黒田記念館は東京国立博物館の正門を出て東京芸術大学方面に進み、ちょうど最初の交差点の現在1階が上島珈琲店になっているレンガの建物。
日本近代洋画の父・黒田清輝の、遺産の一部を美術の奨励事業に役立てるようにという遺言により、黒田記念館として昭和3年(1928年)に竣工。黒田清輝の油彩画126点、デッサン170点のほか写生帖や書簡などを所蔵しています。
今回の改修工事で新設された<特別室>では、リニューアルオープン記念として、黒田の代表作「湖畔」、「智・感・情」、「読書」、「舞妓」の4作品が公開されています。
<特別室>は年3回のみの限定公開。常設展にあたる<黒田記念室>は休館日を除き通年公開されるようです。しかも観覧無料。
重要文化財 黒田清輝 「智・感・情」
明治32年(1899) (1/12まで展示)
明治32年(1899) (1/12まで展示)
「智・感・情」は向かって右から「智」「感」「情」。パリ万博で銀賞を受賞し、日本の洋画では最も早い時期に海外で高い評価を得た作品といわれます。実は特別室の4作品の中でこれだけが初見。その独特のポーズやこの時代には珍しい裸体(しかも西洋人のようなプロポーション)の構図から西洋画の三幅対のように思っていましたが、実際に観てみると何か三尊の仏像のような、どこか東洋的な印象を強く受けました。輪郭線がくっきりとしているのも意外な発見でした。
重要文化財 黒田清輝 「湖畔」
明治30年(1897) (1/12まで展示)
明治30年(1897) (1/12まで展示)
黒田清輝の名前を知らなくても、教科書や切手で誰もが一度は見たことのある「湖畔」。芦ノ湖畔で照子夫人をモデルに描いたもので、もともとは「避暑」というタイトルだったそうです。淡い色調と湖畔で涼む風情のある描写はいつ見ても素晴らしいなと思います。
[写真左] 重要文化財 黒田清輝 「舞妓」 明治26年(1893)
[写真右] 黒田清輝 「読書」 明治24年(1891) (1/12まで展示)
[写真右] 黒田清輝 「読書」 明治24年(1891) (1/12まで展示)
特別室での作品公開は今年は下記期間のみ。お間違いないように。
第1回:2015年1月2日(金)~1月12日(月・祝)
第2回:2015年3月23日(月)~4月5日(日)
第3回:2015年10月27日(火)~11月8日(日)
階段を挟んで通路の反対側は<黒田記念室>。こちらは6週間ごとに展示替えをし、遺族から寄贈された作品を中心に黒田記念館の所蔵作品を紹介するとのこと。今回はフランス留学時の油彩画や習作、帰国後初期の作品を中心に展示されています。
黒田清輝 「自画像(トルコ帽)」
明治22年(1889) (2/1まで展示)
明治22年(1889) (2/1まで展示)
黒田清輝 「祈祷」
明治22年(1889) (2/1まで展示)
明治22年(1889) (2/1まで展示)
「自画像(トルコ帽)」と「祈祷」 を描いた明治22年に黒田はオランダを訪れ、レンブラントの作品を模写するなどして、レンブラントの色調や筆致、光の処理などを強く意識していたといいます。後年の外光派の作品に比べるとアカデミズムの傾向が強く感じられます。
黒田清輝 「マンドリンを持てる女」
明治24年(1891) (2/1まで展示)
明治24年(1891) (2/1まで展示)
「マンドリンを持てる女」は黒田の代表作の「読書」とともにサロンに出品するも、「読書」は入選し、こちらは落選したとか。なんで乳を出してるかはよく分かりませんが、肌や布の質感や上気した表情などリアリズム調で素晴らしいと思いますけどね。
黒田の写生した裸体画や写生帖なども並んでいます。会場の隅には黒田が使用したイーゼルやパレット、椅子も。
黒田記念館の設計は歌舞伎座(第三期)や明治生命館、鳩山会館、ニコライ堂(再建時)などを手掛けた岡田信一郎によるもので、レンガ造りの外観だけでなく、アールヌーヴォー風の階段や天井など室内も見どころです。
【黒田記念館リニューアルオープン】
(特別室の開室は1/12(月・祝)まで)
観覧無料
詳しくは黒田記念館のウェブサイトまで
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