ところで、拙ブログでは今年は71の展覧会を紹介することができました。今年は特に夏あたりから仕事が忙しく、思うように展覧会も回れず、結構見逃した展覧会があったり、観てもブログに書けずじまいのものもあったり、去年や一昨年に比べてペースが落ちてしまったのが残念でした。
そんな今年もたくさんの素晴らしい展覧会に巡りあうことができました。日本美術では今年は(個人的に)新発見的な絵師・画家の展覧会が少なく、割と名の知れた絵師・画家の展覧会が多かったように思います。西洋美術は自分の好みのものしか観なかったので、もう少し足を運べばよかったなと少々後悔してるところもあります。都内の大きなハコではブロックバスター的な展覧会も多く、それはそれで楽しいのですが、混雑するのが難点。その分、小さな美術館や地方の美術館・博物館に好企画が目立ち、そちらの方が惹かれることが多くありました。今年は地方にも少し足を運びましたが、さすがにそうは回れず臍を噛む思いもたびたびでした。
で、2016年のベスト10はこんな感じになりました。
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1位 『我が名は鶴亭』(神戸市立博物館)

今年のベスト5はどれを1位にしてもいいぐらいなのですが、一つだけまたもう一度観られるのなら、これを選ぶと思います。江戸絵画の大きなムーブメントとなる南蘋派のキーとなる重要な絵師であり、当時の美術界のトレンドリーダーだったにも関わらず、なかなか取り上げられることのなかった鶴亭にスポットを当てたという点でまず高評価。そして何より、作品の良さもあるのですが、展覧会の構成や見せ方、作品解説などから学芸員さんや運営サイドがいい展覧会を作ろうとする強い思いや深い愛情、そして努力がビシバシ伝わってきて、ほんと素晴らしい展覧会でした。
2位 『岩佐又兵衛展』(福井県立美術館)

10年ぶりの岩佐又兵衛展ということで待ちに待った展覧会。そしてその高い期待に十分応える素晴らしい展覧会でした。旧金谷屏風の現存全作が出品されるなど作品が非常に充実していて、ある意味いま考えられる岩佐又兵衛展の理想的なラインナップだったと思います。京都・福井時代に作品を絞った企画なのでしょうがないのですが、欲をいえば江戸以降の作品も観たかったので、いつの日か大回顧展が開かれることを願って、今回は2位としました。
3位 『鈴木其一展』(サントリー美術館)

これまでこつこつと観てきた其一の作品が一堂に観られるという贅沢さ。代表作という代表作が勢揃いし、琳派にとどまらず、さまざまな方向から其一を多角的に捉えるなど展覧会の構成も良かったと思います。其一が琳派の枠に囚われず江戸絵画の総括的な要素が強いこともよく分かりました。其一の評価を決定づける重要な展覧会になったんじゃないでしょうか。今年もサントリー美術館は素晴らしかった。
4位 『初期浮世絵展 -版の力・筆の力-』(千葉市美術館)

わたしはそもそも浮世絵はそんなに好きじゃなかったのですが、この展覧会でその考えは180度変わりました。なかなか見ることのない江戸初期の風俗画や人気浮世絵師の影に隠れてあまりスポットの当たらない絵師の作品も充実していてとても面白かったし、なにより初期の浮世絵がこんなにも魅力的だと思ってもいませんでした。浮世絵の爛熟期に向けて少しずつ完成されていく過程が見えて、非常に興味深いものがありました。
5位 『浦上玉堂と春琴・秋琴』(千葉市美術館)

先月、今月と2度観に行ったこともあり、まだ印象も鮮明な展覧会。玉堂の老いてなお気力漲る画面、その溌剌とした筆の運び、そして前衛的ともいえるブッ飛び方にはただただ圧倒されました。国宝の「東雲篩雪図」も感動的でした。玉堂の何にも縛られない自由闊達な水墨を観てると不思議と気持ちまで軽くなります。そして息子・春琴がまた良かった。その楚々とした色彩、筆致も柔らかく、端正で上品。非常に満足度の高い展覧会でした。
6位 『国宝 信貴山縁起絵巻』(奈良国立博物館)

ここ数年で相次いで観た四大絵巻の展覧会の中では断トツに面白かった。全巻全て一度に観られたことはもちろん、縁起の成り立ちや聖徳太子信仰、「辟邪絵」などを取り上げた構成も興味深く、とても好奇心をくすぐりました。ちょうど伺った日は幸いにも空いていて、絵巻をほぼ独占状態で観られたのも良かった。
7位 『カラヴァッジョ展』(国立西洋美術館)

