トーハクでは「博物館に初もうで」や「博物館でお花見を」といった季節に応じた企画を開催していますが、今回は平成館などで特別展のないこの時期に、トーハク所蔵の優品などを公開する「秋の特別公開」が行われています。
料金は、通常の入場料(一般600円)のみ。トーハクの年間パスポートを持ってる人だったら、もちろん無料です。
詳細はトーハクのホームページに譲るとして、秋の特別公開の期間限定公開作品や、そのほかの展示作品を中心に、気になった作品をいくつかご紹介したいと思います。
まず本館2階から。
仏像展示の彫刻室、現在、国宝「華厳宗祖師絵伝 元暁絵 巻上」(京都・高山寺蔵)を公開中(10/6まで)の国宝室を抜けた3室の≪仏教の美術 平安~室町≫には秋の特別公開作品として国宝「円珍戒牒」が展示されています。
【特別公開作品】国宝 「円珍戒牒(円珍関係文書のうち)」(部分)
平安時代・天長10年(833) (展示は9/29まで)
平安時代・天長10年(833) (展示は9/29まで)
『和様の書』のあとだからか、いつにも増して書の展示が充実しています。『和様の書』で書に興味を持たれた方にはオススメです。
【特別公開作品】重要文化財 「和漢朗詠集巻下(益田本)」(部分)
平安時代・11世紀 (展示は9/29まで)
平安時代・11世紀 (展示は9/29まで)
こちらも秋の特別公開作品の「和漢朗詠集巻下(益田本)」。「和漢朗詠集」は先だっての特別展『和様の書』でも断簡や関戸本が展示されていましたが、益田本は出品されなかったので貴重な機会です。中国・宋の唐紙、染紙に雲母砂子を撒いた料紙や雲紙などを使用した贅沢な逸品です。
重要文化財 「法華経 久能寺経 安楽行品」
平安時代・12世紀 (展示は10/27まで)
平安時代・12世紀 (展示は10/27まで)
そばには美しい久能寺経も展示されていました。『和様の書』に展示されていた国宝「久能寺経」と同じく久能寺に伝わったもので、鳥羽法皇の皇后・待賢門院ら貴族が制作にかかわったとされています。
重要文化財 「土蜘蛛草子絵巻」
鎌倉時代・14世紀 (展示は10/27まで)
鎌倉時代・14世紀 (展示は10/27まで)
≪宮廷の美術 平安~室町≫には、平安時代の武将・源頼光とその郎等・渡辺綱が土蜘蛛を退治する物語の絵巻が展示されています。歌舞伎の舞踊「土蜘」や「蜘蛛の拍子舞」でも知られる土蜘蛛伝説です。やまと絵の美しい絵巻とおどろおどろしい大蜘蛛がとても面白かったです。
【特別公開作品】国宝 伝・周文 「竹斎読書図」
室町時代(文安4年)・1447年 (展示は9/29まで)
室町時代(文安4年)・1447年 (展示は9/29まで)
≪禅と水墨画 鎌倉~室町≫には秋の特別公開作品・国宝「竹斎読書図」が展示されています。周文の作と伝わる山水画に禅僧が詩を寄せた作品とのこと。周文様式を考える上で最も重要な作品の一つといわれているそうです。
重要文化財 伝・狩野元信 「祖師図(香厳撃竹)」
室町時代・16世紀 (展示は10/27まで)
室町時代・16世紀 (展示は10/27まで)
そばには、もとは大仙院の障壁画の祖師図(現存全6幅)の一部が展示されています。初期狩野派を代表する元信の作とされています。また、元信の弟・之信の作との説もある美しい「花鳥図屏風」も見ものだと思います。
【特別公開作品】重要文化財 酒井抱一 「夏秋草図屏風」
江戸時代・17世紀 (展示は9/29まで)
江戸時代・17世紀 (展示は9/29まで)
7室には酒井抱一の最高傑作「夏秋草図屏風」をはじめ、抱一の弟子・酒井鴬浦の「扇面散屏風」、宗達派の「扇面散屏風」が展示されています。
