2018/10/20

京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ

東京国立博物館・平成館で開催中の『大京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』を観てきました。

大報恩寺は京都・洛北にある古刹。千本釈迦堂という通称で親しまれています。毎年12月に行われる大根焚きは有名ですね。

それほど大きなお寺ではありませんが、応仁の乱などの戦火を奇跡的に免れた本堂は鎌倉初期の創建時のまま。本堂の柱には応仁の乱のときの刀傷なども残されていて、京洛最古の木造建築物として国宝に指定されています。

ちょうど昨年の秋、櫻谷文庫を訪れた際、大報恩寺も拝観しました。北野天満宮と上七軒とは隣り合わせのような位置にあり、櫻谷文庫(不定期公開)からも徒歩圏内なので、一緒に回るといいと思いますよ。

さて、今回の展覧会は平成館の2階を上がって右を『大報恩寺展』、左を『マルセル・デュシャンと日本美術』に分けていて、いつもの平成館の特別展に比べると半分のスペース。その分、入場料もちょっとだけ安い。


会場は3つに章立てされています。
大報恩寺の歴史と寺宝-大報恩寺と北野経王堂
聖地の創出-釈迦信仰の隆盛
六観音菩薩像と肥後定慶

まず最初は寺の歴史から。ここで展示に多くスペースを割かれているのが、北野経王堂のこと。北野経王堂は北野天満宮の南側にあった大きなお寺で、本堂は東大寺大仏殿とほぼ同じ規模だったとか。明徳の乱で討たれた山名氏清を供養するために足利義満が建てたもので、江戸時代に荒廃し、その遺物は大報恩寺に残されています。狩野永徳の「洛中洛外図屏風」には北野経王堂が描かれていて、そのパネルと模本が展示されていました。


本展の目玉は、通常非公開の本尊「釈迦如来坐像」。年に何度かご開帳がありますが、本堂内陣に安置された仏像は遠目でしか見ることができないといいます。その本尊が間近で観られるだけでも行く価値が十分です。行快の手になる「釈迦如来坐像」は台座も光背も造像当初のまま。金色にか輝くその姿は800年も前の仏像とは思えないほど美しい。丸みの強い面部や目尻の上がった目の形は行快の特徴なのだそうです。

そして、本尊「釈迦如来坐像」を囲むように配置されているのが快慶の「十大弟子立像」。十大弟子とは釈迦の弟子の中でも特に優れた十人の弟子のこと。昨年、奈良国立博物館で開催された『快慶展』に出品されなかった快慶の代表作です。本展では「十大弟子立像」を快慶一門によるものとしていますが、「目犍連」と「優婆離」は像内の銘文に快慶の名があり、快慶作といわれています(「優婆離」には快慶とともに行快の名も書かれている)。

照度を落とした展示空間で、計算された照明のもと「十大弟子立像」観るとその素晴らしさが際立ちます。リアルなまでの高度な表現力は驚くばかりで、運慶の写実様式に比べても遜色ない写実的な肖像彫刻として優れています。360度展示なので、大報恩寺の霊宝殿では観られない後ろ姿まで観られるのがいいですね。一部にきれいな模様や鮮やかな彩色も残っていて、造像当初はさぞカラフルだったんだろうなと思います。

本堂の仏後壁画のパネル解説のある通路を通ると今度は肥後定慶作の「六観音菩薩像」。肥後定慶は康慶の弟子(運慶の次男説もあり)とされ、同じ慶派仏師で興福寺に所縁の深い“定慶”と区別する意味で“肥後定慶”と呼ばれています。慶派の力強く男性的な鎌倉彫刻とはまた違うボリューム感、個性的な面貌表現がユニーク。中世に遡る六観音で台座・光背が完存する唯一の作例だそうです。10/30以降は何故か光背が外されてしまうらしいのですが、光背の細かな彫刻も見事なので、これはぜひ光背が付いている状態で観て欲しいですね。

ちなみに、六観音のうち聖観音像のみ写真撮影が可能です。


ほかにも鋳造の原型が行快の可能性があるという「誕生釈迦仏立像」や、丸い襞とシャープな鎬の翻波式衣文が美しい「千手観音菩薩立像」など仏像の優品が来ています。

ただ本尊以外の仏像は大報恩寺の霊宝殿でも観られるので、何か期待以上のものがあるかというとそうでもなかったというのも正直な感想。特に残念だったのは、おかめさんについて何も触れられてなかったこと。千本釈迦堂といえばおかめ信仰。美術品でないという理由で展示されなかったのかもしれませんが、千本釈迦堂を象徴する“おかめ”が一つもないのは片手落ちなんじゃないかなぁと思いました。お寺に奉納された様々な“おかめ”がズラーっと飾られた様は感動しますよ。


【特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ】
2018年12月9日(日)まで
平成館 特別展示室第3室・第4室にて


運慶・快慶と慶派の美仏 (エイムック 4166)運慶・快慶と慶派の美仏 (エイムック 4166)

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