西洋画からひとつだけ。個人的にも大好きなカラヴァッジョ。展覧会の開催前に真筆と判定された「法悦のマグダラのマリア」が話題となったり、カラヴァッジョの人となりを示す証言資料も紹介されていたり、カラヴァジェスキを交えた構成も良く、10数年前のカラヴァッジョ展に比べても充実した内容になっていました。カラヴァッジョに期待するものを十分堪能でき非常に満足度の高い展覧会でした。
8位 『黒田清輝展』(東京国立博物館)

今年の展覧会のひとつのキーワードは近代洋画だと思うのですが、いろんな意味で話題になったのが黒田清輝で、なんだかんだ言って日本の近代洋画の中心にいた人なので、彼のことを知らずして何も語れません。今年いくつか観た明治の近代洋画の展覧会も黒田と比較することで面白みが増したというのもあると思います(千葉市美の『吉田博展』を見逃したのが返す返すも残念)。割と観る機会の多い黒田ですが、その画業を整理して見せてくれたという点でこの展覧会はとても良かったと思います。
9位 『勝川春章と肉筆美人画』(出光美術館)/『勝川春章-北斎誕生の系譜』(太田記念美術館)

歌川派ばかりがやたらと取り上げられる昨今、敢えて勝川春章を大きく取り上げ、しかも2館で内容を上手く分担して同時期に開催をしたということで、非常に面白い企画になったと思います。同時代の人気絵師の影に隠れがちな春章ですが、役者絵や相撲絵の面白さ、肉筆画の素晴らしさに気付くことができましたし、ちょうど『初期浮世絵展』を観た後ということもあり、大変関心を持ってみることができました。
10位 『動き出す!絵画 ペール北山の夢』(東京ステーションギャラリー)

今年の大穴とおっしゃてた方がいましたが、正しくダークホース的な展覧会でした。ペール北山って誰?から始まったのですが、蓋を開けてみるとこれがとても面白く、作品のセレクションも良くて、明治・大正の美術運動に情熱を燃やした芸術家たちの熱い想いが伝わってくる大変素晴らしい展示内容でした。あまり話題にならなかったのが残念でした。
どこかに入れたいと思いつつ、残念ながら圏外となってしまった展覧会としては、日本美術・洋画では『恩地孝四郎展』、『安田靫彦展』、『原田直次郎展』、『髙島野十郎展』、『いま、被災地から』、『大仙厓展』、『円山応挙 - 「写生」を超えて』、『禅 - 心をかたちに』、『色の博物誌』、『小田野直武と秋田蘭画』、西洋美術では『ボッティチェリ展』、『ジョルジョ・モランディ展』、『ルノワール展』、『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』、『クラーナハ展』(以上観た順)が強く印象に残っています。
そして今年最大の話題といえば、伊藤若冲。今年の展覧会を語る上で『若冲展』は外せなく、当サイトでも断トツのアクセス数がありました。これ以上ないぐらいに素晴らしい作品が揃って大変見応えのある展覧会でしたが、逆に言えばあれだけ傑作が揃えば悪いわけがないわけで、ただ作品を並べただけというような企画内容と、最早イベント化して展覧会とは何だろうと考えさせられることもあり、個人的にはあまり評価してません。若冲の近年の展覧会では『若冲アナザワールド』や『若冲と蕪村』の方が見るべきものがあったと思います。
ちなみに今年アップした展覧会の記事で拙サイトへのアクセス数は以下の通りです。
1位 『若冲展』
2位 『カラヴァッジョ展』
3位 『ルノワール展』
4位 『岩佐又兵衛展』
5位 『勝川春章と肉筆美人画』
6位 『鈴木其一展』
7位 『初期浮世絵展 -版の力・筆の力-』
8位 『黒田清輝展』
9位 『我が名は鶴亭』
10位 『ほほえみの御仏』
来年もすでに楽しみにしている展覧会がいくつかあって、今から待ち遠しいのですが、どれだけ時間が工面できるか、それだけが悩ましいところです。
今年も一年間、こんな拙いサイトにも関わらず、足をお運びいただきありがとうございました。来年はどこまで展覧会に回れるか分かりませんが、いろいろと素晴らしい展覧会をご紹介できればと思います。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
【参考】
2015年 展覧会ベスト10
2014年 展覧会ベスト10
2013年 展覧会ベスト10
2012年 展覧会ベスト10
美術展ぴあ2017 (ぴあMOOK)
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