本館は写真撮影が可能なので、気に入った作品の撮影ができるのがいいところ。人が空いていれば、接写だってできます。(※一部、写真撮影不可の作品もあるのでご注意を。また写真撮影する場合、フラッシュはNGです。)
酒井抱一 「四季花鳥図巻 下巻」
江戸時代・文化15年(1818) (展示は9/29まで)
江戸時代・文化15年(1818) (展示は9/29まで)
江戸絵画を展示する8室には、抱一の「四季花鳥図巻 下巻」が展示されています。トーハクのサイトでは「四季花鳥図巻」の好きな場面の投票コーナーもありますよ。
金井烏洲 「山水図」
江戸時代・嘉永4年(1851) (展示は9/29まで)
江戸時代・嘉永4年(1851) (展示は9/29まで)
8室では、谷文晁や、文晁に教えを受けた渡辺崋山や金井烏洲、また春木南溟、池大雅、与謝蕪村など南画、文人画が比較的多く展示されていました。
鳥居清長 「風俗東之錦・汐汲み」
江戸時代・18世紀 (展示は10/14まで)
江戸時代・18世紀 (展示は10/14まで)
浮世絵を展示する10室では、鳥居清長の作品ばかり32点が展示されています。鳥居派のお家芸の芝居絵をはじめ、「箱根七湯名所」シリーズや「風俗東之錦」、「十体画風俗」など、ちょっとした鳥居清長展です。
鳥居清長 「女風俗十寸鏡・娘」
江戸時代・18世紀 (展示は10/14まで)
江戸時代・18世紀 (展示は10/14まで)
さて1階では、14室で特集陳列「運慶・快慶周辺とその後の彫刻」を展示しています。運慶作と推定される2体の大日如来坐像(真如苑蔵および栃木・光得寺蔵)をはじめ、快慶作2点、定慶作1点など運慶・快慶周辺の仏師による仏像を比較展示しています。
[左4つ] 重要文化財 「十二神将立像」 鎌倉時代13世紀 浄瑠璃寺伝来
[右] 「阿弥陀如来坐像」 鎌倉時代12~13世紀 (展示は11/17まで)
1階18室≪近代美術 絵画・彫刻≫には平櫛田中の彫刻や、横山大観・下村観山・今村紫紅・小杉未醒らによる「東海道五十三次絵巻(巻第4)」、菱田春草や寺崎広葉、川合玉堂らの作品が展示されています。
長野草風 「高秋霽月」
大正15年(1926) (展示は9/29まで)
大正15年(1926) (展示は9/29まで)
個人的に気になったのが長野草風の「高秋霽月」で、満月の夜空に点々と浮かぶちぎれ雲が幻想的な、抽象的な味わいを醸し出していて、非常に印象に残りました。解説には安田靫彦や小林古径らと研鑽を積んだとありましたが、現在ではほとんど無名とあり、わたしも今回初めて作品に触れました。草風の現存作品は少ないそうですが、他の作品も観てみたいものです。
そのほか、東洋館でも秋の特別公開作品が展示されていますのでお見逃しなく。
9/17から本館手前の表慶館(重要文化財)の中も1階のみですが一般公開されています。イスとテーブルも置いてあり、休憩スペースとして利用可能です。
また、休館中の黒田記念館(芸大前)には上島珈琲店が先日オープンしました。スペースの関係でちょっと混んでますが、テラス席もあり、これからの季節、気持ちよさそうです。
秋の特別公開は9/29(日)まで。お早目に!
秋の特別公開
日程: 2013年9月18日(水) ~ 2013年9月29日(日)
休館日: 毎週月曜日 ただし9/23(月・祝)は開館、翌9/24(火)は休館
観覧料:一般600円、大学生400円
詳しくは東京国立博物館のウェブサイトでご確認ください。
日テレムック ぶらぶら美術・博物館プレミアムアートブック2013-2014
おとなのぴあ 2013秋ー2014春 首都圏 絶対見るべき美術展完全案内 (ぴあMOOK)
0 件のコメント:
コメントを投稿