2015/09/26

琳派と秋の彩り

山種美術館で開催中の『琳派400年記念 琳派と秋の彩り』を観てまいりました。

今年は琳派400年ということもあり、琳派関連の展覧会が相次いでいますが、本展は山種美術館所蔵の作品を中心に、琳派と、琳派の流れを受け継ぐ近代日本画を展観していきます。

琳派は華やかな装飾性やデザイン性にとどまらず、季節の花々や生き物など自然を描いた表現性や、古典文学に材を取った物語性もまた魅力のひとつ。本展ではそうした琳派や近代日本画の中から、秋をテーマにした季節感あふれる作品が集められています。

山種美術館は比較的訪れてる方ですし、琳派が絡んだ展覧会はだいたい観ているのですが、今回はこれまであまり観たことがない作品が多い気がするなと思ったら、琳派の作品26点中14点(一部前後期で入れ替えあり)は個人蔵のものなのですね。山種美術館の琳派コレクションはクオリティが高いのですが、今回はさらに充実のセレクションとなっていて、なかなか楽しめました。


会場は3つの章で構成されています:
第1章 琳派の四季
第2章 琳派に学ぶ
第3章 秋の彩り

俵屋宗達[絵]・本阿弥光悦[書] 「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」
17世紀(江戸時代) 山種美術館蔵

会場の最初に展示されているのが、宗達による金銀泥の鹿の下絵に光悦が『新古今和歌集』の一首を書写した「鹿下絵新古今集和歌巻断簡」。もとは一巻の巻子本で、現在は断簡となり、山種美術館をはじめ、複数の美術館や諸家に分蔵されているといいます。詠まれているのは西行の和歌。鹿は秋の季語でもあります。同じコンビでは「四季草花下絵和歌短冊帖」もあって、これがまた光悦の書が美しく、思わず見惚れてしまいます。

伝・俵屋宗達 「槙楓図」
17世紀(江戸時代) 山種美術館蔵

宗達では有名な「槇楓図」をはじめ、たらし込みを多用した「蓮池水禽図」と「芦鷺図」が印象的。ただどうでしょう、いずれも宗達と断定されず伝承なので、特に「蓮池水禽図」は同題の国宝と少々雰囲気が異なるのが気になるところ。

光琳は残念ながら出てなかったのですが、乾山が2点あって、乾山のぼってりした素朴な筆致が面白い。面白いといえば、中村芳中のほのぼのとした線で鶴を描いた「老松立鶴図」も相変わらずユーモラス。

尾形乾山 「定家詠十二ヶ月和歌花鳥図(二月)」
寛保3年(1743) 個人蔵

抱一は出品作が一番多くて、中でも「秋草鶉図」が白眉。意匠化されたススキや月、そして秋草や鶉の豊かな表現。宗達や光琳とも違う、洗練された美しさ、瀟洒な味わいが魅力です。

抱一の「月梅図」も印象的。勢いのある筆による枝に光琳梅。金泥の外隈をつけた月の表現がまたいい。「菊小禽図」と「飛鳥白鷺図」も季節感のある掛軸。もとは“十二ヶ月花鳥図”のそれぞれ9月と11月に相当するものだったとか。全幅揃っていればさぞ壮観だったでしょうね。

初見のものでは「仁徳帝・雁樵夫・紅葉牧童図」の三幅対が素晴らしいですね。「雁樵夫」は季節が春で、背負った薪に桜の枝を挿しているという洒落様。

酒井抱一 「秋草鶉図」(重要美術品)
19世紀(江戸時代) 山種美術館蔵

酒井鶯蒲 「紅白蓮・白藤・夕もみぢ図」
19世紀(江戸時代) 山種美術館蔵

其一の「牡丹図」は其一にしては若干色が抑え目な感じもしますが、それでも中国画を思わせる艶やかな牡丹が美しい。幹はたらし込みを上手く取り入れています。抱一の弟子・酒井鶯蒲による本阿弥光甫の代表作の模写も目を惹きます。

鈴木其一 「牡丹図」
寛永4年(1851) 山種美術館蔵

≪琳派に学ぶ≫では<たらし込み-墨の滲みとグラデーション>として、速水御舟や小林古径、菱田春草の作品が紹介されています。犬の毛のブチをたらし込みで表現した宗達と古径の絵が並んでいて、琳派の域を超え、日本画に広く転用されている技法であることがよく分かります。

<琳派の装飾性と意匠性>では、加山又造の豪華な「華扇屏風」や福田平八郎 「彩秋」が琳派を再構成していて面白い。小林古径の「夜鴨」は同じく鴨の飛ぶ光琳の図様を取り入れていて、参照元の光琳の作品がパネル展示されています。

福田平八郎 「彩秋」
昭和18年(1943) 山種美術館蔵

ほかにも群青中毒の木々にオレンジ色の柿の実が点々とした速水御舟の「山科秋」や、紅葉した山並みが美しい小茂田青樹の「峠路」、竹内栖鳳や橋本明治の柿の絵など、秋の季節感に溢れた絵が並びます。奥の第二会場には<小さな秋>と題し、猫や栗鼠、雀といった小動物を描いた作品が並び、こちらも秋の風情を感じます。


【琳派400年記念 琳派と秋の彩り】
2015年10月25日(日)まで
山種美術館にて


もっと知りたい本阿弥光悦: 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)もっと知りたい本阿弥光悦: 生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

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