人気が高く国民画家として愛されてるといいます。生涯を通じて活動の拠点をスイス国内に置いていたこともあり、国外での知名度はそれほど高くないようですが、近年は欧米でも相次いで展覧会が開かれるなど、改めて国際的な注目が集まっているそうです。
実はこの展覧会までホドラーのことを全然知りませんでした。いつものことながら、ほんと勉強不足ですいません。この10月、11月は展覧会が多く、優先順位が下がってしまっていたのですが、漏れ聞こえる評判の声に後押しされ、先日ようやく観てまいりました。
PART 1 光のほうへ-初期の風景画
ホドラーは母親の再婚相手(実父は病死)が装飾画家で、その手伝いをするうちに画家という仕事に興味を持つようになったようです。この装飾美術という、いわば出発点が後年大きな意味を持ってくるのですが、これも運命だったんでしょうね。
ホドラー 「マロニエの木々」
1889年 ジュネーヴ美術・歴史博物館蔵
1889年 ジュネーヴ美術・歴史博物館蔵
最初は風景画家として、というよりも工房で主に観光客の土産用の絵を描いていたとか。しかし、工房では師匠の手本を真似て描くだけで署名を入れることさえ許されなかったといいます。やがて、そこから逃げ出すように自分の描きたい絵を模索し始めます。あまり個性が感じられなかった絵も、1880年前後から陽光のとらえ方に特色が出てくるなど徐々に変わっていくのが分かります。
PART 2 暗鬱な世紀末?-象徴主義者の自覚
この頃、遅ればせながらクールベを強く意識したといいます。「怒れる人(自画像)」や「死した農民」、「ベルン州での祈り」あたりからはクールベを経て生まれた作品なのだろうなと感じます。そして時代は19世紀末。象徴主義と出会うことで、ホドラーは内面に目を向けた作品を描くようになります。
ホドラー 「傷ついた若者」
1886年 ベルン美術館蔵
1886年 ベルン美術館蔵
「傷ついた若者」は新約聖書の「善きサマリア人」のたとえ話から生まれた作品とのこと。頭に傷を負い身体をよじらせ苦しみ横たわる肌の白さと緑の木々が色の対比が印象的です。
PART 3 リズムの絵画へ-踊る身体、動く感情
「オイリュトミー」を発表して以降、躍動的な身体や感情を表現した作品を手がけるホドラー。この時代の作品を紐解くのに、<良きリズム>という意味の“オイリュトミー”と、“パラレリズム”(平行主義)というキーワードが登場します。このあたりからホドラーの絵は途端に面白くなります。そこはもうホドラーだけの世界。
ホドラー 「オイリュトミー」
1895年 ベルン美術館蔵
1895年 ベルン美術館蔵
ホドラー 「感情Ⅲ」
1894年 ベルン州美術コレクション蔵
1894年 ベルン州美術コレクション蔵
うつむいた老人が並ぶ「オイリュトミー」と首を横に向いた女性が並ぶ「感情Ⅲ」は対を成す作品。ほかにもプリミティブなダンスを感じさせる作品やピナ・バウシュの舞踊を思わせるものなど、どれもリズムというか鼓動というか、音楽が流れてくるようです。
ホドラー 「昼Ⅲ」
1900年 ルツェルン美術館蔵
1900年 ルツェルン美術館蔵
PART 4 変貌するアルプス-風景の抽象化
後年の風景画のコーナーは部屋の片側にアルプスを描いた絵が、片側には湖を描いた絵が並べられています。同じモチーフがパターン化(反復)され、一枚一枚がそのヴァリエーションのよう。作品はカチッとした簡潔な線描とコントラストの強い色面で構成され、これまでとまた違う面白さがあります。
ホドラー 「ミューレンから見たユングフラウ山」
1911年 ベルン美術館蔵
1911年 ベルン美術館蔵
PART 5 リズムの空間化-壁画装飾プロジェクト
PART 6 無限へのまなざし-終わらないリズムの夢
