2012/04/20
平成中村座 四月大歌舞伎
平成中村座で『法界坊』を観てきました。
東京でサクラの満開宣言が出た日の翌日。朝からの晴天で、青空をバックにそびえ立つスカイツリーと満開のサクラを愛でながら、平成中村座に向かいました。
昨年11月から始まった平成中村座の長期公演は、勘三郎の発病前から組まれていた企画ですが、病気のこともあってか、これまでは勘三郎にあまり負担の少ない演目が続いていたような気がします。それが今月は、勘三郎の当たり役であり、中村座の代表作ともいうべき『法界坊』。出ずっぱりですし、元気でないとできない役です。地元浅草のお話ですから、どこかでやるんだろうなとは思ってましたが、大丈夫なんだろうか?はたして完全復活なるか?という期待と不安で、幕が開くまではかなりドキドキでした。
ところが、そんな心配をよそに、勘三郎のテンションの高いこと高いこと。見る限りとても元気そうでホッと一安心。無茶苦茶ノッてる様子で、アドリブも結構入ってるみたいだし、観客へのサービス精神もあいかわらず旺盛。いつもの勘三郎が戻ってきたという感じでした。
前半の愛嬌たっぷりの法界坊と後半の不気味な狂気の法界坊。喜劇でありつつ、人間の性や業のドロドロとしたところがあり、ドタバタもあるけど、立ち回りもあり、現代劇のようで、しっかりと歌舞伎である。生臭坊主で、本当は悪の匂いがプンプンする法界坊なのに、勘三郎が演じると、なんとも憎めない魅力がそこに生まれます。この人にしかできない役というか、ほかの人では出せない味というか。何度観ても飽きない面白さです。
今月は客演がなく、純粋に平成中村座のメンバーといこともあって、“あうん”の呼吸、チームワークの良さを感じました。奔放に暴れまくる勘三郎や勘十郎役の笹野高史に対し、要助の勘九郎、分姫の七之助、お組の扇雀、甚三郎の橋之助がしっかりと受け止める呼吸のよさ。さすが何度も繰り返しかかる芝居だけのことはあるなと思います。コクーン歌舞伎も手掛ける串田和美が演出ということもあって、黒子が活躍したりと歌舞伎にはない遊びの要素も。番頭役の亀蔵の怪演も平成中村座ならではで大いに笑えました。
最後はお決まりの舞台うしろの扉が開いて、スカイツリーの前で大立ち回り。この日はサクラも満開ということもあって、目の前には書割でない本物のサクラが。お客さんも大盛り上がりでした。カーテンコールも2回あり、勘三郎さんも挨拶をされました。満開の季節にこうして 『法界坊』を演じられたことで、勘三郎もさぞ感慨深かったことでしょう。観客のスタンディングオベーションは、勘三郎の完全復活を祝う意味も込められていたと思います。
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