早いもので今年もあと24時間を切りました。
この1年を振り返り、今年の展覧会ベスト10を出してみました。
展覧会に絞ってみると、今年は64のエントリーがありました。現代アートの展覧会や写真展、ギャラリーの個展などは観ていてもブロ
グに書いてなかったりするので、そうしたものも含めると、たぶん100近い展覧会を観たのだと思います。今年は今までで一番観たかも(笑)
個人的には大規模な展覧会より、規模は大きくないけれど、学芸員さんやキュレーターさんの努力の跡が見えるというか、いい展覧会を創ろうと考えてくれたんだなということが伝わってくる展覧会に惹かれた気がします。そうした企画の良さ、作品のチョイスに唸る展覧会が多くありました。
いつものことですが、そんな中から10本を絞るのは至難の技。ここ1週間ぐらいずっと悩んでいたのですが、結果はこんな感じになりました。
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1位 『東山御物の美』(三井記念美術館)
今年のトップ3はほぼ横一列なのですが、美術的価値でも、企画内容でも、また作品から受けた感動でも、『東山御物の美』はやはり筆頭に上げたい展覧会。今年は『台北 國立故宮博物院展』もあり、中国美術、特に中国絵画の傑作を観る機会に恵まれましたが、東山御物の中国絵画は日本画へより直接的な影響を与えているだけあり、こうして一堂に拝見できた意義は非常に大きかったと思います。これらの作品が室町以降の、狩野派を含めた日本画の発展に大きく寄与したことを考えるととても興味深いし、感慨深いものがありました。この展覧会を実現してくれた方々に感謝。
2位 『松林桂月展』(練馬区立美術館)
近代日本画が洋風化の波から逃れられず、誰もが西洋画の影響を受け、新しい日本画を模索しようとしていた時代に、近代性に染まらず水墨画を極めた稀有な存在として、あらためて桂月の素晴らしさを痛感した展覧会でした。その筆致の巧みさと美しさもさることながら、中国や日本の故事にも精通していて、そうしたものを題材にできる水墨画家はこの人で最後なのかもしれないなと思ったりもしました。
3位 『中村芳中展』(千葉市美術館)
光琳や抱一以外の“そのほか”の琳派の絵師として紹介される程度だった芳中。そんな芳中がこんなにも楽しい、そして素敵な絵を描く絵師だったのかと知り、ちょっと衝撃的でした。ほのぼの系琳派というか脱力系琳派というか。抱一の洗練された正統派琳派とはひと味もふた味も違う、浪花の琳派。面白かったですね~。
4位 『木島櫻谷展』(泉屋博古館分館)
この方も松林桂月と同じく、気になっていたものの、その全貌をなかなか掴めずにいた近代日本画家。今回いろいろと作品を拝見して、歴史画、花鳥画、山水画、それぞれに良いのですが、動物画の素晴らしさは抜きん出ていました。四条派の伝統的な写生力、天性の観察眼と表現力は卓越したものがあるなと感じ入りました。
5位 『菱田春草展』(東京国立近代美術館)
個人的に近代日本画では一番好きな画家の一人。今年一番楽しみにしていた展覧会だったかもしれません。地方の美術館の所蔵作品や個人蔵など出品数も多く、内容が充実していたのも特筆する点です。春草の画家としての約20年の歩みが一望できたのはもちろん、彼の清新清冽な画風と魅力がよく分かる展覧会でした。
6位 『輝ける金と銀』(山種美術館)
日本画の装飾性や効果性を高めるために金と銀がどのように使われてきたかという観点で作品が集められていて、各コーナーにはそれぞれの技法を紹介したサンプルもあり、非常に勉強になった展覧会でした。金泥・箔押し・撒きつぶしがどう違うのか、裏箔の有り無しで絵の印象がどう変わるか、もう目から鱗。日本画を見る目が変わりましたね。企画力の勝利です。そして何より、絵画表現としての金と銀の表現の幅の広さと先人の知恵と技術に感服しました。
7位 『名画を切り、名器を継ぐ』(根津美術館)
蒐集欲のために絵巻や書画を切断してしまったり、ただ美しいという見た目のために故意に茶碗や壷にヒビを入れたりして、そこまでしなくても…、そんなことをしてしまったら…、という気持ちもあるのですが、切断したり、改装したり、改変したりという文化が日本美術にはあるのも事実で、その点に着目したということでとてもユニークな展覧会でした。
8位 『探幽3兄弟展』(板橋区美術館)
探幽の陰に隠れてなかなかスポットの当たらない弟、尚信・安信と合わせ、3兄弟の画業を一堂に観られ、比較ができたという点で、これも興味深い展覧会でした。それぞれに個性があり、技術があり、あらためて江戸狩野派の鉄壁さを思い知ったのと、最近個人的に興味のあった尚信の作品を多く見られたということでも大満足でした。
9位 『京へのいざない(第1期)』(京都国立博物館)
京博に新しくオープンした平成知新館のオープニング展。念願だった京博所蔵の国宝や重文の数々を観られたということだけでなく、建物のデザインやムード、照明、作品の見せ方も含めて、強く印象に残った展覧会でした。
10位 『白絵 -祈りと寿ぎのかたち-』(神奈川県立歴史博物館)
全くのノーマークだったのですが、ネット上で評判を目にして観に行った展覧会。古来より白い色に込められた人々の思いを“白絵”を中心に展観し、美術的にだけでなく、文化的にも民俗学的にも、とても興味深かったです。非常に良い企画展だったと思います。
気づけば今年は日本画系ばかり。西洋画も入れたかったのですが…。西洋画の美術展では、『オルセー美術館展』、『ヴァロットン展』、『オランダ・ハーグ派展』、『ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900』、『ラファエル前派展』あたりが個人的にはとても好きでした。
ちなみに今年アップした展覧会の記事で拙サイトへのアクセス数は以下の通りです。
1位 『オルセー美術館展』
2位 『ヴァロットン展』
3位 『バルテュス展』
4位 『江戸絵画の真髄』
5位 『菱田春草展』
6位 『ザ・ビューティフル』
7位 『キトラ古墳展』
8位 『ジャック・カロ展』
9位 『華麗なるジャポニスム展』
10位 『ボストン美術館 ミレー展』
拙いサイトにも関わらず、今年も一年間足をお運びいただきありがとうございました。来年はさらにいろんな展覧会を観て、充実した内容にできればと思っています。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
【参考】
2013年 展覧会ベスト10
2012年 展覧会ベスト10
こんにちは。桂月、櫻谷、春草、名画名器と重なりました…
返信削除趣味が近いのかもしれません(笑
芳中も楽しい展示でしたね。
そして来年は琳派イヤー、また堪能したいものです。
今年もお世話になりました。
来年もどうぞ宜しくお願い致します。
>はろるどさん
返信削除こんにちは。
そうですね、日本画の趣味が近いみたいですね(笑)
来年は琳派の展覧会でどんな作品が見られるか今から楽しみです。
現代美術ももっと勉強しなければと思ってます。
今年もありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。