前の記事を見ると、去年の12月から何も書いてないのですね。一応時折り歌舞伎座には行ってるのですが…。
今月の昼の部は、菊之助が読売演劇大賞を受賞するなど高い評価を受けた『摂州合邦辻』の玉手御前を約4年半ぶりに演じるというのが話題です。
今回は「合邦庵室の場」のみの上演。継子・俊徳丸に恋をした玉手御前が俊徳丸の後を追いかけ、父・合邦の庵室に辿りつくというお話です。
菊之助は玉手御前も3度目なので、とても演技がこなれているというか、動きも全て計算され尽くしてるんだろうなと思わせます。日生の時は汗か涙か化粧が落ちるぐらい力が入っていましたが、今回はそのようなこともなく、十分に激しい感情を出しているとはいえ前回ほどの激情は感じませんでした。激しい役なのに冷静に演じているという印象を受けました。
自分でも気になって、家に帰って日生劇場の公演の録画を見直したのですが、やはり前回の菊之助の玉手には何かが取り憑いたような凄まじさがあります。情念というか、情欲というか。あんたほんとは俊徳丸を好き好きでたまらないでしょみたいな。それが今回は薄かったのかなという気がします。
奇しくも演劇評論家の渡辺保さんが今回の玉手御前を「空虚」「色っぽくない」と言っていましたが、そういうことかもとも感じます。「最近立役ばかり手がけて地の芝居の色気が薄くなったためか」という言葉は、先だってテレビで玉三郎が案に菊之助を批判したことに通じているかもしれません。
ただ、それでも十分素晴らしかったし、この役は菊之助の当たり役としてこれからも磨かれていくんだろうなと思います。
今月はもうひとつ、通し狂言で『天一坊大岡政談』。こちらも主役は菊之助。菊之助や器用だし、何を演じさせても上手くこなしてしまうので、十分観ていられますが、物語としていま一つというか、これは演出の問題もあるのかもしれませんが、少々冗長な感じがします。黙阿弥らしい流れやキレもあまり感じられませんでした。まあ、観に行ったのがまだ幕が開いて数日だったので、これから改善されていくのでしょう。
今月は菊之助が大活躍。ただ今月は團菊祭なので、昼の部に限っていえば、成田屋の存在が薄く、菊五郎劇団に海老蔵が客演したという感じ。しかもその海老蔵もいまひとつ。ちょっともったいない気がします。
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