ツイッターなどを見ていると、ご覧になられた方の評判もよく、何度も足を運ばれる人もいて、わたしも早く観に行かなければと思っていたのですが、場所的にちょっと不便なところということもあって、すっかり出遅れてしまいました。
野間記念館は目白の椿山荘のとなり。永青文庫の近くにあります。わたしは昔、間違って講談社の本社(護国寺)に行ってしまったことがあるので、注意してくださいね(そんな人いないでしょうけど)。野間記念館のウェブサイトでは目白駅や江戸川橋駅からのルートが案内されてますが、新宿駅からもバスが出てて、だいたい30分ぐらいで行けます。
「十二ヶ月図」の色紙は野間記念館の所蔵品カタログで観たことがあるのですが、実物を観るのは今回が初めて。昭和初期、講談社の初代社長・野間清治が当時活躍をしていた日本画家に、館内の解説を借りると「手当り次第に声をかけて」描いてもらった色紙なんだとか。その数なんと約500タイトル、6000枚以上!
本展で展示されているのは、川合玉堂や山口蓬春、堂本印象、松岡映丘、荒木十畝、徳岡神泉、福田平八郎、小茂田青樹、山口華楊、鏑木清方、伊藤深水、小杉放庵等々、昭和初期を代表する37人の日本画家の色紙。色紙は12枚1組で、1月から12月まで、その月その月の季節の花鳥や風俗が描かれています。色紙といっても絹本や金泥地のものなど大変立派なもので、もともとは講談社の雑誌等で使用する絵として考えていたものなのだそうですが、どれも一様に完成度が高いのに驚きます。
小茂田青樹 「十二ヶ月図」より(三月・桜、六月・梅雨)
昭和3年(1928)
昭和3年(1928)
上村松園 「十二ヶ月図」より(五月・藤娘、三月・雛)
昭和2年(1927)
昭和2年(1927)
十二ヶ月というお題以外は自由なので、それぞれの画家の持ち味が出ていてとても面白い。基本的には季節の花鳥が多いのですが、美人画が得意な画家は女性が多く描かれてますし、風景画が得意な画家は風景が自ずと多かったりします。
玉堂はいかにも玉堂だし、芋銭は芋銭だし、映丘は映丘だし、清方はやはり清方。観てて飽きません。それぞれみんな良かったのですが、個人的には福田平八郎、小茂田青樹あたりが大正から昭和にかけてのモダンな日本画の雰囲気が味わえて好きでした。色紙に女性の顔を大胆にアップで描いた伊藤小坡も面白かったです。それぞれが思い思いに描いている様子を見ると、十二ヶ月という画題に画家の創作意欲をかき立てるものがあったのだろうなと感じます。
河合玉堂 「十二ケ月図」より(十月・収穫、十二月・雪)
大正15年(1926)
大正15年(1926)
小川芋銭 「十二ヶ月図」より(七月・踊、十月・後の雛)
昭和7年(1932)
昭和7年(1932)
たまたま同じ日に山種美術館で『日本画の教科書 東京編』を拝見したのですが、本展にも出品されている画家(玉堂、映丘、清方、深水、蓬春、十畝、青樹、吉村忠夫、落合朗風)が多くあって、とても興味深く感じました。たとえば玉堂の鳥瞰の光景なんて共通します。両方とも観るとかなり充実した鑑賞体験になると思う。大正から昭和初期の日本画が好きな人にはオススメ。
【色紙「十二ヶ月図」の美世界】
2017年3月5日(日)まで
講談社野間記念館にて
鏑木清方 江戸東京めぐり
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