ここではホドラーの代表的な装飾プロジェクトを紹介。イエナ大学やハノーファー市庁舎の会議室、チューリヒ美術館に飾るために制作された壁画装飾、スイス国立博物館のフレスコ画などの習作やパネルなどで構成されています。ある意味、壁画装飾はホドラーの完成形なのでしょう。どこかスイスのナショナリズムを感じさせるところもあり、そのあたりが国民画家とされるところと関係してるのかもしれません。
PART 7 終わりのとき-晩年の作品群
最後は晩年の作品。最愛の恋人の朽ちていく死骸を描いた「バラの中の死したヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルの遺骸」と一連の習作、より抽象化・形式化が進んだ「白鳥のいるレマン湖とモンブラン」が強く印象に残ります。
ホドラー 「白鳥のいるレマン湖とモンブラン」
1918年 ジュネーヴ美術・歴史博物館蔵
1918年 ジュネーヴ美術・歴史博物館蔵
【フェルディナント・ホドラー展】
2015年1月12日まで
国立西洋美術館にて
シュタイナー教育とオイリュトミー―動きとともにいのちは育つ
いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか (ちくま学芸文庫)
2014/12/26
伊賀越道中双六
国立劇場の12月歌舞伎公演『通し狂言 伊賀越道中双六』を観てきました。
『伊賀越道中双六』は歌舞伎では「沼津」しか観たことがありませんが、今回は通し狂言なのに「沼津」はなし。その代わり、44年ぶりに「岡崎」を上演するというのが話題です。
先に観た方の感想や劇評もすこぶる高評価でしたが、その評判どおり非の打ち所のない芝居でした。役者が適材適所で、かつ最善の演技をしています。構成もよく練られていて、ここ最近になく充実した舞台だったと思います。
序幕「和田行家屋敷の場」は橘三郎・京妙の行家夫婦が出色。家老という家の格と、娘と息子を勘当したという厳格さが二人のやりとりから伝わってきます。やはり役者がうまいと芝居が引き締まりますね。錦之助はニンではありませんが、狡猾な股五郎を好演。志津馬は菊之助。結婚後、吉右衛門との共演が増えましたが、菊之助が入るだけで芝居に華が出ます。
二幕目は「誉田家城中」。又五郎の城主の前で行われる吉右衛門の政右衛門と桂三の林左衛門による御前試合と、そのあとの顛末への流れがいい。仇討ちの旅に出るためにわざと負けた政右衛門とそれを見抜いていた城主。城主の政右衛門への深い思いが滲み出ています。
三幕目は「藤川新関」。ここは米吉のお袖がいい。菊之助の志津馬に一目惚れする娘ののぼせ具合といじらしさ、それでいて積極的なところがよく出ていました。一方の志津馬はお袖を利用して関を越えようとするわけですが、それが芝居としてちょっと分かりづらかった感じもします。
そして四幕目「山田幸兵衛住家」。通称「岡崎」。志津馬はお袖を騙し、また股五郎と偽り匿われることで仇討ちを遂げようとし、十数年ぶりの師弟の再会した政右衛門は雪の中倒れる妻を追い返し、我が子を手に掛けてまでも素性を隠し通そうとします。何も赤子もまで…と思わずにいられませんが、そのことで芝居のピークを大詰の敵討にもっていくようにしてるのでしょう。ここはやはり終始一貫堅固な老人を演じる歌六の素晴らしさに尽きます。歌六あっての「岡崎」、そんな芝居でした。そして難しい芝居を吉右衛門と芝雀、菊之助がきちっとまとめていきます。岡崎の重さは滅多にかからないだけのことはあるなと思いましたが、岡崎を中心に構成したことで仇討ちという目的がくっきり浮かび上がった気がします。
今年の歌舞伎はこれで最後となりましたが、とても良い歌舞伎納めになりました。
