今年はいつもの別館が改修工事中のため、本館で一番大きな宴会場「平安の間」で行われています。
そのホテルオークラ本館もこの夏を最後に建て替えのため取り壊しになるので、本展が今のホテルオークラでは最後のイベント。見納めもあってか、会場は多くのお客さんで賑わっていました。
今回のテーマは<美の宴>。美しい音色を感じる<奏でる>、華やかに彩る<舞い踊る> 、人々が集い楽しむ<集う>の三つをテーマに、その名の通り琳派から栖鳳や大観、松園まで、名品の数々がホテルオークラ本館の最後の宴を華やかに盛り上げています。
第1章 ~奏でる~
三味線の稽古をする喜多川歌麿の「三美人」や舞の支度をする上村松園の「舞支度」といった和楽器や西洋の楽器がモチーフに描かれている作品が並びます。松園や池田輝方、木谷千種、橋本明治といった美人画で定評のある画家の作品が目立ちます。
上村松園 「虫の音」
明治42年(1909) 松伯美術館蔵
明治42年(1909) 松伯美術館蔵
本展は松園の作品が充実していて、全部で9点が出品されています。来場者の9割は女性で、女性の方の松園人気は高いので、みなさん作品を観るたびにため息が漏れ聞こえます。
静かな三味線の音にまぎれて虫の音が聞こえてきそうな松園の「虫の音」なんてとてもいいですね。祇園の舞妓をモデルに描いたという「舞支度」もうっとりする美しさ。
上村松園 「舞支度」
大正3年(1914) ウッドワン美術館蔵
大正3年(1914) ウッドワン美術館蔵
第二章 ~舞い踊る~
日本舞踊や歌舞伎、能楽に舞楽とさまざまな“舞い”をテーマにした作品が並びます。日本画や近代洋画の中にアンリ・マティスの「ジャズ」が並ぶのは意表を突きますが面白い取り合わせ。ここでは竹内栖鳳の代表作「アレ夕立に」が出てるほか、伊東深水の「鏡獅子」や宗達派の「扇面流図」が印象的でした。建て替え前の歌舞伎座にいつも飾られていた岡田三郎助の「道成寺」にも2011年の『知られざる歌舞伎座の名画』展以来久しぶりに再会。片岡球子の「宮廷の舞」はさすがのインパクト。
竹内栖鳳 「アレ夕立に」
明治42年(1909) 高島屋史料館蔵
明治42年(1909) 高島屋史料館蔵
第三章 ~集う~
人々の集いもあれば、花と鳥、季節と季節の集いも。清水登之の「チャイルド洋食店」の街のにぎわいや、宮川長亀の「上野観桜図・隅田川納涼図」の江戸のにぎわい、今村紫紅の「護花鈴」の醍醐の花見のにぎわい。にぎわいといえば、面白かったのが隣りあった河鍋暁雲「百布袋之図」と藤井松林の「百福之図」で、遊興にふける布袋やお多福がびっしり描かれ、わいわいと盛り上がる楽しげな声が聞こえてきそうです。これが宮内庁の所蔵とは。
清水登之 「チャイルド洋食店」
大正12-13年(1923-24) 府中市美術館蔵
大正12-13年(1923-24) 府中市美術館蔵
ほかにも、靄に包まれた山や川の風景が美しい下村観山の「嵐山・加茂川」や、栖鳳の門人という石崎光遙の大胆な構図の「藤花孔雀之図」が印象的。抱一の「四季花鳥図屏風」も琳派らしい華やかさが見事。
今村紫紅 「護花鈴」
明治44年(1911) 霊友会妙一コレクション蔵
明治44年(1911) 霊友会妙一コレクション蔵
酒井抱一 「四季花鳥図屏風」
文化13年(1816) 陽明文庫蔵
文化13年(1816) 陽明文庫蔵
会場がいつもの別館ではないので、スペースの関係もあり、作品の点数は若干少なめでしたが、ホテルオークラ最後を締めくくるイベントとして優品の数々が集められています。なかなか足を運べない地方の美術館や、関係者でないと通常は観られない企業所有のものなど、こうして観られるのはほんと有り難いですね。
【第21回 秘蔵の名品 アートコレクション展 美の宴 -琳派から栖鳳、大観、松園まで-】
2015年8月20日まで
ホテルオークラ本館1階 平安の間にて
上村松園画集
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