本展は、画面から感じられる“水の音”をテーマに、川や海、滝などの情景を描いた日本画を振り返るという企画展。歌川広重や近代日本画家、そして現代の千住博など、山種美術館所蔵のコレクションを中心に集められています。
会期中、一部作品で入れ替えがあるようですが、常時約50点の作品が展示されています。屏風など比較的大きな作品も多く、見応えがあり、またどの作品も“水の音”をテーマに選ばれてるというだけあって、清涼感いっぱい。波の音、川のせせらぎ、水面を渡る涼風を感じられて、長い坂道でかいた汗もスーッと引いていきます。
さて、会場の構成は大きく4つの章から成っています。
第1章 波のイメージ
第2章 滝のダイナミズム
第3章 きらめく水面
第4章 雨の情景
最初に登場するのが奥村土牛の代表作「鳴門」。あらためて観てみると、見た目の色の美しさやうず潮の力強さだけでなく、シンプルなんだけれどそれを感じさせない周到な構図や、非常に卓越した筆致に唸ってしまいました。
奥村土牛 「鳴門」 昭和34年(1959)
今回の展覧会で一番感銘を受けたのが山元春挙の「清流」で、渓谷の深くて青い水の美しさが、ただ美しいというのではなく、川の底まで光が届くような透明感のある美しさが表現されていて絶品でした。山元春挙というと京都画壇の重鎮。会場の後半にも春挙の作品が登場します。
小堀鞆音という方はもしかすると初めて観るかもしれません。調べてみると、歴史画を得意とし、「安田靫彦、前田青邨、松岡映丘らに決定的影響を与えた」とWikiにあります。那須宗隆は那須与一のこと。源平合戦を描いた作品ですが、やまと絵を基本としながらも視点が型にはまってなというか、構図が斬新で面白いですね。
小堀鞆音 「那須宗隆射扇図」 明治23年(1890)
本展の話題のひとつが、建仁寺方丈の襖絵と同一主題の屏風で、22年ぶりに六曲二双全てを公開するという橋本関雪の大作「生々流転」。四隻二十四扇という大屏風で、まるで「大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けてさけて散るかも」という趣き。大海原の荒々しさと大きさを見事に表現しています。
白波の「生々流転」の奥には、鮮烈な紅葉と清らかな渓流が美しい奥田元宋の「奥入瀬(秋)」。さらに左を見れば、青々とした海の色と渦潮の勢いに吸い込まれてしまいそうな川端龍子の「鳴門」。どの作品も臨場感があり圧倒されます。
奥田元宋 「奥入瀬(秋)」 昭和58年(1983)
川端龍子 「鳴門」 昭和4年(1929)
圧巻は第2章で、右を見ても左を見ても後ろを振り返っても滝、滝、滝。滝のマイナスイオンを浴びているようで清涼感いっぱいです。千住博の代名詞ともいうべき「ウォーターフォール」をはじめ、土牛の「那智」や横山操の「滝」、そして牛尾武の「晨響」が何と言っても素晴らしい。
奥村土牛 「那智」 昭和33年(1958)
そのほか、木目を波紋に見立てた千住博の初期の作品「水 渓谷」、光琳の「松島図屏風」を思わせる川﨑鈴彦の「潮騒」、装飾的技巧が面白い加山又造の「波濤」、雨に濡れた海棠の花が美しい小茂田青樹の「春雨」、小野竹喬の最晩年の名作「沖の灯」などが印象的でした。
小野竹喬 「沖の灯」 昭和52年(1977)
まだまだ暑い日が続きますが、都会で避暑と決め込むにはオススメの展覧会です。絵を観て涼しげな気持ちになるというのもいいものです。
【水の音 -広重から千住博まで-】
2014年9月15日(月・祝)まで
山種美術館にて
千住博の滝
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