歌舞伎名作撰 伊賀越道中双六 -沼津- [DVD]
2014/12/18
エルメス レザー・フォーエバー
東京国立博物館の表慶館で開催中の『エルメス レザー・フォーエバー』を観てきました。
上海、ローマ、ロンドン、マドリード、香港など世界を巡回してきたエキシビジョンで、テーマはレザーとエルメスの絆。
レザーはエルメスでもっとも重要な素材。馬具工房からスタートして以来、170年以上もの間、情熱を傾け、向き合ってきたレザーとエルメスの関係を探っていきます。
ブランド品には全くと言っていいほど興味がなく、“バーキン”と“ケリー”の違いもよく分かってないのですが(でもこのエキシビジョンでようやく違いが分かりましたw)、先日伺った『日本国宝展』の会場が空くのを待つ間、ちょっと覗き見気分で入ってみました。そしたらこれが面白い! まるでエルメスのテーマパーク! ちょっとのつもりが、軽く30分越え。『国宝展』の時間もあって途中切り上げざるをえなかったので、後日あらためて再訪し、今度はゆっくり拝見してきました。
『エルメス レザー・フォーエバー』は入場無料! ただし、入場するには東京国立館本館正門の左側の専用窓口でチケットを受け取らなければなりません。展覧会の専用ウェブサイトのQRコードを見せる必要があるので事前に確認しておきましょう。
ちなみに総合文化展の入場券を持っていても、正門外の専用窓口でチケットをもらう必要があります。というより、『エルメス レザー・フォーエバー』のチケットで入れば、総合文化展も一緒に観られるので、入場券は買わなくてもOK!
最初のコーナーは≪ノウハウ≫。エルメスの商品で使われる様々なレザーが展示されていて、実際に触れるのがうれしいですね。なめした一枚のレザーからどういう風に裁断するかのかが分かったりして面白い。
そばでは実際に職人さんがケリーバッグを作っています。“ケリー”には内縫いと外縫いの2タイプがあって、会期中に既に内縫いのものが完成。上の写真はちょうど外縫いタイプを作製しているところでした。エルメスのバッグはフランス以外で作られることはなく、まして目の前で見られる機会なんてまずないので、最前列で見るために朝から並んでいる人もいるみたい。
エルメスのバッグがずらーっと並ぶ光景はまるでショップのよう。展示されている商品には使い込まれたバッグもあって、ヴィンテージならでは美しさや風格にエルメスの自信が感じられます。
各部屋にはバッグの形をした説明文があって、これを持ちながら作品を見ることができます。
会場の途中にはオーストリッチの巨大なサイが!!
トーハク・ファンとしては表慶館の変貌ぶりを見るのも楽しいし、建物内を見て回れるのもポイントですね。ちなみに表慶館は迎賓館も手がけた片山東熊の設計で、現在は重要文化財に指定されています。
2階にはエルメスの原点でもある鞍やブーツといった馬具、またグローブやリンゴ用のバッグといった一風変わったスペシャルオーダーを集めたコーナーなどもあり、エルメスの長い歴史を辿ることができます。なぜか乗馬(?)コーナーも。係の方に勧められましたけど、さすがに一人だとちょっと恥ずかしくて乗れません…。
もういちど1階に降りると、“ケリー”と“バーキン”の様々なバリエーションが展示されています。大きさも違えば色も違う。それぞれに異なった印象、味わいがあります。素敵です。
旅をテーマにした部屋も面白かったです。トランクや旅行カバン、シューズやシューズケース、さらには柳細工でできた“ケリー”のピクニック・バッグなどもあって、古き良き時代のラグジュアリーな空気がたまりません。
石膏の彫刻にケリーバッグを持たせているのかと思ったら、なんとホワイトレザー製!
