2010/05/01

御名残四月大歌舞伎 ~第一部~

歌舞伎座もいよいよ大千秋楽、そして閉場式を迎え、59年の歴史に幕を下ろしました。

先日の日記のとおり、4月頭に、第二部を観てまいりましたが、先週と今週、つづけて第三部、第一部を観て、ぼくも歌舞伎座にさよならを告げてきました。

見に行った順番は逆になりますが、まずは、第一部の感想から。

当初、第一部はチケットを取ってなく、観劇する予定がなかったのですが、やはり御名残り惜しくなり、急遽戻りのチケットをなんとか取って、観に行ってまいりました。

最初の演目は、「御名残木挽闇爭(おなごりこびきのだんまり)」。
名前から察せられるとおり、歌舞伎座の最後を彩る“だんまり”ものです。さよなら公演は、特に今年に入ってから、大御所たちの主役作品が続いていて、もちろん4月もしかり。で、この“だんまり”だけは次世代を担う若手役者が勢ぞろいし、歌舞伎座に最後に華をもたせ、“新”歌舞伎座への期待をもたせるという志向です。

一応、仇討ちもの的なストーリーがあり、登場人物も曽我兄弟や典侍の局など、歌舞伎の演目に所縁のある人たちだったりするのですが、然したる展開はありません。あくまでも“だんまり”なので、顔見世的な一幕でしたが、今をときめく海老蔵に菊之助、染五郎に勘太郎、七之助、獅童といった若手から、三津五郎に芝雀、それに先日、紫綬褒章が決まったばかりの時蔵、等々まで実に豪華。もう一部や幕開けから、やんややんやの大盛り上がりでした。

印象に残ったのは、海老蔵、菊之助、染五郎。やはり華があるし、彼らが台詞を口にするだけで舞台が華やぐというか、息づくというか。それに七之助の赤姫もとてもきれい。新しい歌舞伎座で活躍する女形は菊之助と七之助だろうとは思うけど、年齢的にも舞台数的にも菊之助の方が今は何歩もリードしていますが、七之助もどんどんレパートリーを増やし、いろんな役を見せて欲しいと思いました。

つづいては平家物語の「敦盛最期」を題材にした重厚な時代物の「熊谷陣屋」。

「熊谷陣屋」は「一谷嫩軍記」の中の一幕で、一の谷の合戦で平経盛の子・敦盛の首を打ちとったと熊谷は妻に告げ、息子・小次郎の武勇伝を語るのですが、実 は敦盛は後白河法皇の御落胤(という設定)で、源義経の命令で敦盛を救っていたのでした。義経が現れ、敦盛の首実検が行われますが、そこにあったのは小次 郎の首。熊谷は息子・小次郎の首をはね、敦盛の身代わりにとしていたのです…。

一部をやはり観たいと思ったのは、去年全巻読破した「平家物語」の中でも特に印象深かったこの挿話を歌舞伎で観たかったのと、名演揃いの今月の大歌舞伎の中で、とりわけ「熊谷陣屋」の評判が良かったから。さすがみなさんが唸るだけあり、出演している役者さん全員、役作りが深い。観たのが楽日近い日だったこともあるのか、非常に緊迫した芝居の中、役者さんの息もあって、とても濃い舞台を観ることができました。非の打ち所がないというのは、正にこういう芝居を言うのかと、初めて実感した思いです。

第二部の「寺子屋」もそうですが、身代わりに実子の首をはねる残酷さ、辛さ、その深い深い胸中を吉右衛門は実にリアルに表現していて、歌舞伎を越えたリアリズムさえ感じました。まわりを支える役者たちも、藤十郎の相模に梅玉の義経、富十郎の弥陀六にと正に役者が揃った錚々たる配陣。もう実現しないのではないかという豪華なメンバーに身震いする思いで観ておりました。

一部の最後は、中村屋親子による「連獅子」。

親獅子に勘三郎、仔獅子に勘太郎と七之助という、これまたさよなら公演ならではの豪華な舞踊。前半は 狂言師の舞、間に橋之助と扇雀の2人の僧の愉快な狂言が挟まって、後半は獅子の舞。ダイナミックな獅子の気振りに圧倒されっぱなしの小一時間。実は獅子もの、テレビでは何度か観てますが、ナマで観るのは初めて。鬼気迫る見事な舞が今も目に焼きついて離れません。会場もものすごい感動と興奮に包まれていました。

三部は後ほど。



「御名残四月大歌舞伎」
4/25 歌舞伎座にて

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