最後の部屋には、宙に浮いた盆栽の周りを“ケリー”や“バーキン”、“コンスタンス”など8つのミニサイズのバッグが飾られていて、もう最後の最後まで驚きと楽しさに満ちています。これだけエルメス気分に浸れて無料だなんて。オススメです。
【特別エキシビション エルメス「レザー・フォーエバー」】
2014年12月23日まで
東京国立博物館 表慶館にて
エルメス (新潮新書)
上海、ローマ、ロンドン、マドリード、香港など世界を巡回してきたエキシビジョンで、テーマはレザーとエルメスの絆。
レザーはエルメスでもっとも重要な素材。馬具工房からスタートして以来、170年以上もの間、情熱を傾け、向き合ってきたレザーとエルメスの関係を探っていきます。
ブランド品には全くと言っていいほど興味がなく、“バーキン”と“ケリー”の違いもよく分かってないのですが(でもこのエキシビジョンでようやく違いが分かりましたw)、先日伺った『日本国宝展』の会場が空くのを待つ間、ちょっと覗き見気分で入ってみました。そしたらこれが面白い! まるでエルメスのテーマパーク! ちょっとのつもりが、軽く30分越え。『国宝展』の時間もあって途中切り上げざるをえなかったので、後日あらためて再訪し、今度はゆっくり拝見してきました。
『エルメス レザー・フォーエバー』は入場無料! ただし、入場するには東京国立館本館正門の左側の専用窓口でチケットを受け取らなければなりません。展覧会の専用ウェブサイトのQRコードを見せる必要があるので事前に確認しておきましょう。
ちなみに総合文化展の入場券を持っていても、正門外の専用窓口でチケットをもらう必要があります。というより、『エルメス レザー・フォーエバー』のチケットで入れば、総合文化展も一緒に観られるので、入場券は買わなくてもOK!
最初のコーナーは≪ノウハウ≫。エルメスの商品で使われる様々なレザーが展示されていて、実際に触れるのがうれしいですね。なめした一枚のレザーからどういう風に裁断するかのかが分かったりして面白い。
そばでは実際に職人さんがケリーバッグを作っています。“ケリー”には内縫いと外縫いの2タイプがあって、会期中に既に内縫いのものが完成。上の写真はちょうど外縫いタイプを作製しているところでした。エルメスのバッグはフランス以外で作られることはなく、まして目の前で見られる機会なんてまずないので、最前列で見るために朝から並んでいる人もいるみたい。
エルメスのバッグがずらーっと並ぶ光景はまるでショップのよう。展示されている商品には使い込まれたバッグもあって、ヴィンテージならでは美しさや風格にエルメスの自信が感じられます。
各部屋にはバッグの形をした説明文があって、これを持ちながら作品を見ることができます。
会場の途中にはオーストリッチの巨大なサイが!!
トーハク・ファンとしては表慶館の変貌ぶりを見るのも楽しいし、建物内を見て回れるのもポイントですね。ちなみに表慶館は迎賓館も手がけた片山東熊の設計で、現在は重要文化財に指定されています。
2階にはエルメスの原点でもある鞍やブーツといった馬具、またグローブやリンゴ用のバッグといった一風変わったスペシャルオーダーを集めたコーナーなどもあり、エルメスの長い歴史を辿ることができます。なぜか乗馬(?)コーナーも。係の方に勧められましたけど、さすがに一人だとちょっと恥ずかしくて乗れません…。
もういちど1階に降りると、“ケリー”と“バーキン”の様々なバリエーションが展示されています。大きさも違えば色も違う。それぞれに異なった印象、味わいがあります。素敵です。
旅をテーマにした部屋も面白かったです。トランクや旅行カバン、シューズやシューズケース、さらには柳細工でできた“ケリー”のピクニック・バッグなどもあって、古き良き時代のラグジュアリーな空気がたまりません。
石膏の彫刻にケリーバッグを持たせているのかと思ったら、なんとホワイトレザー製!
最後の部屋には、宙に浮いた盆栽の周りを“ケリー”や“バーキン”、“コンスタンス”など8つのミニサイズのバッグが飾られていて、もう最後の最後まで驚きと楽しさに満ちています。これだけエルメス気分に浸れて無料だなんて。オススメです。
【特別エキシビション エルメス「レザー・フォーエバー」】
2014年12月23日まで
東京国立博物館 表慶館にて
エルメス (新潮新書)